COVID-19患者の腸内細菌叢は入院中に悪化する
京都も早い所では桜がちらほら咲き始めてきました。朝ドラの舞台の鴨川は、自宅からすぐ近くで、半木の道(なからぎのみち)と言われていて、子供のころからの遊び場でした。ここの桜🌸は咲く時期が少し遅いので、見に来られるのは、もう少ししてからのほうが良いかもしれません。
また4月早々には「やすらい祭り」というお祭りが地元であります。このお祭りは、桜が散る頃に流行る疫病を封じ込め、一年の厄を逃れるために行われます。ただ、今年も地域を練り歩く巡幸は残念ながら取りやめとなっています。また花傘の中に入れる日が来ることを祈っております。
(詳しくは今宮神社のサイトで)
本日は新型コロナウイルスと腸内細菌に関する論文他をご紹介いたします。
▶論文概要
入院中のCOVID-19患者22名における微生物叢組成の時間的変化と炎症バイオマーカー/サイトカインと微生物叢の相関を解析した。
入院直後からCOVID-19患者と健常者の間で腸内細菌叢に違いが認められ、主にBacilliとCoriobacteriiaの濃縮とClostridiaの減少が見られた。
入院期間中も菌相は変化し続け、Faecalibacteriumを含む短鎖脂肪酸産生菌が減少し、通性嫌気性菌であるEscherichia-Shigellaが増加した。
発症から21日後でもディスバイオーシスは継続し、入院中のCOVID-19患者では腸内は好気性環境となる傾向がみられた。
このような腸内細菌叢の変化は、リーキーガットと呼ばれる腸管透過性の亢進を誘発し、細菌や毒素が循環系に入り込み、全身性の炎症反応をさらに悪化させる可能性がある。
▶論文情報
Correlation Analysis between Gut Microbiota Alterations and the Cytokine Response in Patients with Coronavirus Disease during Hospitalization
(東京大学)
Microbiology Spectrum
発行日:2022年3月7日
新型コロナウイルスに罹患し入院した方の腸内細菌叢は入院直後から通常とは違っていて、更に入院中もどんどん変化していっている、ということです。
これはいわゆるリーキーガットにつながる状態であり、更に炎症が全身に広がっていくことにつながります。
新型コロナウイルスに限ったことではありませんが、常に腸の状態を気にかけ、調子を整えておくことが、改めて大切だと感じます。
とはいえ、生活様式も以前とはずいぶん変わり、テレワークなど、自宅で仕事をされる方も増えてきており、それに伴ってとにかく運動量が減ったと感じておられる方も多いと思います。
大阪市立大学からは、このパンデミックにより脂肪肝患者が増えた、という報告がありました。
▶論文情報
"COVID-19によるパンデミックは、生活習慣の変化を促したが、COVID-19による生活習慣の変化が代謝機能障害関連脂肪肝疾患(MAFLD)の発症に影響を与えるかどうかを明らかにすることを目的とし調査を実施した。
2018年、261名(27%)の患者がMAFLDと診断された。
パンデミック前に22人の患者が新たにMAFLDを発症した。
この間、日常的な深夜の食事がMAFLD発症の独立したライフスタイル予測因子として同定された(ハザード比[HR]2.54,95%信頼区間[CI]1.02-6.36,P = 0.046)。
一方、パンデミック期間中に新たにMAFLDを発症した患者は44人であった。
この間、1日のアルコール摂取量が多いことが、MAFLD発症の独立したライフスタイルの予測因子として同定された(HR 1.03、95%CI 1.01-1.05、P = 0.008)。
60歳未満の参加者では、パンデミック中にMAFLDを発症した患者は、そうでない患者に比べて、1日のアルコール摂取量と1日2回食事をする参加者の割合が有意に高かった。
60歳以上の参加者では、パンデミック前もパンデミック中もMAFLD発症と関連する生活習慣はなかった。
▶論文情報
Lifestyle changes during the coronavirus disease 2019 pandemic impact metabolic dysfunction–associated fatty liver disease
(大阪市立大学)
Liver Int. 2022 Jan 7.
発行日:2022年1月7日
60歳未満でこのような生活習慣の変化による理由で発症するということはやはり、在宅勤務などの影響が大きいと言えそうです。
在宅勤務になると当たり前ですが外出する機会も減り、1日の歩数も極端に減りますよね。
ひどいときなどは、何百歩とかのときもあったりします。
お酒の飲みすぎにはくれぐれも注意、ですね🍺
外出しない、ということはビタミンDの体内濃度も減っていきますので、これもまた問題です。
国立成育医療研究センターからは、このパンデミック時の医療従事者の血中ビタミンD濃度を測定したところ極端に低かった、という報告がありました。
▶論文情報
最近のメタアナリシスでは、無作為化比較試験のデータに基づいて、VitDの補給が呼吸器感染症全体のリスクを低減することが実証され、さらにある論文ではCOVID-19の高齢者患者において、VitDレベルとサイトカインストームおよび無秩序な炎症との関連性の可能性が報告されている。
(25(OH)D)は、ヒトにおけるVitDの主要な循環型であり、現在VitD状態の最良のマーカーとして認められている。
361人の医療従事者について、25(OH)D値は意外なことに著しく低い値であった。
男性では89.7%(78/87)、女性では92.7%(254/274)で25(OH)D値が不足(20ng/mL未満)していた。
また、男性参加者の25.3%(22/87)、女性参加者の48.2%(132/274)が重度の25(OH)D不足(<10 ng/mL)であった。
女性参加者の重度の25(OH)D欠乏症の割合は、男性参加者のそれよりも有意に高かった(p=0.001)。
これは医療と日常生活の両面で長期にわたり屋内活動を行った結果であると思われる。
COVID-19発症リスクの高いVitD欠乏医療従事者に対するVitD補給の有効性に関する臨床試験が必要である
▶論文情報
Serious vitamin D deficiency in healthcare workers during the COVID-19 pandemic
(国立成育医療研究センター)
BMJ Nutrition, Prevention & Health 2022;e000364.
発行日:2022年1月8日
なんと女性の半数近い方が、極端に低い値を示していた、ということです。
この結果はかなり驚くべき数値です。
ビタミンDを積極的に摂取するには、サプリメントも一つの手段です。
医療従事者の方に限らず、すべての人にぜひ積極的に摂取していただきたいと思います。
3回目のワクチン接種を終えられた方も増えてきており、新規感染者数もすこしずつですが減ってきています。
来週には新年度を迎えます。
多くの方が移動し、また新しい生活が始まる方も多いので、体調管理はいつも以上に意識して、しっかり食べ、しっかり寝るように心がけて参りましょう。
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