「愛着障害・愛着の課題」でとてもいい本や動画に出会えました。
学校の先生や支援施設の方に特に役立つ本だと思いました。内容を私の視点から紹介できればと思います。
参考媒体
①『愛着障害・愛着の問題を抱えるこどもをどう理解し、どう支援するか?』米澤好史 福村出版 2019年
②『愛情の器」モデルに基づく愛着修復プログラム』米澤好史 福村出版 2015年
③米澤好史さんの動画
米澤先生特別公演映像@区民まつり「愛着障害って何?」https://www.youtube.com/watch?v=ZXRWErg4dJY&t=126s
「愛着障害と発達障害の理解とその支援」
https://www.youtube.com/watch?v=Ir1wGV9GwoE&t=11s
などを見て、私の印象に残ったことをまとめてみました。
※なるべく使われている言葉を引用しながら表現しておりますが、ズレている表現があったらスミマセン。
私にインパクトがあった順で記載
(※の中の文章は、完全に私の主観的な感想です。)
虐待や不適切な療育がなくとも、通常家庭で愛着の課題は起こりうる。
・養育者と子供の相性(特徴、特性)によっても愛着の課題が起こりうる。兄弟に同じように接していても、一方で愛着の課題が生じる可能性がある。
・愛着形成の妨げになっているのは家庭での刺激過多(スマホ、ゲーム、動画など)
(※私の中で、一般家庭で愛着障害が起こるという意識がほとんどなかったと思います。相性の相違に影響するものとして、発達特性とその特性の認知度も影響する気がしています。)
参照:③「愛着障害と発達障害の理解とその支援」
愛着障害と発達障害で同じような現象が起こる
・現象は同じでも、原因が違い、現れ方は違う。原因は、発達障害が生まれつきの特性によるのに対して、愛着障害は、こどもと関わる特定の人との「関係性」による。
例えば、「多動」に関しては、「ポジティブな感情が枯渇すると午後から多動」「わざと注目されるように動き回る」「何かをしなければならない状況で多動になりやすい」など、愛着障害の場合は、「ムラのある感情」によって引き起こされる。(①p9、p16~18参照)
叱責などの厳しい指導は結局裏目に
・厳しい指導によって、強圧的に押さえつけると、表面上は抑圧され問題行動が減少するが、心の発達にはいい効果はなく、不満やストレスが他の場所や、温和な相手に向かって発現してしまう。(②p94)
(※このパターンだと、優しい対応をしている先生が、指導力不足で責められる状況が生まれてしまうのだろうと思いました。)
主導権は奪われない方がいい
・主導権は、コントロールするための主導権ではなく、本人が自分に関わってくれたと感じる「被関与感」を抱いてもらうための主導権。(①p52)
・感情の認知やコントロールができない状態で主導権を奪われてしまうと、要求がエスカレートしてしまったりと、愛着の問題を増幅させてしまう。(①p36)
(※私は、対話的なアプローチをやってきて、いかに相手に主導権を渡すかという意識があるため、考え方の切り替えが必要だと思いました。)
気持ちを言い当てる、感情のラベリング
・『なぜしたのか、どんな気持ちでしたのかを問うのではなく、「嫌な気持ちになったんで蹴とばしちゃったね~」と気持ちを言い当てる対応が基本』「感情の未発達」を想定した声掛けが必要。(①p34)
感情のラベリング、「先生と一緒に□□すると◎◎の気持ちになったね」と、誰と一緒ならその気持ちになるのかの愛着対象を明言して、感情のラベリング支援をするのが大切。(①p50)
連携してキーパーソンを決めることが重要
・『誰がこどもの愛着対象、「特定の人」キーパーソンになるかという決定が必要…この意識なしに愛着形成・修復はできない…(①)p39』
(※この点は、関係者で集まって話し合いが必要だと思います。家庭、学校、支援施設等の連携が強く求められると思いました。)
ただ受容するだけではうまくいかない
・『「こどもを受容する」「こどもの話をしっかり傾聴する」というカウンセリングマインドに則った支援がうまくいかない(①p57)』
・「間違った要求を受容しても、安心感にはつながらない…愛情欲求エスカレート現象」
・愛着障害では、自分で自分の気持ちに気づくことができないので、傾聴の態度が「わかってくれない」という思いを増幅させてしまう。
(※確かにその通りだと実感しています。そうなるとスクールカウンセラーの役割は、先生や支援者への助言や、愛着形成のプロセスに則った補足的な役割が期待されると思いました。)
愛情を受けたかどうかは受けての子どもの主観による
『愛情とは与えるものではなく、こどもが「大人との関りから、感じ取るもの」』(①p28)ということで、大人が愛情を与えていると思っていても、こどもがそうは感じ取っていないことがある。
(※ということで、一見普通の家庭でも愛着障害が起こりうる。)
愛着形成に臨界期(1歳六か月までというような期限)は一切ない。いつからでも形成できる。
意識・気持ちを逸らす
「これしてみようか?これしてほしいなぁ~」と違う行動に誘う
落ち着いた時に振り返り
「今度はこうしようね」
などなど他にも印象にのこる現象や支援方法がたくさん書かれていてとても参考になりました。特に、『愛着障害・愛着の問題を抱えるこどもをどう理解し、どう支援するか?』は、実際に起こる現象をアセスメントシートにまとめくれていたり、具体的な事例から、NGな支援や、有効な支援方法を具体的に提示してくれているので、実践に役立つ本だと思いました。
「対話性」との関連
普段やっている「リフレクティング」では、聴いた話に関して、自分の視点からの身体的な反応や感情を表現するので、「気持ちを言い当てる」要素があると感じました。対等な関係で、お互いの感情を言い当ててみるという感じで、大人の愛着の課題の解消にも「リフレクティング」はいいのではないかと思いました。
愛着障害の定義の確認
・『愛着を「特定の人と結ぶ情緒的な絆」』と定義し、それを「安全基地・安心基地・探索基地の3つの基地機能として捉える」(①p27)
・「安全基地」とは、『恐怖や不安というようなネガティブな感情から「守る」ための特異的な適応行動システム(①p27)』
・「安心基地」とは、『その人といると気持ちが「落ち着く、ほっとする、気が楽になる、安らぐ、楽しくなる、癒させる」という「ポジティブな環境」を直接生じさせ、はぐくむ機能(①p28)』
・「探索基地」とは、「安全・安心機能から離れても安全・安心と感じる」「安全・安心基地に戻って安全・安心を確認する」という機能(①p31)
「単に安全基地を元に探索するだけではなく、ポジティブな感情を増やし、ネガティブな感情を減らす機能(①p32)」
という感じでしょうか。
私が米澤好史さんの本に行きついた経緯
発達障害と愛着障害で似た現象が起こることに関して、関心があり色々と調べていた。
➡マナビトの「発達障害と愛着障害の相違点と類似点及びその対応方法」の研修に参加してみた。
➡講師の名城健二さんより、お薦めの本に挙げられていたという経緯です。
ということで、マナビトの後藤智行さん、貴重な研修をありがとうございました!