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パリ歩き|ビストロ・シャルティエの夜
パリにいると書いた記事に、note友のムーンサイクルさんがコメントで粋なおすすめをくださった。
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これを読んだだけでもう、いい予感しかしない。でしょう?
紹介いただいたのはこちらのレストラン「ブイヨン・シャルティエ」
いわゆるビストロ、庶民的な伝統料理を囲んでわいわい楽しい雰囲気が楽しめる店だ。
おすすめに従い19時前に行ってみた。
店内は満席で、10人がほどが並んでいる。
ついぞ行列など見ない生活をしているので一瞬諦めかけたが、回転が早いらしく3分ほどで案内された。
ドアが開くと、フェードインするように、高揚した話し声や笑い声、カトラリーの音など店内の賑わいがぶわっと押し寄せてきた。
ずらりと並ぶテーブル席には、客がほぼ隙間なく座っている。ドイツもそうだが相席文化が健在だ。
行き交う白シャツに黒いベストのウェイターさんたち。店内の装飾とともに、まるで舞台の「混み合うレストランのシーン」のような熱気。
その音と情景に、思いがけず涙がにじんで自分でも驚いた。
「前の世界に戻ったんだ」と手放しで喜ぶというわけでは決してない。まだしばらくは公的機関による情報などに注意を払いつつ、状況によって対応していきたいと思っている。
ただここに「いまを生きる人々の営み」が脈づいているのを目の当たりにしたとき、懐かしいような誇らしいような愛おしいような気持ちがあふれたのだった。
住んでいる地域ともまた違った色合いだ。
さて、テーブルに通されてさっと出てきたこの日のメニューがこちら。
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常連さんらしい親子3代で来ていると思われる家族、付き合い始めてまだ日が浅そうなカップル、青年3人組など、近くのテーブルの様子を時折眺めながらアペリティフでひと息。
こちらのウェイターさんは注文の取り方が一風変わっている。
このようにテーブルに敷かれた紙に記すだけ。
追加したものは並べてどんどん書き足されていく。
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テーブルごとに注文をすべて覚えているのだろうか。
訊ねてみると「はい、書いたものは忘れません。私の担当は4テーブルだけですから難しくはないのです」と。いや、それでもすごいぞ。
ちなみにお会計もこの紙に筆算で。お見事!
料理は昔ながらのみんなのひと皿、という感じで和む。無駄なことをしていないおいしさがあってよかった。
つい最近、ムーンサイクルさんもコンサートの帰りにこのシャルティエに寄られたようだ。
長い列に結局他の店へ行かれたとあったが、私たちが訪れた日も、食事を終えて外に出ると次の交差点までの長い長い列ができていた。
たった10人の列で諦めなくて本当によかったな。
あらためまして、ムーンサイクルさん、パリの夜を楽しむのにぴったりな店を教えていただきありがとうございました!