業種ごとの特定技能活用法④【製造業】
今まで、製造業は、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業の3分野に分かれていましたが、4月26日の閣議決定において、一つの分野に統合することになりました。
参考:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/gaikokujinzai/pdf/20220426.pdf
これまでは分野や区分によって採用要項や在留資格の申請などにも違いがあり、幅の広い業務がある企業では採用や申請・管理などの手続きが余計に煩雑になっていました。
今回の統合により、採用のし易さや手続きの簡素化が期待できます。
製造業の現状について
経済産業省の調査によると、製造業全般で人手不足が進行しており、人材確保を経営課題として挙げる企業は94%に及びます。32%の企業ではビジネスにも影響が出るほど人手不足が深刻化しています。特に不足しているのは製造工程に関わる人材で、大企業の40.5%、中小企業の59.8%が人材の確保を課題に挙げています。
産業機械製造業においては、工作機械やロボットなどへのニーズが世界的に高まり、年2%程度の需要拡大が予想されるなか、2017年度の有効求人倍率は2.89という高い水準にあり、2023年には75,000人の人手不足が生じると見込まれています。
(参考:https://www.moj.go.jp/isa/content/930004964.pdf)
こうした状況に対し、各企業では生産プロセスのデジタル化やIoT・AIの導入、女性・高齢者の雇用促進などの対策を進めていますが、国内人材だけでは人材不足の解消は難しいのが現状です。
これは、素形材産業、電気・電子情報関連産業にも同じことが言えると考えます。
特定技能「製造3分野」とは
【素形材産業】、【産業機械製造業】、【電気・電子情報関連産業】の3分野が統合し、 【素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業】となりました。
また、これまで分野毎に紐付いていた業務区分に関しても、統合し下記19区分となりました。
鋳造 塗装 仕上げ 電気機器組立て 溶接 鍛造 鉄工 機械検査 プリント配線板製造 工業包装 ダイカスト 工場板金 機械保全 プラスチック成形 機械加工 めっき 電子機器組立て 金属プレス加工 アルミニウム陽極酸化処理
在留期間について
在留期間については、これまで通りと変わらず通算5年間となります。
(特定技能1号)
外国人に任せられる業務について
前述した業務区分に属する作業を「【指導者の指示または自らの判断のもとで】行う」ことが特定技能外国人の業務内容となります。特定技能資格取得のための技能試験も、この区分に基づいて行われます。
特定技能の業務区分は技能実習の職種・作業と対応しています。
なお、上記業務に通常付随するような関連業務についても、主業務と合わせて従事するのであれば従事が認められています(関連業務にのみ従事することは許されません)。
技能実習制度との違い
特定技能が即戦力となる外国人材の受け入れを目的としているのに対し、技能実習は、日本の技能・技術・知識を外国人に吸収してもらい、帰国後に現地で活用してもらう【技術移転】を目的としており、日本における労働力の需給調整の手段として用いられてはならないとされています。
ただし、技能実習2号を修了した外国人本人が希望すれば、同じ仕事内容の場合に限り、試験免除で特定技能に在留資格を変更し、特定技能外国人として就業できる場合があります(後述)。
取得要件について
外国人が特定技能【素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業】の資格で業務に従事するためには、技能試験と日本語試験の両方に合格するか、同等業務である技能実習2号を良好に修了している必要があります。
技能試験と日本語試験に合格していること
技能試験(製造分野特定技能1号評価試験)は19の業務区分ごとに行われ、学科試験と実技試験からなります。外国人は従事しようとする業務区分の試験を受けて合格する必要があります。技能試験の内容は以下の通りです。
日本語能力については、「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4レベル以上)」に合格する必要があります。身近な話題や日常的な事柄について簡単な日本語を理解したり基本的な情報交換をしたりすることができる水準が求められます。
技能実習2号を良好に修了していること
特定技能の各業務区分に対応する職種・作業について技能実習2号を良好に修了した外国人は、その業務区分の技能試験が免除されます。上記の表の通り、例えば「鋳造」の職種で「鋳鉄鋳物鋳造」または「非鉄⾦属鋳物鋳造」の作業を良好に修了していれば、業務区分「鋳造」の特定技能に必要な技能水準を有しているものと見なされます。もし、「鋳造」の特定技能に就きたいが技能実習の職種が「鋳造」以外の場合は、前項の技能試験「鋳造」に合格する必要があります。また、どの職種・作業であれ技能実習2号を良好に修了していれば、日本語試験も免除されます。
特定技能所属機関(受入れ機関)に求められる要件と注意点
特定技能外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)としては、適正な雇用契約の締結(上記)に加え、特定技能外国人の支援体制を整備し、「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」に加入することが求められます。
また、過去に労働法・入管法などに関する違反行為があったり、外国人の行方不明を発生させていたりすると受入れが認められない場合があるため、注意が必要です。
参考:
製造業における特定技能外国人材の受入れについて(経済産業省) p12
特定技能外国人の支援体制の整備
特定技能所属機関は、受け入れる外国人に対し、事前ガイダンスや入国時の送迎、住居確保・ライフライン契約手続きなどのサポート、生活オリエンテーション、日本語学習機会の提供などの支援を提供する義務があり、あらかじめ策定した支援計画に基づいて支援を適切に実行することが求められます。
ただし、このような支援体制を自社で用意することは大きな負担であることから、国の登録を受けた支援機関(登録支援機関)に支援全体を委託するケースが多いです。
製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会への加入
製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会は、製造業における特定技能制度のための情報共有、課題把握と対応策検討、外国人受入れの地域差の抑止などを目的とする組織です。経済産業省を初めとする省庁、特定技能所属機関、自治体などで構成されます。
特定技能所属機関になろうとする企業は協議・連絡会に加入し、協議・連絡会による指導や調査に協力する義務があります。出入国在留管理局への在留申請時には加入が完了している必要がありますが、加入手続きには時間を要するため、特定技能外国人の受入れを決めたらすぐに手続きをされることをお勧めします。
外国人受入れが認められないケース(欠格事由)
以下のような事由に該当すると、外国人受入れが認められない場合があります。
・労働法、社会保険関係法令、租税関係法令、出入国関係法令を遵守していない
・特定技能外国人が担当することになる業務に従事していた従業員が、過去1年以内に会社都合で解雇されている
・過去1年以内に、受入れ機関の落ち度で外国人の行方不明を発生させている
・過去5年以内に、技能実習の認定を取り消されたことがある
※ここに記載の無い内容でも認められない可能性はありますので、気になる方は、ご相談ください!
まとめ
特定技能に含まれる分野は、全て人手不足が大きな課題となっている業種です。その中でも日本の経済や技術の成長・発展に重要な存在である、製造業において、人材不足という課題で業界の動きが低迷してしまうのは、とても残念なことであり、大変な危機であると考えます。
その課題を解決する一つの方法として、特定技能があります。日本行政としても、様々な考えがあるとは思いますが、少しでも雇用ハードルを下げるべく、今回の様な制度改正を随時行っているものと想像します。
人材採用に課題をお持ちの方も、外国人雇用に興味をお持ちの方も、一度検討してみてはいかがでしょうか?