「この病気に違いない！」
本を読むと影響される。特に精神疾患系の本を読むと影響される。以前、北杜夫さんか誰かの本で読んだのだが、医学生でも精神疾患について勉強していると、「僕（私）はこれじゃないのかしら」と思うふしがあるらしい。まあこういうのをバーナム効果というらしい。
うつ病の本を読んで精神科に行くと、間違いなく「うつ病っぽい」発言をする。躁鬱病の本を読んで精神科に行くと、間違いなく「躁鬱病っぽい」発言をする。統合失調症の本を読んで精神科に行くと、間違いなく「統合失調症っぽい」発言をする。パーソナリティ障害の本を読んで精神科に行くと、間違いなく「パーソナリティ障害っぽい」発言をする。不安障害の本を読んで精神科に行くと、間違いなく「不安障害っぽい」発言をする。発達障害の本を読んで精神科に行くと、間違いなく「発達障害っぽい」発言をする。HSPの本を読んで精神科に行くと、間違いなく「HSPっぽい」発言をする。ただ、HSPに関してはアメリカかどこかの心理学者が定めた性格的特徴らしい。精神疾患ではないらしい。精神疾患の本を読むと、間違いなく「自分はこの病気なのではないだろうか」と思ってくる。そしてそう信じてやまないだろう。
僕は以前発達障害の本を読んだことがあった。ちょうど発達障害の本が良く出版されたり、メディアで取り上げられていた時期だったと思う。それで心療内科だか精神科に行って、多分「発達障害っぽい」発言をした。それで「発達障害っぽい」と言われて、薬が出たことがある。後で分かったことだが、その病院は「発達障害」とよく診断する病院だったらしい。ちなみに発達障害の検査やらテストなんてものはしていない。
今の主治医にこのことを伝えたら、「発達障害っぽいからっていって、発達障害の薬は出しませんヨ」と言われた。まあこれだけ医者の考えが違うのだ。
また別の時期に僕は不安障害ということで、心療内科だか精神科に通っていたのだが、薬を飲むと妙に気分が上がった。昔から心療内科だか精神科の薬を飲むと妙に気分が上がる感覚があった。何だかアホっぽくなるのだ。ただまあ気分が良いので「治ったんだな」と思っていた。そのうち、気分の波が激しくなってきた。それで「なんか気分の波が激しいんですぅ」と言ったら、当時の主治医が「こういうことはないですか？」という具合で色々聞いてきた。それで「あります」「あります」と言ったら、「双極性障害だ！」と言われ、一夜にして薬がコロリと変わった。
まあ時すでに遅しで、勢い余って会社を辞めたら、とんでもない鬱になった。それで通っていた病院が遠かったので、近くの病院に転院した。そしたら、「双極性障害かどうか分からん」と言われた。そりゃそうで、途中で転院してこられても「双極性障害かどうか分からん」だろう。ただ、本当に双極性障害だったらマズいということで、一応双極性障害の薬は処方されている。
それで、こちとら双極性障害なんて診断されたら気になって色々調べますわな。どうやら躁状態やら軽躁状態やら混合状態ってのがあるらしい。それで僕は、度々訴えるんだな。
「先生！頭の中が忙しいんです！」
「先生！文章が浮かんでくるんです！」
「先生！本を買うのをやめられません！」
「先生！これ混合状態じゃないんですかぁ？！」
僕の主治医は大体「ほうほう」と頷いている。いや、頷きもしない。さらっと聞き流しているように思う。別に躁状態でも軽躁状態でも混合状態でもないらしい。
「躁状態はもっと凄いですからネ」と言っている。
ただ、一時期同じような訴えをしたことがあった。
「先生！頭の中がとにかく忙しくて、文章が浮かんでくるんですぅ」と僕。
「それは躁状態です！」と先生。
「いやあ暇だからだと思いますよ。暇だからあれこれ考えちゃうんですぅ」と僕。
「いや！暇な人は眠たくなります！」と先生。
という具合で双極性障害の薬が増えたことがある。
僕からすると何が違うのか分からない。以前も同じようなことを訴えていたじゃないか、と思う。
まあとにかく、精神疾患の本を読むと間違いなく影響される。「この病気にちがいない」と思ってくる。そうすると、「それっぽい」発言をする。
僕は世の中の精神科医がどのようにして診断しているのか知らない。そういうバイアスを加味して診断しているのか、よく分からない。
本当にうつ病だったり躁鬱病だったり統合失調症だったりを見過ごすくらいなら、何らかの診断を付けたほうがいいのだろう。手遅れになったら怖いからな。
ただ言えるのは、病気を診断するのは自分ではなくて、医者だと言うことだ。下手に「知った気」になると自分で自分を診断してしまう恐れがある。まあそれが実際当たっている場合もあるとは思う。
診断基準があるにせよ、僕の「発達障害」や「双極性障害」の例にある通り、医者によって考えが違うことは確かだ。どっちが良いのかは知らない。
ちなみに僕は、鬱になってからさまざまな身体症状が生じて、その都度「何かの病気なのではないか」と思ってくる。アホだから検索して病気ついて色々調べて、「この病気に違いない」と思ってくる。それで検査をしてもらわないと気が済まない。ただ、大体何も異常がない。「この病気に違いない」が当たった試しがない。