#16 その事業のライフ ステージはどこですか?
5. プロダクト・ライフ・サイクルと戦略
全ての事業や商品は、市場に投入されてから成長後、衰退していく運命にあると言えます。まるで、人の一生のようですね。
横軸を時間、縦軸を5つの変数(市場規模/売上、製品原価/価格、利益)にすると図のようになります。
プロダクト・ライフ・サイクルは、導入期→成長期→成熟期→衰退期と時系列に4つのステージがあります。
市場規模と売上は、導入期と成長期には上がっていき、成熟期でピークを迎え、衰退期には下がっていきます。
製品原価と価格は導入期は高く、市場浸透が進むと規模の経済が働き、次第に下がっていきます。
利益は売上と原価の差なので、ステージが進むと上がっていきますが、衰退期には下がっていきます。
導入期の製品や事業の例は、量子計算機や自動運転車、空飛ぶクルマ、宇宙産業などでしょう。空飛ぶクルマは、来年の大阪万博で一般公開されるようですが、実際に見てみたいものです。
成長期の例はAI関連産業、再生エネルギー関連やEV(電気自動車)でしょう。EUではAIや再生エネ分野の基金を設けるなど、投資も加速しています。
成熟期の例はスマホでしょう。
年間の販売台数は、横ばいから減少傾向です。
パソコンは、2018年まで世界の出荷台数は減少傾向で成熟期から衰退期に入ったように見えますが、2024年は増加に転じる見込みで、AI対応がそのドライバーになっているそうです。
「イノベーションが、プロダクト・ライフ・サイクルをリセットして、導入期に戻す」と言われていますが、AIがパソコンやスマホにとってのイノベーションになるかもしれません。
衰退期に入った他の製品例は、液晶テレビや複合機(プリンタ、コピー、FAX、スキャナー)などで、これからの販売台数は下降トレンドになっています。
EVは成長期と書きましたが、今は普及にブレーキがかかっていて、イノベータ理論で言うキャズムという停滞期にあると思います。
イノベータ理論とは、イノベーションになるような新しい商品における顧客の動向です。
イノベーター(新しいものなら何でも購入したい層)と、アーリー・アダプター(自分の価値感で納得すれば、購入する層)までの普及は比較的容易ですが、それ以上の普及が停滞する事があり、これをキャズムと呼んでいます。
以下の記事によると、欧州主要18カ国では22年、新車販売に占めるEVシェアが15.1%に達したそうです。面白い事に、イノベータ理論の(イノベーター)+(アーリーアダプター)の比率に、ほぼ一致していますね。
EVのキャズムの原因は、
・キーパーツである電池の原価が高くてEVの価格が高い
・充電インフラが十分にない
・航続距離がまだそれほど長くない
・充電時間が長い
の他、国の購入補助金の停止や縮小です。
しかし、技術の進歩により、これらの課題はいずれ解決され、再び成長軌道に乗るだろうと思います。
このライフ・ステージにより、企業の取るべき戦略が変わってきます。
それについて、次章に書きます。