BMIを超えて肥満を定義：国際委員会が肥満診断の大幅な見直しを提案
世界中の75以上の医療機関が支持する国際委員会が、肥満の診断について、体格指数（BMI）に加えて体脂肪のその他の測定値と、個人レベルでの客観的な健康状態の兆候や症状に基づいて診断する、新しく精妙なアプローチを提案した。
この提案は、臨床診療や医療政策を妨げ、肥満の人が必要なケアを受けられない原因となっている、肥満の従来の定義と診断の限界に対処することを目的としている。委員会は、病気の診断に関する医学的に一貫した枠組みを提供することで、現代医学で最も物議を醸し、意見が二分される論争の中心となっている、肥満を病気とみなす考え方をめぐる継続的な論争に決着をつけることも目指している。
提案では、BMIは肥満の可能性のある人を特定するためのスクリーニングツールとして有用であると認識しながらも、BMIのみに基づいて肥満を検出することをやめるよう推奨している。代わりに、次のいずれかの方法を使用して、余分な脂肪量と体全体の分布を確認することを推奨している。
・BMI に加えて、少なくとも 1 つの身体サイズの測定値 (ウエスト周囲、ウエストヒップ比、ウエスト身長比)
・BMI に関係なく、少なくとも 2 つの身体サイズの測定値 (ウエスト周囲、ウエストヒップ比、ウエスト身長比)
・BMI に関係なく、直接的な体脂肪測定 (骨密度測定スキャンまたは DEXA によるものなど)
・BMI が非常に高い人 (例: >40 Kg/m 2) の場合には、実際上、体脂肪が過剰であると想定
肥満の新たな2つのカテゴリー：「臨床的肥満」と「前臨床的肥満」
委員会はまた、個人レベルでの病気の客観的な尺度に基づいた肥満の病気診断のための新しいモデルも提供している。
臨床的肥満 とは、過剰な体脂肪が直接の原因で、臓器機能の低下、または入浴、着替え、食事、排泄などの標準的な日常活動を行う能力の著しい低下を示す客観的な兆候や症状を伴う肥満状態と定義される。臨床的肥満の人は、慢性疾患が進行しているとみなされ、適切な管理と治療を受ける必要がある。
前臨床的肥満 とは、臓器機能が正常な肥満状態である。したがって、前臨床的肥満の人は、現在は病気を患ってはいないが、将来的に臨床的肥満や、2型糖尿病、心血管疾患、特定の種類のがん、精神疾患など、その他の非感染性疾患（NCD）を発症するリスクが一般的に高まる。そのため、潜在的な疾患のリスクを減らすために支援を受ける必要がある。
「委員会の新しい診断基準は、臨床医が個人レベルで健康と病気を区別できるようにするものであり、肥満診断の概念のギャップを埋めるものです。世界中の多くの重要な科学団体が肥満の新しい枠組みと診断を広く支持することで、肥満の体系的な臨床評価が世界中の医療制度の要件となることを期待しています」と研究者はコメントしている。
出典は『The Lancet Diabetes & Endocrinology』
http://dx.doi.org/10.1016/S2213-8587(24)00316-4