Hip Hopへの新しい扉〜哲学カフェを通して〜
Hip Hopについて無知な者同士で話し合うとどのような意見が出てくるのか?
なぜこのような旨を述べたかと言うと、先日Hip Hopに関してほぼ知識のない学生約30名同士で、Hip Hopについて話し合ってもらうワークショップを開いた。
その名も「Hip Hop哲学カフェ」である。
哲学カフェとは、特定のテーマについて、対等な立場で語り合う対話型ワークショップである。約半年前に「Hip Hopのキワドイ境界線」というテーマで同ワークショップを開催したので、今回で二度目の開催となる。
<前回のHip Hop哲学カフェの様子>
前回は学内外から参加者を募り、当日集まったメンバーの中にはHip Hopについてかなり熟知した方もいたため、全体的にその方達を中心に話し合いが進んだ印象であった。
今回は、前回のHip Hop哲学カフェでも大変お世話になった、大阪大学 特任助教であり、追手門学院大学 非常勤講師の戸谷 洋志先生の、「哲学」をテーマにした授業内で同ワークショップを開催させて頂くことになった※1。なお、今回のカフェのテーマも「Hip Hopのキワドイ境界線」である。
<戸谷先生>
授業では、約30名の学生を4つのグループに分け、各グループでファシリテーションをする学生※2が話しを回しながら進めていったのだが、前回と今回の決定的な違いは、受講者がHip Hopに関する知識がない学生ばかりという点である。
哲学カフェの進行手順として、先ず参加者同士でテーマに沿って話し合うトピックを決めることとなっており、今回の4つのグループでは以下のトピックで話し合うこととなった。
① バトルラップと罵り合いの違いは?
② ラッパーは本当にチャラい?
③ どこからがストリートファッション?
④ Hip Hopはどこまでが音楽として成り立っているのか?
一つ一つのグループで話し合った内容は割愛させて頂くが、授業の最後に課題として課されている授業の振り返りのコメントをいくつか紹介しながらまとめたい。
有難いことに、「楽しかった」や「またやってみたい」といったコメントを多く頂き、やらせて頂いたこちらとしても非常に嬉しいコメントが散見された。
筆者は、教育とは「学習者に知識だけでなく、『きっかけ』や『出会い』を与える行為」と筆者なりに定義づけ日々学生に向き合っている。コメントの中に、「多くの知識について知る事ができ、新しい扉が開いた感じで新鮮で楽しかった」といったコメントがあったのだが、まさに筆者の教育理念が学生に通じていることを確認できるものであり、学生の学習動機がHip Hopをきっかけに更に増せば尚良しである。
「楽しい」、「面白い」といった内容以外にも、「特定のジャンルを深めていくことで自身の知見も深まり、生活(プライベート)、自己としても成長できる授業だと感じた」や、「話し合う事で今までとは違う事を考え、気づけたのがとても良かった」といった、対話を通じ様々な意見を交換することで、新たな観点で物事を捉えることができたといったコメントも多く頂けた。また、Hip Hopに対してあまりいいイメージを持っていなかったが、他学生の意見を聞いているうちに自身のHip Hopに対する偏見に気づき、Hip Hopへの考え方が変わったといった意見もあった。
「Hip Hop型教育とは」の回でも述べたが、アメリカでHip Hop型教育が先進的に取り組まれている背景には、Hip Hopがアメリカ全土で人気があることに加え、アメリカという国が多民族・多人種国家である点が大きく影響している。
なので、日本でのHip Hop型教育の展開には限界があると思わないでもなかったのだが、今回のように、Hip Hopをきっかけに学生の気づきを促進できたことに、Hip Hop哲学カフェの意義を感じることができたと同時に、Hip Hopが文化的に根付ききっていない日本においても(Hip Hopに関する知識がない者に対してでも)、Hip Hop型教育を実践できる可能性を感じた1日であった。
【同記事はアメブロに投稿した記事の再投稿である】
(現在アメブロからnoteへ移動中のため、過去のブログを再掲載しています)
■戸谷 洋志 特任助教の情報はこちらから■
Twitter: https://twitter.com/toyahiroshi
<戸谷氏の著書>
『Jポップで考える哲学』(2016 / 講談社)
『ハンス・ヨナスを読む』(2018 / 堀之内出版)
『僕らの哲学的対話 棋士と哲学者』(2018 / イースト・プレス)
※1:授業とは「ファシリテーション入門」という授業である。同科目に対して数名の教員がそれぞれの専門をテーマにいくつかのクラスが存在し、履修者がグループワークで「話す」もしくはその場の議論を「促進」することに重きが置かれたユニークな授業である。
※2:ファシリテーションを務める学生は、授業の履修者ではなく、筆者が呼びかけたボランティアの学生である。
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