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両手からこぼれ落ちた言葉
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記事一覧

【ひとり古賀コン】わすれないで

明日こそは覚えていますように。
祈るように眠りにつく。



遅刻するよ、と起されて時間を確認する。
日付と自分の名前、家族構成を確認する。覚えている。オッケー。
身支度を済ませ、パンを口に突っ込んだまま家を出る。
「ふががが(いってきます)」
学校への道順、まずは駅まで、どこ行きに乗ってどこで降りるか、そこからどうやって行くか、メモ帳を身ながら確認する。これも大丈夫。ときどき記憶が飛ぶ。もうだ

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【ひとり古賀コン】泥のように眠る

朝ちょっと早めに起きて洗濯して掃除して、一回行こうと思ってた駅よりの大通りにある喫茶店のモーニング食べてそのまま電車に乗っちゃったりして、行き先は決めないほうがいいな、思ったところで降りて駅前でちょっとだらだらして、映画でも見ちゃおうかな、美術館行くのもいいな、夕方くらいに居酒屋行って軽く飲んで、ほろ酔いで帰ってきていつもの倍くらいの時間かけて風呂に入って、いい感じのまま寝る。サイコーじゃん。

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【ひとり古賀コン】アメリカの入学式

ドッキドキの、一年生。
と歌ってはみたけれど、ぶっちゃけ日本語通じねえしなーと思っていたりする。入学式の会場ってよくわかんないけど、なんかこのだだっ広い広場みたいなところに集められるのな。「ニューヨークに、行きたいかー!!」
とつぜん聞こえた日本語。うおおおおと叫ぶ聴衆。何年前のネタだよそれ。ここ後楽園球場じゃねえんだわ。あと、自由の女神の足下をクイズにしたってダメなんだわ。それ誰もわかんねえよ。

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【ひとり古賀コン】無能の人

マンションの入り口からエレベーターホール、自分の部屋のある階のエレベーターホールから自分の部屋……の二つ隣まで、綺麗に石が並べられている。自分がしたわけじゃない。そこの家には誰も住んでいない。誰がしたかわからないが、撤去するとよくないことが起きると噂になっていて、誰も撤去しようとしない。
感覚もまちまちだ。大人の足一歩ぶんとか、隙間なくとか、ときどき塊のようになっていることもある。正直なところ、気

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店内ではお静かに

さあ、ここは○○町の大手書店、魅力的な書籍が並ぶ一角だ。今回もステキなダンスが期待できるぞぉぉぉ!
(なにも知らずに棚の前に立つ大学生、目当ての本の前に立ち、腰を曲げて背表紙をじっと睨む)
おっといきなり購入思案かー? 接写レンズのごとく目を背表紙にびっっっっったりつけているぞ。
さっそく本を手に取った! ここ何週間か迷っては止め、迷っては止めているお気に入りの画集をまた手に取っている! ぱらりぱ

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カスタマーレビュー

★☆☆☆☆ 期待するんじゃなかった
2024年9月26日に日本でレビュー済み

m Ama-zonにて購入
本当は☆1つもつけたくありません。
良かったのは第一印象だけでした。申込してからの返事も、その後の連絡も、到着もまったくもって遅く、しかもまともに使えない。
なんだこれ。人を舐めているとしか思えません。




一緒に暮らし始めてから、結局一回もなにもしなかった。
ゴミ出しどころか買い物

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青い光をつなぐと星座になる気がした

 毎年、春になると誰からともなく招集がかかって、僕たちは海岸までホタルイカを探しに行った。
 満月か新月の、やたら暖かくてたぶん蜃気楼が見えるような日。別に正確なデータを持っているわけではないし、ただの遊びだったからなんとなくそんな感じかな、と思うような日に「今日あたり行きますか」となる。

 パンキョウと呼んでいる、人文学部と一般教養棟の裏に僕たちのサークルの部室はある。いつからあるのかわからな

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なるように、な

 生まれた人間には国からひとつ座右の銘というものが与えられる。それは単純な言葉がほとんどだったが、言霊のようなもので、それに縛られて生きることになる人が多いため、ここ何年かで廃止しようという動きもあった。が、いわゆる老害の連中のせいでズルズルと続けられてきているのがこの制度だった。

 出生証明書や身分証明書とともに与えられる座右の銘。自分のものにはなんと書いてあるのかわからなかった。自国の言葉で

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くろきもの

とてもとてもきれいな言葉で塗り固められた壁の前で「でも本当は嫌いなくせに」とつぶやくと内部からどろりと黒いものが染み出してくるのです。空を地を覆う、暗黒。そしてそれがおそらくは心からのものであるということに彼らは気づいていません。

(2021/2/20)

かえろう

本当は君についていきたい
でもそれはできない
なんてもう使わない言葉しか思いつかない
今は君に甘えたい
泣きたいのは我慢したい
夜中の冷たい風にさらされた
いつもみたいに笑ってさよならしたい
けどそれももう無理みたい
帰ろう会わなくてもいい場所へ
すれ違っても気づかない二人に

(2020/2/22)

、しかしらない

一人で待つにはまだ少し寒い
薄手のコートでは心許ない
一緒にいることろを見られるのは
なんとなく恥ずかしい
中学生でもないのに
取る微妙な距離の伝わる熱
僕は甘えかたを知らない
君の困った顔しか知らない
春はまだすこし遠い

(2019/2/23)

いと

君がどう思おうとも
君がしたことは許されるべきことではないのだから
僕が君の言葉を信じなくても
僕を責めたりしないでくれないか

僕が君にかけられた言葉を
僕は決して忘れないだろう
君が意図したのか意図しなかったのか
そんなことは関係なく
君の人となりはもうわかったから

(2018/2/24)

しりたい

リピートする曲のコード進行と
君の顔色ばかりうかがう理由と
誰かを見ると痛みの走る場所と
いつまでもひとりのままなのか
僕は知りたい

(2017/2/26)

しかたなかった

制服を着ているときだけは純情なフリ
君の手のひらの熱は自分だけが知ってる
帰り道に互いを探す回数は
人通りの少なさに反比例する
本当はなんとも思ってなくても
同情だけでなにかした気になるのだろう
そんな君のことが嫌いだったし
君を好きになるしかなかった

(2016/2/20)