映画「白痴」 翻訳
■はじめに
Youtubeにあがっている、ドストエフスキー原作の映画「白痴(1958)」の翻訳です。
Mademoiselle Folliculeさんによる英語字幕を日本語に翻訳しました。
https://www.youtube.com/watch?v=qn8G-RYyfrM
IDIOT
白痴
■列車
Are you cold?
寒いか?
Very much.
ええ、とても。
I never thought it
would be so cold in our country.
自分の故郷がこんなに寒いなんて、思ってもみませんでした。
Are you from abroad?
外国帰りかい?
Yes, from Switzerland.
はい。スイスからです。
You don't say!
そいつはおどろきだ!
How long have you been there?
どのくらいそこにいたんだ?
More than four years.
I was sent there for a treatment.
4年ほど。
病気の治療のためです。
So, have you recovered?
で、その病気は治ったのかい?
I haven't.
いいえ。
They must have ripped you off.
ぼったくられたに違いない。
You're so right.
They are just wasting Russian assets.
まったく、その通り。
ロシアの金が無駄なったのですよ。
In my case, you're wrong.
今回ばかりは違います。
Of course, I cannot speak
for every case,
but my doctor gave me money to
come here,
and treated me for two years
free of charge.
もちろん、すべてがそうとは言えませんが。
しかし私の先生はここまでの切符代を払ってくれました。
それに2年も無料で診てくれてたんです。
Was there no one to pay for you?
他に払ってくれるやつはいなかったのか?
My benefactor, Mr. Pavlischev,
passed away two years ago.
恩人のパヴリーシチェフさんがいましたが、
2年前に亡くなってしまいました。
I tried writing to
Mrs. General Epanchin,
(she's my distant relative)
but I got no answer.
親戚のエパンチン将軍夫人に手紙を送ってもみましたが、
返信はありませんでした。
So that's how I came here.
それで、ここへ帰ってきたというわけです。
And where are you going?
で、どこへ行くんだ?
You mean, where I'm staying?
I don't know yet.
滞在先ですか?
私にもまだわかりません。
You haven't decided yet?
まだ決めてないのか?
I bet everything you have
is in this purse.
この包みがお前の全財産に違いない。
I bet it's so.
きっとそうでしょうよ。
You're right.
おっしゃる通りです。
I have nothing except for this purse.
この包み以外、私は何も持ってません。
Excuse me, what is your name?
ところで、あんた名前は?
Prince Lev Myshkin.
ムイシュキン公爵と申します。
Prince?!
公爵ですと?!
So, did you study sciences
back there, Prince?
で、あんたは向こうで科学を勉強したのかい、公爵?
Yes, I studied some things.
はい、いくつか。
I've never studied anything.
おれはなにも勉強したことがない。
I haven't learn much, really.
私も、そこまで学んだわけではありません。
Do you know the Rogozhins?
ロゴージン家は知っているかい?
No, I don't know many people
in Russia.
いえ、ロシアの人はあまり知りません。
Are you Rogozhin?
あなたがロゴージンさんなのですか?
Yes, I am Parfyon Rogozhin.
そうだ、パルフョーン・ロゴージンだ。
Are you from those Rogozhins?
あなたがロゴージン家の?
Exactly.
その通り。
My god, then you must be
Semyon Rogozhin's son.
おどろいた!というと、
あなたがセミョン・パルフョンビッチのご子息ですね。
He died two months ago
and left 2.5 million.
その方は2年前に亡くなりましたが、250万ルーブリも残したんですよ!
Why should you care?
それがどうした?
I'm not giving you a penny.
Even if you turn summersaults
in front of me.
お前には一銭もよこすつもりはないぞ?
お前がここで宙返りしてもな。
I'll turn, I'll turn.
まわって見せますよ。
I'm not giving you anything.
Go beg elsewhere.
お前に何もやるつもりはない。
物乞いするなら他所でやれ。
Still, I'll beg. I'll leave my wife and
children and stay close to you.
どうかお願いします。
妻と子供たちを置いてでも、あなたについて行きます。
Devil.
下衆が。
Five weeks ago, I was just like you:
only a purse in my hands.
5年前、おれはあんたと同じだった。
包み一つしか持っていなかった。
I ran from my father to my aunt in Pskov.
親父のもとからプスコフの叔母のところへ逃げたのさ。
But I caught a fever there,
and my dad died while I was away.
だがそこで熱病にかかった。
それで親父の方は、その間に死んじまった。
He had a stroke.
脳卒中でな。
God save his soul.
神の救いがあらんことを。
Back then, he almost killed me.
当時、おれは親父に殺されかけていた。
Believe me, Prince, if I had not run away,
I'd be dead.
信じてくれ、公爵。
親父のもとから逃げなきゃ、おれは死んでたよ。
You must have upset him.
お父上を怒らせたのでしょう。
True.
そうだ。
I made him mad because of a girl.
ある女のせいで、おれは親父の怒りを買った。
Her name is Nastasya Filipovna,
god damn her.
ナスターシャ・フィリッポヴナって女だ。
ちくしょう。
Nastasya Filipovna?
ナスターシャ・フィリッポヴナ?!
There's no chance you know her.
お前が知ってるわけないだろう。
I might know her.
知っているかもしれませんよ。
I must say, you're a scoundrel.
ひとつだけ言ってやる。お前は虫けら野郎だ。
You're scolding me, but I know, that this
Nastasya Filipovna
is living with a landowner and industrialist
named Afanassy Totsky.
お怒りのようですが、でも知っているんです。
そのナスターシャ・フィリッポヴナをね。
地主で実業家である、
アファナーシィ・トーツキーと住んでいる方です。
Goddamn you, you got it right.
ちくしょう、当たってる。
Lebedev knows everything.
このレーベジェフは何でも知ってます。何でもね。
Now, this Totsky doesn't know how
to get rid of her.
トーツキーは今、この女を追い払いたがってるんです。
Because he's getting old,
and wants to marry one of General
Epanchin's daughters.
彼もいい歳ですからね。
エパンチン将軍の娘の一人と結婚したいと思ってるんです。
That's right.
こいつの言ってることは本当だ。
Nastasya Filipovna is in trouble.
So your two and a half millions...
ナスターシャ・フィリッポヴナは困っている。
そしてあなたは250万ルーブリを…
If I hear another word about her
I'll have you flogged.
これ以上、あの女について喋ったら、
鞭で打ってやる。
Flog me, please. If you're flogging me
you're not rejecting me.
打ってくださいよ、お願いします。
鞭で打たれた分、縁が深まるに違いない。
Arriving to Petersburg, gentlemen.
サンクトペテルブルクに到着です。
Goodbye, Prince.
I don't know why, but I like you.
お別れだ、公爵。
なんでか知らんが、お前が気に入ったよ。
Maybe it's because I met you at
such a moment...
こんな時に会ったからかもしれないが…
Although, I met him too,
but I don't like him.
あいつとも同じ時にあったが、
やつはあまり好かんな。
Come to my house, Prince.
I'll give you a mink coat,
have a tailcoat made.
あとでウチに来いよ、公爵。
ミンクのコートと、燕尾服を着せてやるぞ。
We'll buy you new shoes
and stuff your pockets with money.
ついでに新しい靴もな。
ポケットにも金を詰め込んでやる。
And then we'll go to
Nastasya Filipovna.
そしたら、ナスターシャ・フィリッポヴナのところへ
一緒に行くんだ。
Will you come to me?
Don't miss your chance, Prince.
一緒に来ますか?
このチャンスを逃す手はありませんよ、公爵。
With great pleasure.
喜んでお伺いします。
I also liked you very much.
私もあなたが大変気に入りました。
We're here. Goodbye, Prince.
Make sure to stop by.
それじゃあな、公爵。
ぜひともウチに来てくれよ。
Follow me, maggot.
ついてこい、ウジ虫野郎。
Yes, sir.
仰せのままに。
■エパンチン将軍宅
Excuse me, is this
General Epanchin's house?
すみません、エパンチン将軍の家はこちらですか?
That's right, sir.
ええ、そうですよ。
I am Prince Myshkin.
I'd like to see His Excellency.
ムィシキン公爵と申します。
将軍閣下にお会いしたいのですが。
Please, come in.
どうぞ、お入りください。
Prince Myshkin.
ムイシュキン公爵と申します。
How can I help you?
どんなご用件ですかな?
I don't have any important business.
I'd just like to make your
acquaintance.
大きな要件ではありません。
ただ、お近づきになれればと思っています。
Please.
こちらへどうぞ。
I don't have much time,
but since you obviously
have a special reason...
あまり時間がないのですが、
なにか特別な事情がありそうなので…
I thought you'd say so, but really,
apart from for the pleasure of
meeting you
I have no other reason.
そうおっしゃるかと思いましたが、
しかし本当に、ただお会いしたかっただけなんです。
他に理由はありません。
Of course, I'm also very happy
to meet you.
もちろん、私もお会いできて光栄です。
But I fail to see what we have in
common, and what reason...
しかしわかりませんな。
私とあなたに、どんな縁があるのか…
There's no reason other than that
your wife is from the
same family as me.
特にこれといったご縁はありません。
奥様が私の親戚であることを除いて。
But this alone is not a good
enough reason.
However, I have no other reason.
これだけでは十分な理由にならないかもしれませんが、
しかし実際、他に理由がないのです。
I haven't been to Russia for 4 years.
I'd like to know some good people.
私は4年間、ロシアを離れていました。
何人か知り合いを作っておきたいのです。
I even have a little business that I
don't know where to go with.
小さな用事もあるのですが、
どこへ行けばいいかもわからないんです。
But I heard you are good people.
しかし、あなたは親切な方だと伺ってます。
Thank you very much.
May I ask where you are staying?
それはどうも。
滞在先を教えていただけますかな?
I haven't found a place yet.
それが、まだ決まってないんです。
So you came here straight
from the train station?
Even brought your luggage.
それで、駅から真っ直ぐここへ来たんですか?
お荷物も一緒に。
All my luggage is a small bag
of underwear.
I'll find a room tonight.
私の荷物は下着の入ったこの包み一つだけです。
夜になったら宿を探すつもりです。
So you are planning to look
for a room?
それでは、あなたは宿をお探しするつもりで?
Of course.
もちろん。
I thought you came straight to me,
so to say...
あなたは私の家に真っ直ぐきたと言うので、
てっきりその…
This could have happened,
but never without your invitation.
可能性はありましたが、
しかしあなたのお招きなしには…
Then it's fortunate that
I didn't invite you.
であれば、お招きしなくても良かったですな。
Let me mention another thing,
Prince.
単刀直入に言いましょう、公爵。
Our being relatives is out of question.
Of course, I'd only be flattered. But...
我々の間には、親戚である他に縁がありません。
もちろん、お会いできて光栄ですが、しかし…
But it's time for me to leave?
しかし、そろそろお暇してほしい?
I suppose, it has to be this way.
Goodbye. Sorry to bother you.
こうなるほかありませんでしたね。
それでは失礼します。お邪魔してすみませんでした。
Prince, wait a moment.
Maybe my wife would like to meet
her namesake.
待ってください、公爵。
家内はきっと自分の親戚に会いたがるでしょう。
Wait a moment, if you have time.
もしお時間があれば、少しお待ちいただけますかな。
I have all the time in the world.
時間ならいくらでも持ってます。
In fact, I was hoping Elizaveta
would remember that I wrote her.
エリザヴェータ夫人が、
私が送った手紙を覚えていてくれればと思います。
Very well then.
How old are you, Prince?
結構。
ところであなたはおいくつですか、公爵。
I'm twenty-six.
26歳です。
Do you have any income, or any estate,
or maybe an occupation?
収入、資産、職業はお持ちですかな?
I understand your concern.
I have no estate or occupation.
ご心配していることはわかります。
私には資産も職業もありません。
How do you plan to make a living?
すると、どうやって生計を立てるおつもりで?
I'll work.
働くつもりです。
You are a philosopher.
Do you have any talents or skills?
あなたは哲学者ですな。
何か才能や技術をお持ちで?
I think I have none.
たぶん、何も持ってません。
Have you no relatives in Russia?
ロシアに他に親戚は?
At this moment, no one, but I've just
received a letter...
今は誰もいません。
ただ、ある手紙を受け取っていて…
Well, you must have studied
something.
Are you literate, at least?
しかし、何か教養は持っているはずだ。
少なくとも、読み書きぐらいは出来るでしょう?
Of course.
もちろんです。
Excellent.
How about your handwriting?
結構。
文字は書けますかな?
It's extremely good.
This must be my only talent.
I'm a real calligrapher.
とても上手に書けますよ。
それこそ、私の才能と言えるでしょう。
本物の書道家ですよ。
If you give me a piece of paper
I'll write something.
紙をくだされば、何か書いてご覧に入れます。
Ganya, give us some paper and a pen.
ガーニャ君、紙とペンをくれ。
Here, Prince.
Paper, pen, ink. Please.
Show us your talent.
さあ、公爵。
紙とペンとインクだ。
君の才能を我々に見せてくれ。
Here, Ivan Fedorovich.
将軍、これを。
What is this?
Nastasya Filipovna!
なんだねこれは。
ナスターシャ・フィリッポヴナの写真じゃないか!
Has she sent this to you?
彼女が君にこの写真を?
She gave it to me when I was
visiting to congratulate her.
さっきお祝いに伺った時、受け取りました。
I hope you didn't forget about tonight?
今日が何の日か、お忘れではないですね?
Of course, it's her birthday.
She's turning twenty-five.
もちろん、彼女の誕生日だ。
25歳のな。
Ganya, I'll tell you something.
Tonight she promised to give
her final word.
ガーニャ君、君には言っておかねばな。
彼女が今夜、最後の返事を出すと約束した。
"To be or not to be."
So get ready.
「生きるか、死ぬか」だ。
覚悟しときなさい。
Is this what she told you?
彼女がそう言ったのですか?
Yes, she told me and Afanassy.
But she asked not to tell you yet.
そうだ。私とトーツキーにそう言った。
君には秘密にしろと言われたがね。
Remember, she gave me full freedom
until she makes up her mind.
彼女が返事を出すまでは、
私にも自由に決める権利があったはずです。
And even then, the last word is mine.
それでも、最後には私が決めますが。
What? Would you... Would you...
なんだって?すると君はまさか…
I wouldn't anything.
どうもしませんよ。
What are you trying to do with us?
どういうつもりなんだ、君は?
I'm not saying no.
断っているわけではありません。
Of course, you wouldn't dare.
She's such a woman!
もちろんだ!とんでもない!
あんないい女性を!
You should be happy.
君は幸せ者だよ!
Maybe, I didn't put it correctly.
ちょっと気が動転してしまったようです。
Fine. How's your mother,
how's your sister?
ならば結構!
君の母と妹の調子はどうだね?
The mother is crying,
the sister is angry.
母は泣いていて、
妹は怒っています。
But I told them as it is:
I am the master of my destiny,
and they have to obey me.
それでも私は彼女らにこう言いました。
私の運命は私が決めるし、
運命も私の決定に従うべきだとね。
I still don't get it.
They act as if they are being
dishonored.
理由がわからないね。
君の家族が、どうしてこれを不名誉なことだと思うのか。
But what kind of dishonor is this?
Who can blame Nastasya Filipovna?
これのどこが不名誉なんだ?
誰がフィリッポヴナにケチをつけられるんだ?
Is it about her living with Totsky
at one time?
昔、トーツキーの家で暮らしてたことか?
This is complete rubbish.
How can they not understand it?
全く、くだらない!
どうして彼女らにはそれがわからないんだ?
They understand everything.
Please don't be cross with them.
彼女らもちゃんとわかっています。
どうか問題を一緒くたにしないでください。
If she gives her word tonight,
then everyone will be satisfied.
彼女が今夜返事を出すなら、
それでみんなは納得します。
Is this Nastasya Filipovna?
これがナスターシャ・フィリッポヴナですか?
She's magically beautiful.
魔法のような美しさだ。
What do you mean? Do you know her?
どういうことですか?
あなたは彼女をご存知で?
Yes, can you believe it?
はい。信じられませんか?
It's only my first day in Russia,
and I already know such a beauty.
ロシアに来てまだ一日ですが、
彼女の美しさはすでに存じてます。
I heard about her in the train, from
a merchant named Parfyon Rogozhin.
列車の中で聞いたんです。
ロゴージンという名の商人からね。
What news!
なんてこった!
I heard some nasty things about him.
彼の悪い噂を聞いたことがあります。
I heard about him too.
私も聞いたことがある。
As long as there's no scandal...
おかしなことにならなければいいが…
Prince, what was your impression?
公爵、あなたはどんな印象を持ちました?
Is Rogozhin an important person
or just some scoundrel?
ロゴージンは立派な人ですか、それともただの悪党ですか?
I don't know what to tell you.
But I felt he's full of passion.
どう言えばいいかわかりません。
ただ私には、情熱を持った人に見えました。
And this passion is somewhat sick.
そしてその情熱は、どこか病的でした。
Is this what you felt?
それが君の印象かい?
Yes.
はい。
Can you see it? This scandal is
bound to happen tonight.
あなたにはわかりますか?
今夜きっと、なにか問題が起こりますよ。
Possibly.
あり得るな。
Everything depends on her whim.
全ては彼女の気まぐれ次第さ。
You know how she can be.
彼女がどうなるか、おわかりになるはずです。
And how can she be?
どうなるのかね?
Listen, Ganya. Be nice to her tonight.
いいかね、ガーニャ君。今夜は彼女の機嫌をとれ。
Try to be pleasant.
愛想よくするんだ。
What's this supposed to mean?
Don't you trust me?
それはどういう意味かね?
私を信じないのか?
I'm definitely going to benefit
from this.
私は絶対に、この件から利益を得るつもりだ。
The marriage between Totsky and
my Alexandra is decided.
トーツキーと娘のアレクサンドラの結婚はもう決まった。
All I'm trying to do now is
set you up well.
あと私のすることは、
君たちを取り持つことだけだ。
You are a smart man.
We counted on you.
君は賢い男だ。
我々はそこにかけているんだ。
It all comes down to this.
全てはそこにかかっているわけですね。
Yes, this is all there is.
そうだ。それが全てだ。
If you don't want to get married,
just say it.
結婚したくのないのなら、ただそう言えばいい!
Then off with you!
Nobody is keeping you
or forcing you to do anything.
そしてここから出て行け!
誰も君にしがみついたり、強制したりしないさ。
I agree.
結婚しますよ。
What have you here?
何をしてるんです?
Beautiful.
Look, Ganya, such a talent.
これはこれは素晴らしい!
見たまえ、ガーニャ君。この才能を。
"The writing of the humble
abbot Pafnuty"
"謹んでこれを記す。
パフヌティ修道院長"
You're more than a calligrapher,
you're an artist. Right, Ganya?
あなたは書道家以上だ、芸術家だ。
そうだろう、ガーニャ君?
Fantastic!
お見事ですね。
Don't laugh. There's a career here.
笑っちゃいけない。ここには造詣があるよ。
You can start with 35 rubles a month.
月給35ルーブルから始められるぞ。
It's half past twelve.
Back to business, Prince. Take a seat.
12時半か。
仕事に戻らねば。公爵、掛けてください。
I'll find you a good position in the office.
But it will require precision.
きっといい役職をつけますよ。
ただそれには正確さが要求されますね。
Judging by your looks,
you're short of money.
見たところ、お金がないようですね。
Here's 25 rubles to get you started.
We'll figure it out later.
手始めのために25ルーブルお渡ししておきます。
後々何とかなるでしょう。
Now, as for the future...
さてと、まずは…。
The mother of my friend has
rooms for rent.
私の友達の母が、賃貸の部屋を持ってます。
I hope you don't mind, Ganya.
構わないね、ガーニャ君。
Of course not. Mother will be happy.
もちろんです。母も喜ぶでしょう。
Are you happy now, Prince?
これで満足ですかな、公爵?
Thank you, General.
You are most kind to me,
considering I didn't ask for anything.
感謝します、将軍。
私が頼む前から、ここまで親切にしていただいて。
Since you're so kind
I have one thing to ask.
ご好意に甘えて、一つご相談があるのですが。
Excuse me, I don't have
a minute to spare.
失礼、私にはもうあまり時間がありません。
I'll introduce you to my wife Elizaveta.
If she can see you, I recommend that
you try to make her like you.
後で家内のエリザヴェータを紹介します。
家内に会ったら、彼女に気に入られるように振舞うことを
おすすめしますよ。
But if she can't see you, then...
It's not my fault.
もし家内に会えなければ…
それはわたしのせいじゃないでしょう。
Ganya, take care of these bills.
ガーニャ君、そこにある帳簿を頼んだよ。
So you like a woman like this, Prince?
そういう女性がお好きですか、公爵?
It's a wonderful face.
驚くべき顔です。
It seems she has suffered a lot.
I see it in her eyes.
たくさん苦労を重ねたのように見えます。
彼女の目を見ればわかりますよ。
But her face is very proud.
でも彼女の顔は、とても高慢そうだ。
Only, I don't know if she's kind.
わからないのは、彼女が優しいかどうかです。
I hope she is kind.
Then everything will be alright.
彼女が優しいことを願います。
それなら全てが、上手く行きますよ。
Would you marry such a woman, Prince?
そんな女と結婚しますか、公爵?
I can't marry. I'm not well.
私は結婚できません。病弱なもので。
What about Rogozhin?
Would he marry her?
ロゴージンはどうですか?
彼は結婚するでしょうか?
I think he would.
But he would slaughter her in a week.
彼はすると思います。
でも一週間もしたら、彼女を殺してしまうでしょうね。
What's wrong with you?
どうかしましたか?
Your Excellency, Madame Epanchin
is waiting for you in the living room.
お客様、エリザヴェータ夫人が居間でお待ちです。
■エリザヴェータ夫人と三姉妹
Just you look at him!
He's almost a child.
彼を見てくれ。ほとんど子供だ。
You can play hide-and-seek with him.
彼とかくれんぼだって出来るぞ。
But he's educated and polite.
He's a little too simple-minded, though.
ただ彼は教養があって、礼儀もある。
ちょっと素朴すぎるところはあるがね。
I hope you feed him and test him, my love.
そこで、彼をテストして欲しいと思うんだが。
Test him?
彼をテストするですって?
Don't pick on words, my friend.
言葉尻を取ったりしないでくれ、お願いだから。
Here he is. Let me introduce you.
ご本人の登場だ。それでは紹介させていただこう。
Prince Myshkin. The last of the kind.
He's your namesake and
possibly even a relative.
ムイシュキン公爵。その家の末裔だ。
君と同性で、遠い親戚かもしれない方だ。
Take care of him. I'm already late.
彼を頼んだよ。私はもう遅刻だ。
Oh, I forgot.
Show him your albums and
ask him to write something.
おっと、忘れてた。
彼にアルバムを見せて、何か書いてもらうといい。
He is a rare calligrapher.
He wrote in an ancient handwriting:
"The writing of the humble abbot..."
彼は珍しい書道家だからね。
古い書体でこう書いたんだ。
"謹んでこれを記す…"
A rare talent!
珍しい才能だ!
Well, I'm off.
さて、もう行かなくては。
Ivan Fedorovich, where are you going?
あなた、どこへ行くのよ?
I'm going to the Count. So long, Prince.
伯爵のところさ。さらばです、公爵。
I know that Count.
伯爵ね!
So what did you say, what abbot?
それで、何院長だって?
Abbot Pafnuty.
パフヌティ修道院長です。
Interesting.
So what about him?
面白いわ。
それで彼がなんなの?
Mama.
お母様。
Don't interrupt me, ladies.
邪魔しないで、あんたたち。
Prince, take a seat.
公爵、掛けてください。
Tell me more about this abbot Pafnuty.
そのパフヌティ修道院長について詳しく話してちょうだい。
Abbot Pafnuty...
He lived in the 14th century in a
convent near Volga.
パフヌティ修道院長は…
14世紀にヴォルガ近くの修道院に住んでいた方です。
He was known for his pious ways.
He traveled to Orda...
彼は敬虔な求道家として知られています。
オルダを旅した時…
To Orda?
オルダ?
The Tatar Orda.
タタールのオルダです。
And while he was there he signed a paper.
そして彼がそこにいた時、
彼はある文書にサインをしました。
I've seen a print of that signature
and liked the handwriting so much
that I learned it.
私はその署名の写しを見たことがあるのですが、
その書体が大変気に入ったので、それを習得しました。
Have a seat at the fireplace, Prince.
Tell us more. I love to hear your talking.
暖炉の近くにお掛けになって、公爵。
もっと聞かせて。私あなたのお話が好きだわ。
Maybe you can think of something
more exciting than Pafnuty.
Please, begin.
たぶんあなたはパフヌティ修道院長より
刺激的に考えられるわよ。
さあ、話して。
Mother, please. How can one speak
on demand?
お母様、やめてよ。
そんな要求されて、誰が話せるのよ?
What's so hard about it?
He has a tongue, so why can't he
tell us something?
何がそんなに難しいのさ。
彼は舌を持っているのに、
なぜ彼は話せないって言うんだい?
Nothing comes to mind.
何も思い浮かびませんね。
Tell us, Prince...
Tell us how you've been in love.
話してくださらない、公爵…
あなたがどんな恋をしてきたのか。
I've never been in love.
I've been happy in a different way.
恋をしたことは一度もありません。
それでも私は幸せでした。
Do you know how to be happy?
あなた、幸せになる方法をご存知なの?
Yes.
はい。
How to do it, then?
Tell us, Prince. Please, tell us.
どうすればいいんですの?
私たちにも教えてくださいな、公爵。
Alright, I'll tell you.
わかりました。お話ししましょう。
Her name was Marie.
She was from the same village where
I was staying.
彼女の名前はマリー。
彼女は私の滞在先の村にいました。
If only you knew what a miserable
creature she was.
彼女がどれだけ哀れな女性だったか、
少しでもあなたが知っていたらと思います。
She was a weak, skinny and sick girl.
She worked odd jobs:
cleaning, caring for the livestock,
doing people's laundry.
彼女は弱く、痩せこけて、おまけに病気でした。
彼女は雑用仕事をしていました。
掃除、家畜の世話、洗濯…。
One day, a French traveling salesman
seduced her and took her with him.
ある日、フランスのセールスマンが
彼女を誘惑し、連れて行ってしまいました。
After a week, he threw her out
on the road and left.
一週間後、彼は彼女を道端に捨てて去りました。
She came back in rags.
Her feet were wounded, her hands
were swollen and scratched.
彼女はぼろぼろになって戻ってきました。
足を怪我し、手も腫れて傷だらけでした。
She was plain-looking to start with.
Only her eyes were gentle and innocent.
She was always very quiet.
もともと素朴な女の子でした。
ただ彼女の目は、優しくて無邪気でした。
彼女はいつも、とても静かでした。
But after she came back sick and tattered
nobody had any compassion for her.
しかし彼女がぼろぼろになって帰った後、
彼女を気遣う人は誰一人いませんでした。
People are so cruel.
When Marie came back to the village
everyone ran out to look at her.
人間はとても残酷です。
マリーが村に帰った時、
誰もが彼女を一目見ようと駆け寄りました。
Old men, women and girls, and even
children rushed to take a look.
老いた人も、女性や女の子、同じくらいの子供たちまで、
見物するために走り寄ったのです。
Marie was famished and ragged.
She was lying at the door to her
mother's house.
マリーは空腹で、ぼろぼろでした。
彼女は母の家のドアの前で、横になりました。
She was crying bitterly,
but people looked at her as if she
was a reptile.
彼女は激しく泣いていましたが、
人々はまるで汚いものでも見ているかのようでした。
Young people laughed, old people judged her.
Women swore at her and despised her.
And Marie's mother...
若者は笑い、年寄りは彼女を責めました。
女性たちは彼女を蔑み、嫌悪しました。
そしてマリーの母親は…
Marie's mother was sitting on the porch
and nodding approvingly.
マリーの母親はベランダに座って、
それに相槌を打っていました。
Forgive me, for talking nonstop
about my emotions.
許してください。
私は話しながら、感情を抑えることが出来ません。
I know this is inappropriate.
それが無作法なことはわかっています。
But when I came in here and saw your faces
for the first time I felt light and easy.
しかし私がここにきて皆さんの顔を初めて見た時、
私は明るさと安らぎを感じたのです。
What is it about our faces, Prince?
私たちの顔で?公爵。
Let me tell you.
You, Adelaida, have a face
of a kind sister.
言わせてください。
アデライーダさん、あなたは優しい姉の顔をお持ちです。
You're pretty,
but you also know how to approach
a person with ease and see his heart.
あなたは可愛らしい。
でも簡単に人に近づいて、その人の心を見抜く目を持っています。
You, Alexandra, have a sweet,
beautiful face.
アレクサンドラさんは、甘美な顔をお持ちです。
But there is some sadness in it.
Though you're very kind at heart,
but you're not happy.
でもその中には、悲しみがあります。
あなたはとても優しい心を持っていますが、
あなたは幸せではありません。
As for your face, Madame, I can only
say one thing.
奥様のお顔について言えるのは、一つだけです。
You are a complete child.
In everything good and bad that it entails.
あなたは全く子供っぽい方です。
全ての面で、良くも悪くもね。
Bravo, Prince!
You saw right through me.
I am indeed a child.
見事だわ、公爵!
あなたが見抜いた通り、私は全くの子供です。
I think your character is close to mine.
Only, you are a man, and I'm a woman,
あなたの性格に近いと私は思うわ。
あなたが男で、私が女であるだけ。
and I've never been to Switzerland.
That's our only difference.
それに私はスイスには行ったことがないわ。
私たちの違いはそれだけよ。
Why didn't you say anything about Aglaya?
どうしてアグラーヤについては何も言わなかったの?
Yes, why is that? She is hard to miss.
どうしてなの?彼女は見落とせないわ。
Absolutely so.
全くそうです。
You are so beautiful, Aglaya,
that I'm afraid to look at you.
あなたはとても美しい、アグラーヤ。
あなたを見るのが怖いくらいです。
Is that all? What about her character?
Why don't you say something, Prince?
それだけ?彼女の性格については?
なぜ何も言わないの、公爵?
It's hard to judge beauty.
Beauty is mystery.
美を見極めるのは難しいのです。
美は謎ですよ。
It means Aglaya has a riddle to solve.
Isn't she beautiful, Prince?
アグラーヤは解かれるべき謎を持っているってことね。
彼女は美しいでしょう、公爵?
Exceptionally.
Almost like Nastasya Filipovna.
ええ、とっても。
ナスターシャ・フィリッポヴナみたいに。
Who?
What Nastasya Filipovna?
Where did you see Nastasya Filipovna?
誰?
ナスターシャ・フィリッポヴナって?
どこで見たの?
Ganya was showing her portrait to
the General.
ガーニャさんが将軍に彼女の写真を見せていました。
Her portrait?
I want to see it.
彼女の写真を?
見てみたいわ。
Do me a favor, dear Prince.
Go to the office and fetch it.
お願いよ、公爵。
書斎へ行って、それを持ってきて。
Say that I want to see it.
私がそれを見たがってると言って。
Portrait!
写真ですって!
Excuse me.
Madame asked to see
Nastasya Filipovna's portrait.
すみません。
奥様がナスターシャ・フィリッポヴナの写真を見たいと。
What?!
Why did you tell them
about this portrait?
なんだって?!
なぜ写真のことを彼女らに話したんです?
You don't know anything.
Idiot!
何もわかってないんだから。
白痴!
I am sorry.
I didn't mean anything.
すみません。
そんなつもりじゃなかったんです。
It just came to mind.
I said Aglaya is almost as beautiful
as Nastasya Filipovna.
ふと思ってしまって。
アグラーヤさんがナスターシャ・フィリッポヴナのように
美しいと、言ってしまったのです。
You have a fixation on
Nastasya Filipovna.
Damned tattler.
よっぽどナスターシャ・フィリッポヴナに
ご執心のようだ。
おしゃべりめ。
Listen, Prince.
I have something to ask you.
聞いてください、公爵。
ちょっとお願いがあります。
I absolutely need to talk with Aglaya.
I wrote her a letter but I don't know
how to pass it to her.
アグラーヤに話さなきゃいけないことがあるんです。
手紙を書きましたが、でもどうやって渡せばいいか。
Help me pass this letter to her,
personally, so that no one sees it.
この手紙を彼女に渡して欲しいのです。
誰にも気づかれずに。
I'm not comfortable with this.
気がすすみませんね。
Wait, Prince. I'm desperate.
待って、公爵。後生です。
I cannot.
出来ません。
Trust me, you are my last resort.
Please.
信じてください。あなたにしか頼めないんです。
お願いです。
Alright, I'll take it.
わかりました。お引き受けします。
Thank you.
But make sure no one sees it.
感謝します。
でも、誰にも気づかれてはいけませんよ。
I won't tell anyone.
誰にも言いませんよ。
Thank you.
助かりました。
Prince!
One more thing. The letter is not sealed.
I hope you won't...
公爵!
もう一つだけ。手紙には封がしてありませんが、
出来れば…
Rest assured, I won't read it.
安心してください。読んだりはしません。
Just one word.
One word from her,
and I'll leave it all behind.
たった一言、彼女の一言さえあれば、
私は全てを投げ捨てるのに。
Ganya asked me to give you this letter.
ガーニャさんからの手紙です。あなたに渡すようにと。
Yes, she is pretty. Very pretty.
Is this the kind of beauty you like,
Prince?
ええ、彼女はきれいよ。とてもね。
こういう美しさがお好きですの、公爵?
Yes.
はい。
Exactly this kind?
こういうのが?
Exactly.
こういうのが。
May I ask you, why?
お聞きしたいわ、どうして?
This face shows a lot of suffering.
その顔からは、多くの苦しみが見て取れます。
You must be delirious, my friend.
あなた、どうかしてるわ。
Bring Ganya here.
ガーニャさんをここへ連れてきて。
But Mama!
でもお母様!
I only want to say a couple of words.
二言三言、言っておきたいだけよ。
You see, Prince, there's been a lot
of secrets lately.
Some silly etiquette.
見た通りよ、公爵。最近は隠し事だらけ。
くだらないエチケットばかり。
But this is a business that requires
maximum openness,
honesty and sincerity.
でもこれには、完全な透明性が要求されるんです。
正直さと誠実さがね。
Some strange marriages are
being arranged.
I don't like such marriages.
いくつか変な結婚話が持ち上がっているのよ。
私はそんな結婚は好きじゃありません。
Here's this new betrothed.
How do you do.
Are you getting married?
新しい婚約者のご登場よ。
ご機嫌いかが?
もう結婚はなさったの?
Married? Who is getting married?
結婚?誰とです?
I am asking, are you getting married?
私が聞いているんです。あなたは誰と結婚を?
Who, me?
私ですか?
Yes, you .
そう、あなたよ。
No, I'm not getting married.
いえ、私は誰とも結婚していませんよ。
So you say you're not getting
married?
あなたは結婚してないとおっしゃるのね?
Then I'll remember that today,
this Wednesday, you answered 'no'.
Is it Wednesday today?
それでは、今日という日を覚えておきましょう、
この水曜日、あなたは結婚していないと言いました。
今日は水曜日よね?
I think so, mother.
たしかそうよ、お母様。
They can never remember the days.
What date is it today?
この娘たちは日も覚えられないんだから。
今日は何日なの?
It's the 27th.
27日よ。
Very well. Goodbye, then.
You seem to have your hands full.
結構。それでは失礼するとします。
いっぱいいっぱいのようにですからね。
Goodbye, dear Prince.
Please come often, I am always
happy to see you.
それじゃあね、親愛なる公爵。
ちょくちょく遊びにいらしてね。喜んで迎えるわ。
Take back your portrait.
Let's go.
写真はお返しします。
行くわよ。
Prince, I'm going home now.
If you still want to live with us
I can show you the way.
公爵、私は家に帰ります。
もしあなたがまだウチに住むつもりなら、
案内しますよ。
Thank you.
お願いします。
Goodbye.
それでは。
Wait, Prince.
You have to leave a message
in my album.
待って、公爵。
あなたは私のアルバムに何か書かなくちゃ。
Daddy said you're
an excellent calligrapher.
お父様が素晴らしい書道家と言ってましたね。
With pleasure.
喜んで書きますよ。
Wait here. I'll bring my album.
待っててね。アルバムを持ってくるわ。
You told them I'm getting married.
Shameless tattler.
結婚のことを言いふらしましたね。
恥知らずのおしゃべりめ。
Believe me, you are wrong.
I didn't know you were getting married.
信じてください、誤解です。
あなたが結婚してるなんて知りませんでした。
You heard the General talking
and spread the word.
将軍との会話を盗み聞きして、広めたんでしょう。
Liar! How else did they find out?
Who told them?
この嘘つき!なら彼女らはどうやって知ったんです?
誰が話したんです?
You know this better than I do.
あなたの方がお詳しいでしょう。
Here, Prince. Choose a page and
write something.
はい、公爵。ページを選んで、何かお書きになって。
Yes.
わかりました。
Here's a pen.
I hope the steel one is alright.
あとはペンね。
鉄のペンで大丈夫だといいのだけれど。
I heard, calligraphers don't use
steel pens.
書道家は鉄のペンを使わないって聞いたわ。
It's not a problem.
問題ありません。
Just one word from you,
and I'll be saved.
あなたからの、たった一言。
それで私は救われるんです。
What should I write for you?
なんて書けばいいですか?
I'll tell you what to write.
これから私の言うことを書いてください。
Write:
"I will not...
...bargain."
"私は取り引きに…
…応じません"
Finished? Add the date.
終わった?日付も加えてね。
Show me.
How beautiful.
見せて。
なんて綺麗なの。
You wrote it fabulously.
You have a wonderful handwriting.
驚くほど綺麗に書いたわね。
素晴らしい筆さばきをお持ちだわ。
Thank you.
ありがとうございます。
Prince, would you come with me now?
I want to give you something to
remember me by.
公爵、ちょっとこちらへ来てくださる?
記念になにか差し上げたいわ。
Read this.
これを読んで。
But...
しかし…。
I know you didn't read it.
Read it out loud.
あなたが読んでいないことは知っているわ。
大声でそれを読んでください。
"Tonight my fate will be decided.
Tell me to quit it, and I will.
"今夜、私の運命が決まります。
あなたが止めるなら、わたしはやめるつもりです。
A word from you would only indicate
your kind attitude toward me,
nothing more.
あなたの一言の中にある、あなたの私に対する優しさ。
それ以上は望みません。
Upon your word,
I'll accept my poverty.
I'll accept my desperate
position with a smile..."
あなたの一言によって、
私は私の貧しさを受け入れます。
絶望的な立場も笑って受け入れます。
Enough.
This person claims that
my saying "quit it"
won't compromise me or oblige me.
もう十分。
私が”やめて”と言っても、
それは私の不名誉にならないし、責任も生まれない、
彼はそう言っているのよ。
This is supposed to be
his written warranty.
この手紙がその証拠になるともね。
But he knows: if he quit it by himself,
not expecting my approval
and not making it known,
I would probably become his companion.
でもね、彼だってわかっていたはずよ。
もし私に相談なんかしないで、
それを彼一人でやめたなら、
私は彼と一緒になったかもしれないってことがね。
But his heart is dirty.
He wants to get me
in exchange for the loss
of that hundred thousand.
でも彼の心は汚いから、私の確約と
10万ルーブルを交換したがっているの。
He has no shame.
Give him back this letter.
とんだ恥知らずだわ。
この手紙は彼に返して頂戴。
What should I tell him?
彼になんて言えばいいのです?
Nothing. It's the best answer.
Are you going to live in his house?
何も。それが一番いい答えよ。
あなたは彼の家に住むおつもり?
This is what the General recommended.
将軍のすすめなので。
Then be careful.
He won't forgive you for
returning his note.
Goodbye.
なら気をつけた方がいいわ。
あなたがその手紙を返したことで、
彼はあなたを許さないでしょうから。
それじゃあね。
■ガーニャ宅
"In the capital city of Petersburg
at the Sennaya Square
a merchant's son was getting married
to a certain aristocrat girl.
”首都サンクトペテルブルクの
センナヤ広場で
商人の息子が
貴族の女の子と結婚をした。
He put her in a carriage;
she wore a white veil.
She enchanted everyone
with her beauty.
彼は彼女を馬車に乗せ、
彼女はベールをかぶってた。
彼女はみんなを
その美貌でうっとりさせた。
As soon as the guests
arrived at the porch
She ran away with another man,
still wearing her bridal veil."
招待客が玄関に
到着したと思ったら
女は男と逃げてった。
白いベールを着けたまま。
Prince, this is your room.
公爵、ここがあなたのお部屋です。
Thank you.
ありがとう。
Where is your luggage?
お荷物はどこです?
I have no other things apart from
this purse.
この包み以外は何も。
"...and then the groom
slaughtered the cheating bride."
”そしてそれから花婿は
浮気者の花嫁を殺しました。”
We only have one cook
and no other servants.
料理人が一人だけ、
他に使用人はいません。
So I have to help.
ですのでご用があれば私に。
So you've just arrived from Switzerland.
スイスから来たばかりなんですって?
Yes.
はい。
Is it good there?
いいところでした?
Very good.
とてもね。
There must be mountains.
山がいっぱいあるんでしょうね。
Yes, there are mountains.
はい。ありました。
That's it.
でも、それだけよ。
Oh, we serve dinner at half past four.
You cat eat with us, or in your room.
It's up to you.
ああ、夕食は4時半にお出しします。
私たちと食べることもできますし、お部屋でも。
ご自由にどうぞ。
"The jury was crying,
and the prosecutor wept
when his harsh sentence
was read out.
”陪審員は泣き、
検察官も泣いた。
彼の厳しい判決文が
読み上げられた時に。
He went through all the trials,
dragging his chains.
He died in Siberia,
god save his soul."
彼は全ての試練を越えた。
繋がれた鎖を引きずりながら。
彼はシベリアで死んでしまった。
神の救いがあらんことを。”
Ferdyschenko.
フェルディシチェンコだ。
So what?
何かご用ですか?
I'm a tenant.
間借り人だ。
Oh, you want to introduce yourself.
ああ、自己紹介がしたかったんですね。
Do you have any money?
金は持ってるか?
Not much.
そんなには。
How much?
いくらある?
Twenty five rubles.
25ルーブルです。
Let me see it.
見せてみな。
Strange.
Why do they always turn brown?
These 25's often turn brown.
And some fade entirely.
Here.
おかしなもんだ。
なんでこう茶色っぽくなるんだ。
この25ルーブル紙幣ってやつは。
真っ茶色に染まるやつもある。
ほらよ。
I came to warn you.
First, never lend me money,
even when I ask.
おれはお前に警告しに来たんだ。
1つ。俺が金を借りに来ても、
決して貸さないこと。
Alright.
わかりました。
Second,
are going to pay for the room?
2つ。
部屋代は払うつもりなのか?
Well, of course.
ええ、もちろん。
I'm not paying.
おれは払わん。
Have you seen the local general?
ここの将軍にはもう会ったか?
Not yet.
いえ、まだ。
Never heard of him?
聞いたことは?
I didn't have a chance.
その機会がなかったものですから。
You'll see him and hear him.
そのうち見聞きもするだろうさ。
Tell me, how can a man live
with a name like mine:
Ferdyschenko?
教えてくれ、どうやったら生きていける?
フェルディシチェンコなんて名前でさ。
Why not?
なにが問題なんです?
Goodbye.
じゃあな。
Mine is the second door on the left.
Please don't visit me.
But I'll visit you often.
Goodbye.
俺の部屋は左に行って2つ目のドアだ。
おれの部屋には来ないでくれ。
おれはお前の部屋にちょくちょく来るがね。
それじゃあ。
Your Excellency!
これは将軍!
It's him. His exact likeness.
彼だ。彼の生き写しだ。
I heard you mention his dear name
and I remembered my cherished past.
Prince Myshkin?
君が彼の名を語るのを聞いて、
大切な記憶が蘇った。
ムィシュキン公爵じゃろ?
That's right.
はい、そうです。
General Ivolgin, retired and miserable.
What is your first name?
イヴォルギン将軍です。退役した哀れなね。
苗字を伺っても?
Lev Nikolayevich.
レフ・ニコラエヴィチです。
I knew it. You're the son of my friend.
He was practically my childhood friend.
His name was Nikolay Petrovich.
思った通りだ。私の友人の息子だ。
彼は幼なじみのような存在だった。
名前は、ニコライ・ペトロヴィッチ。
My father's name was Nikolay Lvovich.
私の父の名前はニコライ・リボヴィッチです。
What?
なに?
Lvovich.
リボヴィッチです。
Of course, Lvovich.
そうそう、リボヴィッチだ。
My dear, I remember you this small.
私はあなたがこんなに小さかった時を覚えてますよ。
Do you really?
But my father died twenty years ago.
本当ですか?
しかし、私の父は20年前に亡くなっているのですが。
Exactly. Twenty years!
Twenty years and three months.
そうだ。もう20年になる!
20年と3ヶ月です。
Young man,
we went to school together.
So, you've moved in with us.
お若いの、
君の父とはともに学んだ仲です。
君と過ごしたこともありますよ。
Only for a while.
This is wonderful.
ちょっとの間だけですがね。
これは素晴らしい出会いですよ。
Do you happen to have a...?
...ten rubles?
ところであなた、持ってませんか…?
10ルーブル紙幣なんか。
I have one business,
and I badly need ten rubles.
ちょっと野暮用があって、
10ルーブルがどうしても必要なんです。
Unfortunately, I don't have
ten rubles.
But I have twenty-five.
申し訳ありませんが、
10ルーブル紙幣は持っていません。
25ルーブル紙幣ならあります。
You can get change
and give me back fifteen.
両替して頂いて、
15ルーブルお返しください。
No doubt, no doubt.
間違いなく、間違いなく返します。
Thank you so much, Prince.
I'll be right back.
とても助かりました、公爵。
すぐに戻ってまいります。
As an old friend of your father
I wish to warn you.
君の父の古い友人として、
一つ警告しておきましょう。
There is a tragedy in my house.
A marriage is being arranged.
この私の家には悲劇があります。
結婚話が持ち上がっているんです。
A marriage of a dubious woman
and a young man
who could have a career
of a court official.
怪しい女と、若い男の結婚話がね。
若い男の方は、裁判所の役人にだって
なれる人物です。
But this woman...
She's going to enter my house.
But while I'm still breathing...
...she won't enter.
しかし女の方は…
私の家に転がり込むつもりなのです。
しかし私が生きている内は、
女をウチに入れたりはしません。
I'll lie on the threshold,
and let's see them walk over
my dead body.
私が死んでも壁になってみせます。
私を踏んででも、結婚するでしょうがね。
Ardalion!
あなた!
Imagine, my dear:
I nursed this Prince with my own hands.
想像できるか、お前。
私がこの公爵を育てたんだ。
Prince, do me a favor,
come to the living room.
公爵、お願いです。
居間に来てください。
With pleasure.
喜んで。
Prince, you have to forgive
my husband
if you're going to live with us.
公爵、亭主を許してください。
この家に住むのならね。
Take a seat.
You have to agree, every one of us
has his qualities and traits.
掛けてください。
誰だって、長所や短所は
持ってるでしょう。
One thing I have to ask you.
If Ardalion asks you about the rent,
please tell him you've already paid me.
一つ聞きたいのですが。
亭主が家賃を催促してきたら、
すでに私に払ったと言ってください。
What is it, Varya?
何?ワーリャ。
Ganya's gift. From her, personally.
あの女が、ガーニャにこれを渡したの。
Tonight everything will be decided.
Tonight.
今夜、全てが決まるわね。
今夜に。
Well,
looks like no hope is left.
いいでしょう。
希望はもう残ってないようね。
I meant to ask you, Prince.
How long have you known my son?
公爵、教えてください。
息子と知り合ってどれくらいですか?
When I asked Ganya about you,
he said you know everything,
and I shouldn't stand on ceremony.
息子にあなたのことを聞いたら、
あなたは全て知っていると答えました。
私からは内実は言えないのです。
What is this "everything"?
I wanted to know, to what extent...
”全て”ってなんです?
つまり伺いたいのは、どの程度まで…
So it's tonight, Ganya?
今夜なのね、ガーニャ。
What is tonight, mother?
なにがですか、母さん。
I see.
You've been chatting again, Prince.
そうか。
喋ったんですね、公爵。
Is it some kind of an illness
that you can't keep your mouth shut?
Don’t you get it, Your Excellency?
黙ってられないのは、
何かの病気ですか?
まだおわかりになりませんか?
It's my fault.
It's me who told Varya.
私が話したんだ。
ワーリャにね。
I believe she should know.
Everything is practically decided.
話しておくべきだと思ったんだ。
ほとんど決まったことだからね。
If everything is decided
then Ivan is right.
もう決まっているのなら、
プチーツィンさんが話してくれてよかったわ。
Don't frown and don't be irritated.
Believe me, I'm quite resigned
already.
そんなに怒った顔しないで。
信じて。私はもう何も言わないわ。
But I can only speak for myself.
You can't expect the same from
your sister.
私はね。あなたの妹は
まだ納得してないみたいだけど。
It's back to her, again?
またあの問題児か。
I swear, mother.
Whoever comes to live in this house
she'll show nothing but respect to you.
誓いますよ、母さん。
この家に来た者には、
あなたに失礼な真似はさせません。
You know very well,
it's not myself that I'm worried about.
Your happiness is my only wish.
わかっているはずよ。
私は自分の心配をしているんじゃない。
ただあなたの幸せを願っているのよ。
Dear mother.
愛しい母さん。
They say, tonight, everything
will be decided between you two.
What will be decided?
今夜、あの女との話が決まると
聞いたわ。
何が決まるの?
Tonight, at her house,
she will...
She promised to announce
our wedding.
今夜、あの女の家で。
あの女は…
僕たちの結婚を発表すると
約束したんです。
How can it be, Ganya?
How can it be
when you don't love her?
Would you take a woman that is so...?
どうしてなの、ガーニャ。
どうしてあの女を愛してないのに、
結婚なんかしようというの。
どうして、あんな…
So -- what?
So experienced, you mean?
あんな、なんですか?
あばずれって言いたいんですか?
This isn't what I meant.
別にそうは言ってません。
Have you infatuated her so much that
she doesn't notice...
Have you, my own son...
あなたはあの女を自分の虜に
したことがあるの?
どうなの、ガーニャ。
There you go again.
You got carried away and spilled it out.
またその話ですか。
むきになって本音が出ましたね。
What makes you think
I'm deceiving her?
どうしてあなたは、
私があの女を騙したと思うのです。
It's all Varya's fault.
Look how she's staring at me.
ワーリャがそう言ったんですね。
あいつの私を見る目でわかる。
If she comes into this house
then I'll leave immediately.
あの女がウチに来るなら、
私はすぐにここを出ていくわ。
It's just your stubbornness.
Your stubbornness made
you refuse Ptitsin's proposal.
頑固者め。
プチーツィンのプロポーズを反故にもして。
You're a fool.
あんたは馬鹿よ。
I don't care, Varya.
If you wish, marry him right away.
なんとでも言え、ワーリャ
こいつが好きなら、こいつと結婚しろよ。
Oh god.
なんてこと言うの。
Right away!
すぐにでもな!
I'm sick of your stubbornness.
I'm sick of you all.
お前の頑固さにはうんざりだ。
お前の全てにうんざりだよ。
Prince, are you leaving?
What took you so long
to leave us alone?
公爵、行ってしまうんですか?
さっさと我々を置いて行けば良かったんです。
I...
私は…
How many times did I tell you
not to meddle in my business?
おれの問題に関わるなと
何回言えばいいんだ?
Your business?
Your filthy, shady business.
あんたの問題?
汚くて後ろ暗い問題だこと。
How dare you?
Mother, let go of me.
言ったな?
母さん、止めないでください。
You're a scoundrel, Ganya.
あんたは悪党よ、ガーニャ。
You woke up, finally.
If you're so lazy that
you can't fix the doorbell
then you should sit at the door
when people are knocking.
やっと起きたみたいね。
呼び鈴を直せないほど物ぐさなら、
ドアの前に座ってなさいよ。
Now you dropped my coat.
Idiot! They ought to kick you out.
Go in and announce me.
私のコートまで落として。
白痴!こんな使用人はクビにすべきね。
行って伝えてきて。
Where are you taking my coat?
Are you crazy or something?
Where are you going?
私のコートをどこへ持ってく気?
あなた頭でもおかしいの?
どこへ行くのよ?
To announce you.
あなたが来たことを伝えに。
And how are you going
to announce me?
誰が来たって伝えるつもりよ。
Nastasya Filipovna.
ナスターシャ・フィリッポヴナさんが。
How come you know me?
I've never seen you before.
どうして私を知ってるの?
私はあなたに会ったことないわよ。
Why are you mumbling like an idiot?
Go, announce me.
なに白痴みたいな声出してるの。
行って伝えてきて。
Wait a moment.
What's that yelling over there?
ちょっとお待ち。
あっちで何を騒いでいるの?
They are fighting.
喧嘩中なんです。
Nastasya Filipovna.
ナスターシャ・フィリッポヴナさんです。
What? Nastasya Filipovna?
なに?ナスターシャ・フィリッポヴナ?
There she is!
すぐそこに。
Happy now, Ganya?
良かったわね、ガーニャ。
Finally, I'm here.
What's your doorbell for?
やっとここに来れたわ。
呼び鈴は何のためにあるのかしら?
Nastasya Filipovna!
ナスターシャ・フィリッポヴナ!
I almost froze to death at your door.
ドアの前で凍死しかけたわ。
I am deeply...
私は深く…
Please introduce me.
紹介してもらえるかしら?
Please.
ぜひ。
Varya!
Please meet Nastasya Filipovna.
This is my sister.
ワーリャ!
ナスターシャ・フィリッポヴナにご挨拶を。
これは私の妹です。
I'm happy to meet you.
お会いできて光栄です。
And this is my mother.
そして、こちらが私の母です。
Mama, please.
It's good to meet you, my dear.
I am especially pleased.
お会い出来て嬉しく思います。
とってもね。
I'm also very pleased.
私も嬉しいですわ。
Is this your living room?
Where is your office?
これがあなたの居間?
書斎はどこ?
Right here.
こちらです。
Very sweet.
結構。
Where are your tenants?
I heard you have tenants.
下宿人の方は?
下宿人がいるって聞いたわよ。
It seems there's hardly any space
for tenants.
It's already crowded.
下宿させるには、
ちょっと手狭なようだけど。
もう混雑してるわ。
Is it a profitable business, Nina?
ニーナ、下宿宿は儲かるの?
It's a little troublesome.
But everything has to be profitable.
We've only just started.
まだまだですね。
でもやがて軌道に乗ると思います。
まだ始めたばかりなんです。
Nastasya Filipovna!
ナスターシャ・フィリッポヴナ!
Ferdyschenko!
Why are you here?
フェルディシチェンコ!
どうしてあなたがここに?
I'm their tenant.
I eat and sleep, but pay no rent.
ここに下宿してるんです。
食っては寝てますが、家賃は払ってません。
Is this person also a tenant?
この方も下宿人?
This is my friend, Ivan Ptitsin.
私の友人のプチーツィンです。
My god, what face you have!
Look how mortified he is.
まあ、あなたひどい顔してるわ!
彼の悔しそうな顔をご覧なさいよ。
Have some water and
stop looking like this.
水を飲んで。
そんな顔はおよしなさい。
Prince, what are you...
What are you, a doctor?
公爵、あんたは…
あなたは医者か何かですか?
Nastasya Filipovna, let me introduce
this precious person is Prince Myshkin.
ナスターシャ・フィリッポヴナ、紹介させてください。
ムィシュキン公爵という、大事な方です。
Prince? He is a prince?
Imagine, I took him for a doorman.
公爵?彼が公爵?
考えられる?私は彼をドアマンとして扱ったわよ。
I almost cussed you out, Prince.
Please, forgive me...
What's his name?
大変失礼なことをしました、公爵。
どうかお許しを…。
彼の名前は?
Myshkin. He's an idiot.
ムィシュキン。白痴ですよ。
Prince, why didn't you say a word
when I was so terribly wrong?
公爵、私が勘違いしてた時、
どうして言ってくれなかったの?
I...
I was amused to see you so...
...so suddenly.
私は、
あなたにお会い出来て嬉しかったものですから。
こんな突然に。
You were amused?
But how did you know it was me?
Have you seen me before?
嬉しかった?
でもどうやって私を知ったの?
前にお会いしたかしら?
Let me ask,
why were you so petrified?
What's so "petrifying" about me?
聞きたいのだけれど、
なぜあんなに呆然としてたの?
私の何があなたを呆然とさせたの?
Recently, I was impressed
by your portrait.
さっき、あなたのお写真を見て
強い印象を受けました。
Later, I talked about you with
Epanchins.
Earlier this morning,
Parfyon Rogozhin told me about you.
その後、エパンチン将軍と
あなたについて話しました。
今日の朝には、
ロゴージンがあなたのことを話していました。
Then how did you recognize me?
で、どうして私だと気づいたの?
Because of your portrait.
あなたの写真を見たからです。
Is that all?
それでわかったの?
Also, because I imagined you
to be exactly like this.
それに、まさにこんな人だろうと
想像してましたから。
I feel I've seen you before.
以前、どこかでお会いした気がします。
Where?
Where could you have seen me?
どこで?
どこで会ったっていうの?
I've certainly seen your eyes
somewhere.
私は確かに、どこかであなたの目を
見たことがあります。
No, this is impossible.
It must have been a dream.
いや、そんなはずはないな。
夢で見たに違いないです。
Prince, you're very suave.
口説いてるんですか、公爵。
And here's the General.
おっと、大将のおでましだ。
Dad!
父さん!
Let me introduce myself.
General Ivolgin.
お初にお目にかかります。
イーヴォルギン将軍です。
Merci.
メルシー。
I'm an old warrior and the patriarch
of this family.
I live by hope to embrace...
You're so... so...
So charming...
...charming lady...
老兵であり、この家の家長であります。
あなたは可愛い方だ。
ぜひとも…
ハグさせてください。
なんて可愛らしい方だ。
Take him away, mother!
母さん、父さんを連れてってくれよ。
Madam, I heard that my son...
婦人、息子とはその…
Yes, your son is not bad.
You're not bad either, daddy.
ええ、あなたの息子さんはいい方ですよ。
あなたもね、お父様。
Why don't you ever come
to my house?
Are you avoiding me,
or is your son stopping you?
私の家に来ませんか?
お嫌でなければ。
それとも息子さんに止められてるんですか?
My dear!
Children of the 19th century
and their parents...
親愛なる婦人。
19世紀の親子というのは…
Nastasya Filipovna!
Please let General Ivolgin go.
He has to go.
ナスターシャ・フィリッポヴナ!
お願いですから父を行かせてください。
彼には用事があるのです。
How can I let him go?
I heard so much about him.
どうして?
彼のことはよく聞いてますわ。
I've long wanted to meet him.
Why does he have to go?
ずっとお会いしたかったんですの。
どんな用事があるっていうの?
He's supposed to be retired.
Aren't you, General?
この人は退役したんでしょう?
そうでしょう、将軍?
My years are advanced.
Due to tragic circumstances,
as a result of a friend's betrayal.
And my son, Ganya, is now...
...his lackey.
しがない老人です。
悲しい出来事があったんです。
友に裏切られたのです。
そして今では息子も…
私を裏切ろうとしている。
Mother.
母さん。
I promise you, Nastasya Filipovna,
that Ardalion will come over to your
house and tell you everything.
But right now he needs rest.
お約束します。ナスターシャ・フィリッポヴナ。
いずれ亭主をあなたの家に連れて行きます。
事情もお話しします。
でも今は休ませてください。
Ardalion, they say you need rest.
将軍様、休みが必要なの?
My darling, darling.
愛しいお前、愛しい…
Dad! Let's leave this place.
お父様!もう行きましょう!
My child!
Adieu!
愛しい娘よ。
アディオス!
Dad!
父さん!
There he is!
彼がいたぞ!
Hello Ganya, you scoundrel.
ようガーニャ、この悪党め。
I bet you didn't expect to see
Parfyon Rogozhin.
このロゴージン様に会うとは
思わなかっただろう。
Then it's true.
This is the end.
どうやら本当だったらしい。
もうお終いだな。
Damn you, Ganya.
You'll pay for this.
ちくしょう、ガーニャめ。
覚えていろよ。
Excuse me, gentlemen.
What right do you have...
失礼、諸君。
君たちは一体どんな権利があって…
I'll show you what right.
その権利を見せてやるよ。
Careful!
These are my mother and sister.
乱暴はやめてください!
ここには私の母と妹がいるんですよ。
We know this is your mother.
そんなことはわかってるさ。
But who the hell are you
and what do you want?
しかし、あんたらは一体誰で、
何が望みなんだ?
How can you not recognize Rogozhin?
こいつ、おれが誰だかわからないらしい。
It's possible we've met before, but...
前に会ったかもしれないが、しかし…
Did you hear it? "Met before".
聴いたか?前に会ったかもだってよ。
Only a month ago
I lost 500 of my father's money to you.
You dragged me into the card game
while your friend was cheating.
These are the witnesses.
ほんの1ヶ月前、
お前は親父の金500ルーブリを奪ったんだ。
おれをイカサマの賭け事に
引っ張り込んでな。
こいつらが証人だ。
If I showed you three rubles now
you'd crawl after them all the way
to Vasilievsky Island.
Lebedev! Will he crawl?
もしおれが今、3ルーブルでもちらつかせば、
お前はワシリエフスキー島まで
這ってでも行くだろうよ。
レーベジェフ、こいつは這って行くだろ?
He will!
這って行きますとも!
I came to buy you now.
Don't mind my ragged coat.
おれはお前を買い叩きに来たのさ。
おれのコートが汚れてるのは気にするな。
I have loads of money now.
I can buy you and all of your guts,
if I wish.
I can buy all of you and
everything you have.
今じゃ金はうんとある。
お前の五臓六腑を買い叩けるだけのな。
お前らが持っているもの全部、
おれは買うことが出来るのさ。
Nastasya Filipovna!
Don't reject me.
You and him... Are you going to...
ナスターシャ・フィリッポヴナ!
おれを見捨てないでくれ。
お前はやつと、結婚を…。
What's wrong with you?
And what gives you the right
to ask me about it?
あなたに関係ある?
なんの権利があって、
私にそんなこと聞いてるのかしらね?
I'm not going to.
私は結婚しないわ。
Not going?
結婚しない?
So be it.
They told me
you're engaged to him.
よかった!
お前がやつと婚約したと
そう聞いてたんだ。
How is this possible?
With him... With this Ganya...
やっぱりあり得ないよな?
ガーニャなんかと結婚するなんてさ。
I can buy him for one hundred rubles.
こんなやつ、100ルーブルで買い叩けるぜ。
If I give him a thousand,
or two, or three,
he'll run away
on the eve of the wedding
and leave the bride to me.
Isn't it so, son of a bitch?
もしおれが2、3千ルーブル渡せば、
こいつは結婚前夜でも逃げ出すさ。
このおれに花嫁を渡してな。
そうだろ、ゲス野郎?
Get out of here, you bum!
出て行け、ならず者!
Ganya!
ガーニャ!
Put your money on the table.
金をテーブルに出してやりましょう。
That's right, you wino.
酔っぱらい野郎、いいこと言うな!
Hey you! Shut up.
お前たち、静かにしろ!
Nastasya Filipovna, here it is.
Eighteen thousand.
ナスターシャ・フィリッポヴナ、これを見ろ。
1万8千ルーブルある。
Eighteen thousand... Is it for me?
1万8千で…?私を買う?
There will be more, much more.
もっとある、もっとな。
You're a tough merchant.
ご立派な商人ですこと。
Then let it be forty.
Forty thousand, not eighteen.
それなら4万だ。
4万ルーブルだ。1万8千じゃない。
Forty thousand on the table.
Here!
テーブルの上に4万だ。
見ろ!
You think I'm that cheap, Rogozhin?
Ganya was getting seventy-five for me.
私も安く見られたものね、ロゴージン?
ガーニャが得る7万5千には及ばないわ!
In that case, I'm giving a hundred.
A hundred thousand, tonight.
それなら、10万だ。
今夜、10万ルーブル持ってくるぞ!
Ptitsin!
Ptitsin, you loan shark.
Help me out, I won't forget you.
プチーツィン!
金貸し野郎。
おれを助けてくれ。この恩は忘れない。
You're drunk.
Have you forgotten where you are?
君は酔っ払っている。
ここがどこだかわからないのか?
He must be making up the digits
because he's drunk.
酔っ払いがデタラメ言ってるだけよ。
I'm not making them up.
Tonight, you'll see the whole hundred.
デタラメじゃない。
今夜、10万ルーブル見せてやる。
Ptitsin!
Help me out, now.
Take anything you want.
プチーツィン!
助けてくれ。
利息はいくらでもいい。
Gentlemen, excuse me.
What's going on here?
失礼、紳士諸君。
一体、何の騒ぎだ?
Who's this scarecrow?
ぼろいのが出てきたぞ。
Old man, come with us,
we'll get you a drink.
爺さん、一緒に来いよ。
一杯飲ませてやるぜ。
This is low!
最低よ!
Daddy, please go.
お父様、下がってて。
Isn't there anyone capable
of taking this shameless damsel
out of here?
ここにはまともな人はいないの?
誰かこの恥知らずの女を追い出してよ。
Are you calling me shameless?
Look at your sister
harassing me, Ganya.
私を恥知らずって言ったの?
妹がひどいこと言ってるわよ、ガーニャ。
What have you done?
お前、なんてこと言うんだ。
I've done what I wanted.
Should I ask for her forgiveness
after she humiliated our mother?
言いたいこと言っただけよ。
母親を侮辱した女に、
謝れとでも?
Her coming here is a dishonor
to your house.
You're a lowly scoundrel!
あの女がウチに来るなんて屈辱よ。
あんたは最低の悪党だわ!
You bitch!
このアマ!
Enough of this.
そこまでです。
For how long will you be interfering?
You idiot!
お前はどれだけ首を突っ込むんだ?
白痴め!
It's alright.
Let him...
But I won't give her...
大丈夫です。
彼が…
妹をぶたずに済みました。
You'll be so ashamed
of what you've done.
あなたは後になって、
このことを恥じるでしょうね。
You'll be more than ashamed
for hurting this lamb.
恥じることだな、
あんな子羊を傷つけたことを。
Prince, my friend, why are you here?
公爵、友よ、なぜここにいる?
Forget about them. Come with us.
You'll see how Rogozhin can share.
あいつらなんか忘れて、おれらと一緒に来いよ。
このロゴージン様が面倒見てやるぜ。
Come, your Excellency.
そうしましょう、公爵。
Aren't you ashamed of yourself?
This is not like you.
あなたはご自分が恥ずかしくないんですか?
これは本当のあなたじゃない。
Can this be true?
そうでしょう?
I have, in fact, seen your face
somewhere.
私、確かに、
あなたをどこかで見たわ。
Goodbye, Prince.
I'm... really...
I'm really not like that.
さようなら、公爵。
私、本当は…
そんなつもりじゃなかったんです。
Nina Alexandrovna, forgive me.
Forgive me.
奥様、どうか私を許してください。
どうか。
Nastasya Filipovna!
God damn it!
ナスターシャ・フィリッポヴナ!
なんてこった!
Wait!
I'll see you off.
待ってください!
送りますよ。
Don't. No need for that.
Make sure to come tonight.
いらないわ。結構よ。
夜には必ず来なさいね。
There he is.
Lost your game, huh?
ここにいたぞ。
お前は負けたのさ。
It's you, Prince.
Prince,
I did a bad thing.
あなたか、公爵。
公爵。
悪いことをしました。
Forgive me.
Forgive me, Prince.
許してください。
許してください、公爵。
Forgive me, Prince!
Forgive me, my dear.
許してください、公爵!
どうかお許しを、どうか。
If you want, I'll kneel in front of you.
お望みであれば、膝だってつきます。
What are you doing? Why?
Please don't.
Don't be like this. Get up.
なにをしてるんです?どうして?
やめてください、
そんな真似は。さあ起きて。
Forgive me.
私を許してください。
Please don't be so upset.
Sit down, sit down.
そんなに思いつめないで。
座って。座ってください。
I had no idea you'd be like this.
I thought you were not capable of...
こうなるとは思ってもみませんでした。
あなたが非を認めるなんて…
Of taking blame?
Why not, if it's my fault.
出来ないと思いましたか?
私に非があるのは明らかです。
You'd better ask for
your sister's forgiveness.
妹さんに許しを願った方がいいです。
I can't do this.
Our family doesn't forgive, Prince.
出来ません。
私の家族は許しません、公爵。
They think I don't understand
what shame and what torture
I'm inviting.
私が恥知らずで、無責任な人間だと
彼らは思っているんです。
All of it because of
the confounded money.
全ては汚らわしい金のせいなんです。
Then why are you doing it?
Why are you trying to ruin
yourself and her?
では、なぜあなたはそれを得ようというのです。
自分自身と彼女を台無しにしてまで。
I've made some calculations, Prince.
I have a bigger goal.
込み入った事情があるんです、公爵。
私には大きな野望があるんですよ。
What do you think I'm going to do
with the 75 thousand
that I'll get for Nastasya Filipovna?
You think I'll buy a carriage?
ナスターシャ・フィリッポヴナと結婚して、
7万5千ルーブル手に入れたら、
僕がどうすると思います?
馬車を買うとでも?
Or maybe, an apartment?
No way.
あるいは、家を買うと?
違います。
When I get the money,
I'll keep wearing the same
three-year-old jacket.
I'll quit all my club connections.
金を手に入れた後でも、
古いジャケットを着続けますよ。
クラブの繋がりも断ち切ります。
I'll become such a committed loan shark
that some 15 years later people will say:
"Ivolgin is truly a King of Jews."
悪徳高利貸しになるつもりなんです。
15年後に人々は僕をこう呼ぶでしょう。
”ユダヤの真の王、ガーニャ”とね。
This is my biggest passion, Prince.
これが僕の夢なんですよ、公爵。
I'm probably wrong to confide in you
like this, Prince.
こんなにベラベラ喋ってしまったのは
間違いだったかもしれません。
But you're the first noble person
with whom I can be frank.
でもあなたは僕が心を開くことのできる、
最初の立派な人間だったのですよ。
There are too few honest people here.
Scoundrels like honest people.
ここには正直な人は少ないんです。
正直を装った悪党ばかり。
Didn't you know this?
ご存知なかったですか?
But tell me, what makes me
a scoundrel?
Why does everyone
think I'm a scoundrel?
しかしわかりません。
何が私を悪人にさせるのでしょうか?
どうしてみんな、
私を悪人だと思うのでしょうか?
I don't think you're a scoundrel.
I think you're a most ordinary person.
あなたを悪人だとは思いません。
あなたは最も普通の人だと思います。
You're very weak,
but nothing out of the ordinary.
あなたはとても弱い、
ですが変わったところはありません。
I suppose you know, dear Prince,
that nothing is more painful than to hear
you're just an ordinary man
without any special talents.
わかって欲しいな、公爵。
あなたは特徴のない
普通の人間だと言われることほど、
辛いことはないんですよ。
Do you believe General Epanchin
is trying to hurt me?
エパンチン将軍が私を責めたせいだと思いますか?
No. It's because I'm nothing.
Because I'm ordinary.
違います。僕には何もないからなんです。
僕が平凡な人間だからです。
This is what's driving me crazy.
This is why
I passionately want money.
これが僕の問題なのです。
だからこそ僕には、
どうしてもお金が要るんです。
Money, money, money!
金、金、金!
If only I get some money
I'll become very extraordinary,
もし金さえ手に入れれば、
僕だって特別な人間になれるのです。
talented and intelligent.
才能と知性を持った人間にね。
Money is particularly hateful and hurtful
because it gives everything to a person.
金というのはとりわけ憎しみを生むものです。
なぜなら金は、人間に全てを与えるからです。
It'll be like this
until the end of the world.
世界が終わるまで、それは変わりません。
Enough of this.
Time to go to my evening ball.
もうたくさんだ。
そろそろお暇しますよ。
Prince, by the way.
You seem to like Nastasya Filipovna
too much.
ところで、公爵。
ナスターシャ・フィリッポヴナが
大層お気に召したようですが。
Yes, I like her.
はい、彼女が好きです。
Have you fallen in love?
恋に落ちましたか?
No, no.
いえ、まさか。
But you're blushing.
You're suffering.
でも顔が赤くなってますよ。
お苦しそうだ。
It's alright.
I won't make fun of you, Prince.
安心してください、公爵。
からかうつもりはありませんよ。
Well, goodbye.
では、僕はもう行きます。
By the way, Prince.
ちなみにですが、公爵。
She's quite a virtuous woman,
if you can believe this.
信じられないかもしれませんが、
彼女はあれでなかなか身持ちの固い女性ですよ。
As for the gossip about her
living with Totsky,
well, it's not true.
トーツキー氏とのゴシップですが、
あれは本当じゃありません。
That's been over for a long time.
もう長いことね。
Well, goodbye, Prince.
それでは、公爵。
I need to see her.
To see her, at all costs.
彼女に会わなければ。
なんとしてでも。
■ナスターシャ宅
"Beautiful Catherine was walking
along the Nevsky Boulevard.
Suddenly, a gust of wind
lifted her skirt.
"美しいキャサリンが
ネフスキー大通りを一人で歩いていると、
突然、突風が彼女のスカートを持ち上げた。
Men were laughing as they passed.
But what did they see?
男たちは通り過ぎながら笑っていた。
しかし彼らは何を見たのだろう?
Yes, what did they see?
What they saw I cannot say."
そう、彼らは何を見たのか?
言ってはならぬものを見たのさ。”
"After seeing Catherine's delights
a gentleman greeted her with a bow.
He leaned over and said something.
"紳士がお辞儀をして挨拶するのを
キャサリンが喜んだ後、
彼は身を乗り出して何かを言った。
But what did he whisper to her?
What did he whisper?
でも彼は彼女に何を囁いたのか?
一体何を彼は囁いたのか?
What he whispered,
that I cannot say."
彼が囁いたこと、
それは私には言えない。"
"I don't know what Catherine replied
but there was a booth waiting for them
in the restaurant Danon.
キャサリンが何と答えたのか私は知らない。
でもダノンという名のレストランには
彼らを待っている部屋がありました。
Evidently, the beauty kept her word.
確かに、その美しい人は約束を守りました。
But what happened between them?
What happened between them
I just cannot say."
でも彼らの間に何があったのか?
彼らの間にあったこと、
それは私には言えない。”
I'm really sorry I forgot
to invite you, Prince.
ごめんなさい、あなたを招待することを
忘れていたわ、公爵。
I'm very happy you're giving me
a chance
to thank you for your decisiveness.
あなたの果敢さに感謝を伝える機会を頂けて
私とても嬉しいわ。
Please forgive me, but...
I very much wanted to visit you.
お許しください、しかし…
私はあなたにとてもお会いしたかったのです。
Don't be sorry.
This will ruin your
strange and unusual arrival.
誤ったりしないで。
奇妙で珍妙な登場が台無しになるわ。
Let's go up.
行きましょう。
Everything about you is perfect,
even the fact that you're thin and pale.
あなたの全てが完璧です。
あなたが痩せていて、青白いという事実さえも。
Do you think I'm perfect?
私が完璧だと、あなたは思って?
Although you're good at guessing,
but this time you're wrong, Prince.
洞察がお得意のようだけど、
この場合に関しては間違っていますわ、公爵。
You'll have a chance to see it tonight.
今夜、それを見るチャンスがあるわ。
Allow me to introduce
my new acquaintance
and my good friend
Prince Lev Myshkin.
私の新しいお友達を紹介させてください。
ムイシュキン公爵よ。
This way, Prince.
Prince, meet General Epanchin.
こっちへ、公爵。
公爵、こちらがエパンチン将軍です。
I've met the Prince already.
私はすでに公爵とはお会いしております。
Afanassy Totsky.
こちらがトーツキーさん。
Please, sit down.
お掛けになって。
Look at you, Prince.
I didn't expect this from you, my dear.
驚きましたよ、公爵。
あなたがここに来るとは、思ってもみませんでした。
Judging by the fact that the Prince
is blushing like a debutante
I conclude that this young gentleman
is harboring most virtuous intentions.
ウブな女性みたいに赤面している所を見るに、
この若い紳士は最も気高い意図を隠し持っていると私は判断する。
Gentlemen, what's so surprising
about his arrival?
Seems to me, the case is clear.
紳士方、彼の登場の何がそんなに驚きなんですかい?
私から見りゃ、事は明らかですよ。
The case is speaking for itself.
事自体がこれを語っている。
The case is too clear.
明らかすぎるぐらいです。
I remember how much the Prince was
impressed with Nastasya Filipovna's portrait.
Besides, he confessed to me...
私は彼がどれだけナスターシャ・フィリッポヴナの写真に
心を打たれたのかを覚えています。
その上、彼は私に告白しました。
I never to confessed to you.
I simply answered your question.
私は告白していません。
ただあなたの質問に答えただけです。
Bravo, Prince.
It isn't very funny, but it's honest.
ブラボー、公爵。
とても面白いわけじゃないが、正直だ。
Stop grimacing, Ferdyschenko.
顔を歪めるのをやめなさい、フェルディシチェンコ。
Let's have a drink, gentlemen.
Maybe it'll cheer us up.
飲みましょう、皆さん。
きっと景気付くわ。
Prince!
Drink with me, Prince.
Tonight, I want to get drunk.
公爵!
一緒に飲んで頂戴、公爵。
今夜は私、酔っ払いたいの。
You seem to be a little feverish.
少し熱があるように見えますよ。
Not a little.
少しじゃないわ。
Should we let our hostess rest?
主役を休ませるべきですかな。
Right, gentlemen, it's getting late.
そうですね。もう夜も老けてきました。
Don't go, gentlemen. Please stay.
I urgently need your presence.
行かないで。待ってください、皆さん。
今の私にはあなたたちがとりわけ必要なんです。
Prince!
Prince, these old friends of mine,
General and Afanassy,
keep trying to marry me off.
公爵!
公爵と、私のお友達。
将軍とトーツキーさん。
どうぞ私を嫁がせようとし続けてください。
Tell me what you think.
Should I get married or not?
Whatever you say
I'll do just that.
あなたの考えを教えてください。
私は結婚すべきでしょうか?
あなたがおっしゃることに
私従いますわ。
Married to whom?
結婚って、誰とです?
To Ganya Ivolgin.
ガーニャ・イーヴォルギンと。
Don't get married.
結婚すべきではありません。
Then so be it.
それならそうしますわ。
Did you hear, Ganya,
what the Prince has decided?
聞いた?ガーニャ。
公爵が決めたことを。
So this is my answer to you.
Let this business be over,
once and for all.
これが私の、あなたへの答えよ。
これでこの話はおしまい。
But please...
How can you do it, Nastasya Filipovna?
しかし…
そんな話があるかね、ナスターシャ・フィリッポヴナ。
What are you doing?
なにを考えているんだ?
Look at you all, acting so flustered.
Look at your faces.
見て、このみんなの慌てぶりを。
あなたたちの顔ときたら。
Oh god.
なんてことだ、
But, Nastasya Filipovna...
Remember, you gave me a promise.
しかし、ナスターシャ・フィリッポヴナ…
覚えているだろう、私との約束を。
What promise?
どんな約束?
You could spare me.
勘弁してくれよ。
Spare him, Nastasya Filipovna.
彼を勘弁してくれ、ナスターシャ・フィリッポヴナ。
I'm embarrassed, but...
How can you do this at this moment?
恥ずかしいことだが、しかし…
どうして今こんなことを?
People are watching.
How can you end it so off-handedly,
so suddenly?
みんなが見ているんだぞ。
どうしてこんな突飛な終わらせ方をするんだ
こんな突然に。
This business is important to
my honor and my heart.
My whole future depends on it,
and my marriage.
この結婚話は私の名誉と誇りにとって重要なんだ。
私のこれからは、これにかかっているんだ。
私の結婚もな。
I don't understand you, Afanassy.
何を言ってるのかわからないわ、トーツキーさん。
First of all, who are the people?
Aren't we among our best friends?
まず第一に、みんなって誰ですの?
私たちはみな親友じゃないの?
And why do say 'off-handedly'?
Is this not important?
そしてなぜ、突飛と言ったの?
それは問題ではないのでは?
You heard me saying to the Prince:
"I'll do as you say."
私が公爵に言ったことを聞いたわよね
”おっしゃることに従う”って。
If he'd said 'yes' I would have agreed
at once.
But he said 'don't' and I refused.
もし彼が結婚しろと言ってたら、
私はそれに従ったわ。
すべきではないと言ったから、私は結婚を断ったの。
My whole life depended on this.
私の人生はこれにかかってたわ。
What does the Prince have to do with it?
公爵がこの事になんの関係があるんです?
And what is he, anyway?
彼が一体、何なのです?
For me, the Prince is the person
whom I trusted, for the first time in my life
as a truly devoted man.
公爵は、私が信じた人です。
私の人生で初めて信頼した、本当に献身的な人です。
I have to thank Nastasya Filipovna
for the extreme tactfulness
with which she dealt with me.
Of course, this had to be expected.
ナスターシャ・フィリッポヴナに感謝しなければなりませんね。
我々の問題を、こんなに丁重に扱ってくれたことをね。
もちろん、これは予期すべきことでした。
But the Prince...
His involvement in this business...
しかしこの公爵が…
この問題に関わってくるなんて…
You think he's after your 75 thousand?
Is this what you were trying to say?
公爵が7万5千ルーブルを狙っていると言いたいの?
あなた、そう言いたいわけ?
Afanassy, I forgot to mention.
You should keep this 75 thousand.
トーツキーさん、一つ言うのを忘れてたわ。
7万5千ルーブリは取っておきなさい。
I set you free with no ransom.
私は身代金なしであなたを解放するわ。
Nastasya Filipovna, why are you...
ナスターシャ・フィリッポヴナ、どうしてそんな…
General!
You should take your gifts back, too.
Give them to your wife.
将軍!
あなたのプレゼントもお返しするわ。
奥さんにでもあげたらいいわ。
Gentlemen, starting tomorrow
I'm going to leave this apartment.
皆さん、明日から
私はこの家を出るつもりです。
The evening parties are over.
It's all over, gentlemen.
夜のパーティはもうおしまいよ。
何もかもおしまい。
Goodbye.
ご機嫌よう。
And here's the climax.
Stay calm.
ここが山場ね。
静かになさい。
Nastasya Filipovna,
something terrible is going on.
Fifteen people barged in,
everyone is drunk.
ナスターシャ・フィリッポヴナ、
大変なことが起こりました。
15人もの酔っ払いたちが
来ています。
They're with some Rogozhin,
and they demand to be taken here.
ロゴージンと取り巻きが、
ここに案内しろと要求しています。
Let them all come in.
みんな入れてください。
All of them? They are quite a sight.
みんなですか?ひどい風体の人たちですよ。
Let all of them in, girls,
and don't be afraid.
Or they'll come in anyway.
みんな入れて。怖がることないわ。
でなきゃ勝手に入ってくるでしょう。
Gentlemen, I hope you don't mind
me entertaining a crowd like them.
I'm not keeping anyone who's afraid.
皆さん、ならず者たちを私が招いたことを
許してくださいね。
野蛮な人との付き合いがあるわけじゃないわ。
Why would you say that,
Nastasya Filipovna?
なにを言っているんだ、
ナスターシャ・フィリッポヴナ。
I'll stay by your side out of sheer loyalty.
私は完全な忠誠心から、あなたの側を離れません。
Me too, me too.
私もだ。私も。
Thank you, gentlemen.
Please be seated.
感謝するわ、皆さん。
どうぞお掛けになって。
What do you think, Afanassy?
どう思う、トーツキー?
Has she gone mad?
I mean clinically mad, not figuratively.
彼女は狂ったのか?
比喩でなくて、本当の意味でだ。
My friend, I've always told you she's
prone to madness.
Besides, this fever...
なあ君、彼女は狂いやすいと、
私は常々言ってきた。
その上、この熱っぽさだ…
Quiet, gentlemen.
Here's Parfyon Rogozhin.
静かに、紳士方。
ロゴージン様のお出ましだ。
What is this?
それは何なの?
One hundred thousand.
10万ルーブル。
So you've kept your word.
あなたは約束を守ったわけね。
Take a seat.
座りなさい。
Who are your companions?
The same crew?
この方たちは誰なの?
さっきと同じ方達?
That's right, the same.
そうです。同じ方です。
Good evening, gentlemen.
Come in and be seated.
こんばんは、皆さん。
どうぞお入りになって。
Don't be shy.
Here's the sofa, here are some chairs.
Please.
遠慮なさらず。
こっちにソファ、こっちに椅子がありますわ。
楽になさって。
Katya, Dasha!
Serve champagne to everyone.
カーチャ、ダーシャ!
皆さんにシャンパンを出して。
Gentlemen, this is
one hundred thousand.
Recently he was bargaining for me.
皆さん、ここに10万ルーブルがあります。
さっき彼が私を競り落としたのよ。
He started with eighteen,
then jumped to forty.
and at last, here we are.
1万8千ルーブルから始めて、
4万までジャンプしたわ。
そして最後には、これよ。
One hundred.
It happened at Ganya's place.
10万ルーブル。
競りはガーニャの家で行われたわ。
I came to visit my future family
and his sister yelled at my face
that I'm shameless.
And then she spat at Ganya's face.
未来の家族に会いに行ったら、
彼の妹に面と向かって恥知らずと叫ばれたわ。
それからその妹は、ガーニャの顔に唾を吐いたの。
Nastasya Filipovna!
ナスターシャ・フィリッポヴナ!
What is it, General?
何かしら、将軍?
Nastasya Filipovna, how can you...
ナスターシャ・フィリッポヴナ、なぜこんな…
Embarrassing, isn't it?
Enough of this hypocrisy.
醜態を演じるかって?
取り繕うのはもう結構。
He came and offered
his one hundred in front of you.
Their troikas and carriages are
probably waiting for me outside.
彼が来て、目の前に10万を出した。
3頭立ての馬車が、もう外に待ってるでしょうよ。
That's correct, waiting for you.
そうです。あなたを待っています。
See how quickly they do business?
彼らがどれだけ事を早く済ませたか見た?
Rogozhin gave one hundred for me.
One hundred thousand!
ロゴージンは私に10万ルーブルを持ってきた。
10万ルーブルよ!
Nastasya, dear!
Are you really going to go
with such a bumpkin?
ナスターシャ、あなた!
あんなゴロツキと、本当に一緒に行くつもり?
Even if for one hundred thousand.
Take the money and kick him out.
10万差し出されたって、
それをもらって、追い出せばいいわ。
If I were you I'd drive them all
out of here. Out, out!
私があんたの立場なら、こんなやつら全員追い出すわ。
出て行きなさいよ!
Don't shout, Darya.
叫ばないで、ダリア。
I didn't want to be mean.
さっきのは意地悪で言ったんじゃないのよ。
I just can't understand what was I thinking
trying to become part of a decent family.
I must have been out of my mind.
私が真っ当な家族の一員になろうなんて、
馬鹿な考えだったの。
きっとおかしくなってたんだわ。
And you, Ganya...
ねえ、ガーニャ…
How could you marry me, knowing that
your friend, the General,
is giving me diamonds the night
before the wedding.
あなたよく私と結婚できるわね。
あなたのお友達の将軍が、
結婚前夜に私にダイアモンドを送ったことを知っておきながら。
And I'm accepting them.
私、それを受け取ったのよ。
And how about Rogozhin?
In your own house, in front of your mother,
he was trying to buy me.
ロゴージンはどう?
あなたの家で、あなたの母親の前で、
彼は私を買おうとしたのよ?
And after all this,
you came to ask me to marry you.
そんなことがあっても、
あなたは私と結婚しようとしているわ。
You hate me.
I know you hate me.
あなたは私を嫌っている。
私はあなたが私を嫌っているのを知ってるのよ。
They told me the truth about you.
They say you'll crawl all the way to
Vasilievsky Island for three rubles.
ロゴージンはあなたについて本当のことを言ったわ。
あなたは3ルーブルのためなら、ワシリエフスキー島まで
這ってでも行ってね。
He will.
這って行くぜ。
I'd understand if you were starving.
But you have a decent salary.
飢えているのならまだしも、
あなたは結構な給料を貰っているんでしょう。
I believe that a man like you
can murder a person for money.
あなたみたいな人は、
きっと金のために人も殺せるでしょうね。
All of you are so hungry for money.
You're like bewitched.
あなた達みんな、お金に飢えている。
まるで金の亡者よ。
Nastasya Filipovna,
this is so not like you.
ナスターシャ・フィリッポヴナ、
こんなことするのは、あなたらしくない。
You are always so tactful,
so refined, and now all of a sudden...
My god, what shame...
あなたはいつも気が利いて、
上品で、なのに突然こんな…
なんて恥ずかしい…
I'm drunk, General.
私は酔っているのよ、将軍。
Tonight is my night, my eclipse.
今夜は私の夜よ、私の没落のね。
Gentlemen, can you see that coward?
Over there, hiding behind the curtain.
みんな、あの臆病者が見える?
あそこよ、カーテンの裏に隠れてるわ。
I'm not hiding.
I just think your behavior
is rather embarrassing.
私は隠れてませんよ。
私はあなたの振る舞いが恥ずかしいと
思っただけです。
He probably thinks I'm unfair to him.
彼はたぶん、不公平を感じてるでしょうね。
He adopted me.
He brought me up like a countess.
Found me a decent husband.
彼は私を養子にした。
彼は私を、伯爵令嬢のように育てた。
私にまともな夫を見つけた。
What more can I want?
これ以上、私に何が望める?
But, Afanassy,
I could have gotten married
a long time ago
and not to your protege Ganya.
でもね、トーツキーさん、
私はもっと前に結婚できたかもしれなかった。
あなたの息がかかったガーニャとではなくね。
But it's too disgusting...
でもそれはとても嫌だった…
But no, I'd better walk the streets,
or drink and debauch with Rogozhin,
or work as a laundress.
だからね、私は売春婦になるか、
ロゴージンと飲み暮らすか、
洗濯女になるぐらいが丁度いいのよ。
I don't have a thing of my own.
If I leave, everything stays with him.
私は自分のものを何も持ってないのよ。
私が去る時は、全て彼のもとに残るわ。
Who's going to take me without a dime?
Even Ferdyschenko wouldn't take me.
誰がそんな無一文の私を連れて行ってくれるの?
フェルディシチェンコだって連れて行ってくれないわ。
Ferdyschenko wouldn't take you,
I can tell you that.
フェルディシチェンコは連れて行かないでしょう、
それは言えます。
But Prince Myshkin will take you.
しかしムィシュキン公爵なら連れて行くでしょう。
Look at him.
I've been watching him for a while.
彼を見てくださいよ。
私は彼をしばらく見てたんです。
Is this true, Prince?
本当なの?公爵。
Yes, it's true.
はい、本当です。
You'll take me as I am, for nothing?
あなたは私を、無一文で連れて行ってくれるの?
I will, Nastasya Filipovna.
連れて行きます、ナスターシャ・フィリッポヴナ。
Look at him.
He actually means it out of kindness.
彼を見て。
彼は確かに、親切心から言ってるのよ。
What will you do for living, Prince?
If you love me enough to take me
though I'm Rogozhin's woman.
どうやって暮らすの、公爵?
もしこのロゴージンの女を連れて行くほど
愛しているなら。
I...
I'll take you as an honest woman,
not Rogozhin's.
私は…
私はあなたをロゴージンの女としてではなく、
純心な女性として連れて行きます。
Am I an honest woman?
私が純心な女性?
Yes, you are.
そうです。
This is straight from a novel.
Some old fables.
夢物語だわ。
よくある古いおとぎ話よ。
Today, people got smarter.
今では、人はもっと賢くなったのよ。
How can you marry, anyway?
You need a babysitter.
とにかく、どうやって結婚出来るというの?
あなたにはベビーシッターが必要よ。
It's true, I don't know much.
それは本当です。僕はあんまり物を知りません。
But I think you're honoring me,
not the other way around.
これは私にとって名誉なことです。
あなたにとってではありません。
I am nothing,
and you have suffered.
私には何もありません、
そしてあなたは苦しんでいる。
You came out of such hell so pure.
This is a lot.
あなたは純心のまま、地獄から出たんです。
あなたはそれをいくつも証明しました。
You just gave 75 thousand
back to Totsky.
You say you'd give everything away.
あなたはトーツキーさんに、
7万5千ルーブリをそのまま返しました。
そっくりそのままの形で。
No one here could do the same.
ここにいる誰にも同じことは出来ません。
Nastasya Filipovna,
I would die for you.
ナスターシャ・フィリッポヴナ。
あなたの為なら、死んでも構わない。
I won't let anyone say bad things
about you.
And if we are poor I'll find a job.
私は誰にも、あなたの悪口を言わせません。
私たちが貧しいなら、仕事を見つけます。
But probably, we won't have to be poor.
Maybe we'll be rich.
でもおそらく、私たちは貧しい暮らしはしません。
私たちは多分、お金持ちになるでしょう。
I cannot say yet, but it's likely.
なんとも言えませんが、しかしあり得ることです。
Gentlemen, I received a letter
from Switzerland
from a certain Salazkin.
He notified me that I've inherited
a huge estate.
皆さん、僕はスイスにいる時、
サラーズキンという方から手紙を受け取ったんです。
僕が大きな遺産を相続したということを
その人は教えてくれました。
Is he delirious?
彼はうわ言を言ってるのか?
This is the letter.
これがその手紙です。
Prince, you said the letter
is from Salazkin?
公爵、サラーズキンからの手紙と言いましたか?
He's a famous person, in certain circles.
If this news is really from him
then you can trust it.
彼は界隈では有名な方ですよ。
それが本当に彼からのものなら、
それは信用出来るものですよ。
Luckily, I know his handwriting.
Let me take a look, maybe I can
tell you something.
折よく私は彼の筆跡を知っています。
それを見せてください、
何か言えるかもしれません。
What's this about, gentlemen?
Can it really be an inheritance?
皆さん、一体これはどういうことでしょう?
その相続の話は本当なんですか?
As clear as day, gentlemen.
これは本物です、皆さん。
This cannot be true.
そんな、ありえない。
Prince Lev Myshkin,
according to his aunt's will,
has inherited around 1.5 million,
and possibly more.
ムィシュキン公爵。
君は君の祖母から、
150万ルーブル、あるいはもっと相続しますよ。
Congratulations, Prince!
The last Myshkin of its kind!
やったな、公爵!
ムィシュキン家、最後の血筋!
Thank you, gentlemen.
ありがとうございます、皆さん。
Will I really be a princess?
私は本当に、公爵夫人になるの?
What an unexpected climax.
Darya, this is not what I expected.
こんな結末になるなんて。
ダリア、こんなこと思ってもみなかったわ。
God help you, dear. It's your time.
Don't miss your chance. Grab him!
神様のお導きよ。幸せ者よ。
チャンスを逃しちゃ駄目よ、彼を掴むのよ!
Prince!
Come over here.
公爵!
こっちへ来て。
Sit next to me, Prince.
隣にお座りになって、公爵。
Why are standing around, gentlemen?
Wish us well.
皆さん、どうして突っ立っているの?
祝福してくださいな。
With great pleasure.
公爵夫妻、万歳。
You're late, Rogozhin.
Take your wad away.
遅かったわね、ロゴージン。
お金を持って消えなさい。
I'm marrying the Prince.
Now I'm richer than you.
私は公爵と結婚するのよ。
今じゃ私の方がお金持ちだわ。
Give it up, Prince.
手を引いてくれ、公爵。
Give it up, so you can pick it up?
あなたが結婚するために、手を引けって?
The Prince is offering her marriage.
公爵は彼女に結婚を申し込んでいるのよ。
I'll marry her. Right here, right now.
I'll do anything. Give her up, Prince.
おれが彼女と結婚するんだ。今ここで、今ここでな!
なんだってする。公爵、手を引いてくれ。
Look at your drunken mug.
Get out of here!
見なさいよ、こいつの酔っぱらった顔。
お呼びじゃないのよ!
Give her up, Prince, I'm begging you.
手を引いてくれ、公爵。お願いだ。
Prince, see how a bumpkin is trying
to buy your bride.
ゴロツキがあなたの花嫁を買おうとしているわよ、公爵。
He loves you very much.
彼はあなたをとても愛している。
Won't you be embarrassed later
that your bride almost left with Rogozhin?
あなたの花嫁がロゴージンに連いて行きそうだったこと、
あなたは後で恥じる?
You were delirious.
You're still delirious.
あなたは錯乱していたんです。
今も錯乱しています。
Won't you be ashamed
when someone reminds you that your wife
used to be Totsky's mistress?
私がトーツキーの愛人だったと言われても、
あなたは恥ずかしくならないの?
No, no, I'll never be ashamed.
You didn't choose to be with him.
決して、恥じたりしません。
あなたは彼と一緒になることを選ばなかった。
Will you never use it against me?
そのことで私を責めない?
Never.
決して。
Watch our, Prince. Never say never.
私たちを見てよ、公爵。決してなんて言わないで。
I must appear ridiculous,
but I said the truth.
私はきっと、馬鹿に見えるに違いない。
でも、本当のことを言っているんです。
You're not to blame for anything.
I'll respect you all my life.
あなたには何の罪もありません。
人生をかけて、あなたを敬います。
Thank you, Prince.
Nobody ever talked to me like this.
ありがとう、公爵。
誰もそんな風に言ってくれなかったわ。
They tried to buy me all the time.
No one asked me to marry him.
彼らはいつでも、私を買おうとしていた。
誰も結婚を頼んだりなんてしなかったわ。
Thank you.
ありがとう。
Did you hear, gentlemen,
what the Prince just said?
皆さん、聞きましたか。
公爵が私に、何を言ったかを。
It's almost indecent.
Isn't it, Afanassy?
ひどく無作法だ、
そう思ったんじゃなくて?トーツキーさん。
Rogozhin, don't leave yet.
Maybe I'll go with you.
ロゴージン、どこへ行くのよ。
私、あなたと一緒に行くかもしれないわよ。
Where were you going to take me?
あなた、私をどこへ連れてくつもりだったの?
To Yekaterinhof. Riding troikas, with bells...
エカテリンゴフです。馬車に乗って、ベルを鳴らして…
Are you out of your mind, dear?
What's wrong with you?
気でも狂ったの、あなた?
一体どうしたってのよ。
Did you really think
that I'd corrupt such a baby?
まさか本気にしたの?
こんな赤ちゃんを、私のせいで破滅させるなんて?
Only Afanassy would do such a thing.
He loves babies.
そんなこと、トーツキーさんがすることよ。
あの人は赤ん坊がお好きだから。
He picked me up as an orphan
and corrupted me
before I was sixteen.
彼は私を孤児として迎えたわ。
そして愛人にした。
私が16歳になる前によ。
Get ready, Rogozhin. We're leaving.
準備をして、ロゴージン。一緒に行くわ。
Nastasya Filipovna, will you really...
ナスターシャ・フィリッポヴナ、本当にあなたは…
Did you think I wouldn't?
あなたと行くと思った?
I have my pride, Prince.
私にも誇りがあるわ、公爵。
Recently, you said I was perfect.
But I'm a streetwalker.
さっき、私のことを完璧と言ったわね。
でもね、私は売女なのよ。
Let's go, Rogozhin. Get your money ready.
行くわよ、ロゴージン。お金を用意しなさい。
Let's go!
行くとも、行くとも!
Katya, Dasha.
Bring my furs.
カーチャ、ダーシャ。
私の毛皮のコートを持ってきて。
Stop it, General.
やめて、将軍。
Get the wine ready, Rogozhin.
I'll drink tonight. Will there be music?
ワインの準備をしなさい、ロゴージン。
今夜は飲むわ。音楽はあるの?
Yes, my queen. We'll have everything.
あるとも、女王よ。何でもあるさ。
Nastasya, where are you going?
Come to your senses.
ナスターシャ、どこへ行くと言うの?
正気にもどって。
Stay away. She's mine.
Everything is mine.
Stay away!
近づくな。彼女はおれのもんだ。
全部おれのもんだ。
近くな!
What are you yelling for?
I haven't received my payment.
Give me the money.
何をわめいているの?
まだお金を受け取ってないのよ。
それを渡しなさい。
Is this one hundred?
How disgusting.
これが十万ルーブル?
嫌なものね。
Watch now, Prince.
Your bride is taking Rogozhin's money.
見なさいよ、公爵。
あなたの花嫁がロゴージンのお金を受け取ったわ。
What is it, Prince?
Why are you crying?
どうしたの、公爵?
あなたどうして泣いているの?
Feeling bitter? Then laugh like I do.
It's better to wake up now than later.
苦しいの?きっと私みたいに笑えるようになるわ。
後で苦い思いをするよりもいいのよ。
Otherwise, those Ferdyschenkos
will point their fingers at you.
笑わなきゃ、フェルディシチェンコたちに
笑い者にされるわ。
I know you're not afraid,
but I'm afraid to ruin your life.
あなたは恐れを持ってないけれど、
私はあなたの人生を台無しにするのが恐いの。
Nastasya Filipovna, I swear!
ナスターシャ・フィリッポヴナ、私は誓う。
Don't do it, don't swear.
やめて、誓ったりしないで。
It would be so silly.
Better let's part as friends.
馬鹿なことするところだったわ。
友達としてお別れしましょう。
I'm also a dreamer.
私、いつも夢見てたわ。
You think I didn't dream of you?
I've fantasized about you for a long time.
私が夢を見ないと思って?
あなたみたいな人を、ずっと夢見てたわ。
Ever since I was locked away, alone,
in Totsky's estate.
I would sit around thinking,
imagining someone like you.
私が一人でトーツキーの家に閉じ込められて以来。
私は座りながら夢見てたわ。
あなたみたいな人が現れるのを。
A kind, honest and sweet person.
優しくて、正直で、素敵な人。
I imagined you'd come to me and say:
"It's not your fault, Nastasya.
I adore you."
夢の中のあなたは私にこう言うの。
”あなたのせいじゃない、ナスターシャ。
私はあなたを心から愛する。”
My fantasies would get so intense
that I'd get crazy.
おかしくなりそうなぐらい、
強く夢見たわ。
And then this molester would arrive.
He'd shame me and offend me.
それで、この変態がやってくるの。
彼は私を辱め、貶めたわ。
I wanted to throw myself into a pond
a thousand times.
But I was a coward
and never had the heart.
何度も池に飛び込みたいと思ったわ。
でも臆病な私に、そんな勇気はなかった。
But now...
でも今なら…
Rogozhin, are you ready?
ロゴージン、準備は出来たの?
I'm ready.
出来ているさ。
Goodbye, Prince.
It's the first time I've met a real person.
さようなら、公爵。
本当の人間に会ったのは、これが初めてよ。
Thank you.
ありがとう。
Help me put my shawl on, Katya.
カーチャ、ショールを着させて。
Are you leaving us for good?
Where will you go?
もう帰ってこないのですか?
どこへ行くのです?
I'm going to the street,
where I belong.
Goodbye, my darlings.
Goodbye, gentlemen.
あばづれに相応しい場所に行くわ。
じゃあね、あなたたち。
さようなら、皆さん。
Ganya!
Listen to me.
ガーニャ!
聞きなさい。
I want to reward you.
あなたにご褒美をあげるわ。
Why should you lose everything?
どうしてあなたが全てを失う必要があるの?
Rogozhin!
Will he crawl all the way to Vasilievsky
for three rubles?
ロゴージン!
彼は3ルーブルのためなら、ワシリエフスキー島まで
這って行くんでしょう?
Yes, my queen, he will.
そうだ、女王。這って行くとも。
In that case, listen to me, Ganya.
Can you see this wad?
それなら、聞きなさい、ガーニャ。
この札束が見える?
This is one hundred thousand.
ここに10万ルーブルあるわ。
I'm going to throw it into the fireplace.
Let everyone witness.
私は今からこれを暖炉に投げ込むわ。
ここのみんなが目撃者よ。
The moment it's completely
engulfed in flames
you'll have to get it out
with your bare hands.
これが完全に炎に包まれたら、
素手でこれを取り出しなさい。
If you can get it out, it's yours.
The whole hundred thousand is yours.
取り出せた分だけ、あなたのものよ。
この10万ルーブルはあなたのものよ。
And I'll see how's your soul doing.
I'll see how you crawl into the fire
to get my money.
あなたの魂を見せてもらうわ。
あなたが私のお金を得るために、
炎の中を這う姿をね。
If you don't get it out, it'll burn.
I won't let anyone try their luck.
あなたが取らなければ、全部燃え尽きてしまうわ。
他の誰でもなく、あなたが取らなければね。
Rogozhin, is this my money now?
ロゴージン、これはもう私のお金よね。
It's yours, my soul, my queen.
あなたものだ、女王。
Then don't stop me.
I'll do what I want.
それなら私を止めないでね。
私のやりたいようにやるわ。
Ferdyschenko!
Fix the fire.
フェルディシチェンコ!
暖炉を整えて。
Nastasya Filipovna, I can't.
I don't dare.
ナスターシャ・フィリッポヴナ、私にはとても出来ません。
Look at you.
情けない。
Shall we have her tied up?
Gentlemen, she's clearly lost her mind.
彼女を縛りませんか。
皆さん、彼女は完全に気が触れてますよ。
I've always told you she's a
passionate woman.
いつも言ってただろう。
彼女は激情家だと。
What passion? Give me a break,
she's just insane.
激情?いい加減にしてくれ。
彼女は狂ってるだけだ。
Watch, Ganya. Watch.
I'm throwing it in.
見なさい、ガーニャ。
ここに放り投げるわよ。
Please, god, please.
This is one hundred thousand.
お願いします、どうか。
これは10万ルーブルですよ。
Let me get it. I'll crawl inside,
I'll put my head in there.
私に取らせてください。中を這いますよ。
頭を中に突っ込みます。
Save me, I have thirteen children.
私を救ってください。私には13人も子供がいるんです。
Back off, you bum.
引っ込んでろ、乞食野郎。
What a goddess! This is something else!
なんて女神だ。別格だ。
Well, gentlemen, who of you would
dare to do this?
さて諸君、一体誰にこんなことが出来る?
Ganya, why are you standing?
Go get it, don't be ashamed.
ガーニャ、何を突っ立っているの?
恥ずかしがらずに取りなさいよ。
Otherwise you'll have to hang yourself.
I'm not joking.
あなたが一番欲しかった物を掴み取るのよ。
これは本気よ。
Let me get it out with my teeth,
for one thousand.
千ルーブルのためなら、私は歯で取って見せます。
I'd do it for five hundred.
私は5百ルーブルのためでもやります。
For five hundred I'd do it myself.
Me too, me too.
私がやりましょう。
私が。私が。
It's burning, god damn it.
燃えちまうぞ。なんてこった。
Burning!
燃えている、燃えている!
One hundred thousand!
10万ルーブルが!
God save us!
神様、お助けを!
Goddess! Queen of all people!
It's burning!
女神様、どうかお願いです!
燃えている!
Back off!
引っ込んでろ!
Ganya, stop pretending, go get it.
Or it will burn, it will burn!
ガーニャ、平気なフリはよして、取りなさいよ。
じゃなきゃ全部、燃えてしまうわ!
Get it, Ganya!
Get in there!
God damn you!
取るんだ、ガーニャ!
取れ!
この野郎!
Katya, Dasha!
カーチャ、ダーシャ!
The money, the money!
金が、金が!
Bring some water, some alcohol.
水とアルコールを持ってきて。
Almost like new.
Burned around the edges a little bit.
ほとんど無事だ。
端っこがちょっと焦げただけ。
The money belongs to Ganya now.
このお金はもうガーニャのものよ。
Did you hear me, gentlemen?
Ganya receives his award.
聞いたわね?皆さん。
ガーニャがご褒美を受け取るのよ。
Don't worry, he'll wake up.
He's already waking up.
心配ないわ、じきに気がつくでしょう。
もう意識が戻っているわ。
Well, Rogozhin, now you can...
いいわね、ロゴージン。
Goodbye, gentlemen.
Goodbye, Prince.
Goodbye, Afanassy.
Merci.
さようなら、皆さん。
さようなら、公爵。
さようなら、トーツキーさん。
ご機嫌よう。
This is Sodom and Gomorra.
まるでソドムとゴモラだ。
Prince! Where are you going?
Prince, dear!
公爵、どこへ行くんです?
公爵!
Come to your senses.
What do you need her for?
正気に戻ってください。
あなたが行って何になるんです?
Give her up, I'm saying it like a father.
Don't ruin yourself,
don't dishonor yourself.
手を引きなさい。親心として言うんです。
どうか自分を見失わないで、
恥をさらすことになりますよ。
Let me go!
行かせてください!
Idiot! Idiot!
この白痴が!
Nastasya Filipovna!
ナスターシャ・フィリッポヴナ!
Wait! Don't go.
Stop! Stop!
待って!行かないで!
待って!
Driver! Driver!
Quickly! Follow them.
そこの馬車、乗せてくれ!
早く!彼らを追いかけて!