動物性タンパク質に対する植物性タンパク質の比率を高めると心臓の健康が改善
動物性タンパク質に対する植物性タンパク質の摂取比率が最も高かった人は、最も低い比率の人に比べて、心血管疾患(CVD)のリスクが19%低く、冠状動脈性心疾患(CHD)のリスクが27%低かった、という30年に及ぶ疫学研究の報告。
研究者らによると、本研究結果は、CVD の予防には植物性タンパク質と動物性タンパク質の 1:2 の比率が効果的であり、CHD の予防にはさらに高い比率 (1:1.3) が必要である可能性があることを示唆しているという。
世界中の食事ガイドラインで、植物性タンパク質の摂取量を増やすことが推奨されているが、植物性タンパク質と動物性タンパク質の理想的な比率は不明のままである。本研究は、この比率とそれが健康、特に心臓の健康にどのような影響を与えるかを調査する初めての研究である。
研究者らは、看護師健康調査 I および II と医療専門家追跡調査に参加した約 203,000 人の男女の食事、ライフスタイル、心臓の健康に関する 30 年分のデータを解析した。参加者は 4 年ごとに食事摂取量を報告した。研究者らは、各参加者の 1 日あたりのグラム数で測定された総タンパク質摂取量と、動物性および植物性タンパク質の具体的な摂取量を計算した。調査期間中、10,000 件を超える 冠状動脈性心疾患(CHD)症例と 6,000 件を超える脳卒中症例を含む 16,118 件の CVD 症例が記録された。
種々のリスク因子を調整して解析を行った結果、植物性タンパク質と動物性タンパク質の比率が高いほど、CVD および CHD のリスクが低下することが明らかになった。植物性タンパク質と動物性タンパク質の比率が最も低い (約 1:4.2) 参加者と比較して、最も高い (約 1:1.3) 参加者は、CVD のリスクが 19% 低く、CHD のリスクが 27% 低かった。
これらのリスク低下は、全体的にタンパク質を多く摂取した参加者でさらに高かった。最も多くのタンパク質を摂取し (エネルギーの 21% がタンパク質由来)、高い植物性タンパク質と動物性タンパク質の比率を遵守した人は、最も少ないタンパク質を摂取した (エネルギーの 16%) 人と比較して、CVD のリスクが 28% 低く、CHD のリスクが 36% 低かった。
脳卒中のリスクと比率の間には有意な関連性は認められなかったが、食事中の赤肉や加工肉をナッツなどのいくつかの植物源に置き換えると、脳卒中のリスクが低下することがわかった。
研究者らは、植物性タンパク質の摂取量を増やすことでメリットがなくなる、あるいはむしろマイナスの影響が出る可能性がある点があるかどうかも調査した。その結果、CVD のリスク低下は 1:2 の比率あたりで頭打ちになるものの、CHD のリスクは植物性タンパク質と動物性タンパク質の比率が高くなると低下し続けることがわかった。
研究者によると、こうしたリスクの減少は、赤肉や加工肉を、ナッツや豆類などの植物性タンパク質源に置き換えることでもたらされた可能性が高いという。こうした置き換えは、血中脂質や血圧、炎症性バイオマーカーなどの心臓代謝リスク要因を改善することがわかっている。これは、植物性タンパク質には、食物繊維、抗酸化ビタミン、ミネラル、健康的な脂肪が大量に含まれていることが多いためでもある。
「私たちのほとんどは、食生活を植物性タンパク質にシフトし始める必要があります。肉、特に赤肉や加工肉を減らし、豆類やナッツ類をもっと食べることで、それが可能になります。このような食生活は、人間の健康だけでなく、地球の健康にも有益です」と研究者はコメントしている。
出典は『American Journal of Clinical Nutrition』
http://dx.doi.org/10.1016/j.ajcnut.2024.09.006