その1 神経発達症(発達障害)を今後どう呼べばいいのか?
神経発達症(発達障害)に関する、現時点での自分の捉え方をまとめてみました。私の頭の中を整理するためのものであり、仮の視点を置いたものです。間違った情報があったらすみません。
その1 『どう呼べばいいのか』
「発達障害」という呼び方に関して整理してみたいと思います。
① 法律での呼び方、②診断名での呼び方、③今後の方向性としてこう呼びたい呼び方、④普段しっくりくる呼び方、で整理したいと思います。
①「法律的な呼び方」
こちらは、「発達障害者支援法」(※2005年施行、最終改定2016年のもの)に基づくと思います。
という記載があります。ということで、法律上は「発達障害」と名称されており、具体的な内容に関しても、上記の通りで、今の診断名とは違った、ひと昔前の名称になっていると思います。
それから、ここで注意しなければいけないのは、「発達障害がある者」と「発達障害者」は分けて考えなければいけない点だと思っています。
この法律の「発達障害者」の定義を見ると、仮に、発達障害の診断を受け、その症状があったとしても、「社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受け」ていなければ、「発達障害者」にはならないと解釈できるからです。
様々な形での「社会的障壁」が「発達障害者」を生んでしまうことになるので、同じコミュニティでの周りの人の理解と配慮がやはり重要になってくると私は思います。
②「診断名での呼び方」
こちらは、世界的な診断基準が2種類あるので、こちらの最新の診断基準をみてみたいと思います。
まず、WHOの診断基準である「ICD-11」(2022年1月発効)です。
こちらでの名称は、「神経発達症群」※1です。「発達障害者支援法」と比べると、
『発達障害』➡『神経発達症群』
『自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害』➡『自閉スペクトラム症』
『注意欠陥多動性障害』➡『注意欠如多動症』
『学習障害』➡『発達性学習症』
となっていると思います。
こちらのページを参照しました。
精神神経学雑誌オンラインジャーナルの「ICD—11 における神経発達症群の診断について」https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1230040214.pdf
次に、米国精神医学会の診断基準である「DSM-V-TR」(2023年6月に日本語版が発売)は下記のような名称となっております。「発達障害者支援法」と比べると、
『発達障害』➡『神経発達症群』
『自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害』➡『自閉スペクトラム症』
『注意欠陥多動性障害』➡『注意欠如多動症』
『学習障害』➡『限局性学習症』
となっています。
『精神科病名検討連絡会:DSM‒5 病名・用語翻訳ガイドライン(初版)「DSM‒5 病名・用語翻訳ガイドライン」』を参考に、名称の変更点は、下記の「ミヤガワRADIO」youtubeを見て確認しました。
https://www.youtube.com/watch?v=1G9zkh7qkyQ
ということで、最近バージョンアップした「DSM-V-TR」は「ICD-11」に対応する形になっており、診断名はほぼ一緒ですが、「学習障害」に関しては、ICD-11が『発達性学習症』で、「DSM-V-TR」は『限局性学習症』で違うようです。※何か間違いがあったらすみません。
ただ、こちらはあくまでも、医師が診断した際の名称なので、診断がされていない人に対しては、あくまでも「その可能性があるのではないか」という使い方になると思います。
③「今後の方向性としてこう呼びたい呼び方」
私の中では、「ニューロダイバース(ND)」があります。これは「ニューロダイバシティ(脳神経の多様性)」で「発達障害」を捉えた名称です。
だれでも程度の差こそあれ、脳神経の特性を持っていて、脳神経の特性は多様であり、その中に「発達障害」も含まれるという考え方だと思います。そして、お互いの多様な特性を尊重しようという考え方だと私は捉えています。
この捉え方ですと、診断基準には満たないかもしれないけど、誰もが持っている「特性の程度」として取り扱えると思います。
私自身も、当てはまる「発達障害」の特性が色々とあると感じており、他人事ではなく自分も含めて、誰もが持っている特性として語ることができると思います。発達特性について、情報を共有したり、一緒に考えたいときに使いやすい名称だと思っています。
主に参考にしたのは、こちらの本です。
「フツウと違う少数派のキミへ: ニューロダイバーシティのすすめ」鈴木慶太 合同出版 2023年
ニューロダイバシティについては、経済産業省のHPもご参照を。
「ニューロダイバーシティの推進について」経済産業省HP https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/neurodiversity/neurodiversity.html
④「普段しっくりくる呼び方」
これが難しいと感じております。
私は、普段は「発達の特性」とよく言っており、「〇〇〇というような、発達の特性があるかもしれない」という言い方をしている気がします。
ただ、最近出ている色々な書籍を読むと、その症状や特性は、脳の遺伝的な発達特性に起因するのか、あるいは、環境的な要因によるのかよくわからないなぁと感じています。
ですので、私としては、ある状況下において起こる「反応の特性」と呼ぶのがいいのかなと思っております。「反応特性」が起こる背景には、遺伝的な「発達特性」や環境的な様々なストレス要因が考えられるというスタンスです。
ということで、その2では、本当にそれは「神経発達症(発達障害)」の症状なのか問題についての私の捉え方をまとめてみたいと思います。
今後は、こんな項目で、まとめていきたい
と思っています。
その1~その3の索引
その1 どう呼べばいいのか問題
その2 本当にそれは「神経発達症(発達障害)」に起因する症状なのか
その3 「神経発達症(発達障害)」の特性には具体的に何があるのか。注意欠如多動症(ADHD)について整理してみる。
※1 他のICD-11「神経発達症群」には、発達性発話又は言語症、発達性強調運動症、情動運動症などがあり、精神遅滞も知的発達症として、「神経発達症群」に入っている。