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モルドヴァワインのラベルのルーマニア語を調べてみた

モルドヴァ(モルドバ)のワインを買った。
洋酒のボトルはラベルの言葉が気になる。どんな言語で何が書かれているのか。

本題とは関係ないが,モルドヴァは経済面でかなりの困難を抱えているにもかかわらず,非常に多くのウクライナからの避難民を受け入れており,注目している。

ラベルの文字

ラベルの中央には,冒頭写真のごとく,大きな字で「RADACINI」と書いてある。その上には木の絵がある(写真には一部しか映っていない)。

その下には少し小さな字で「CABERNET SAUVIGNON」が 2 行にわたって書かれている。
1 行目の「CABERNET」は文字間が少し空けてあり,2 行目の「SAUVIGNON」とちょうど同じ幅を占めるようにデザインされている。

ラベルの最下部には小さな字で「FABRICAT ÎN MOLDOVA」と書かれている。

ラベルの文字はこの三つだけだ。

言語

モルドヴァの公用語がルーマニア語なのは知っていた。
この言語を「ルーマニア語」と呼ぶか「モルドヴァ語」と呼ぶかについては,政治的なイロイロがあるようだが,まあ措いておこう。

私は学生の頃(30 年前),ひょんなきっかけでルーマニア語を学ぼうと教科書を買い,十数ページで挫折した思い出がある。挫折はしたが,今も気になる言語である。

CABERNET SAUVIGNON

ワインに疎い私にも,これが葡萄の品種であるカベルネ・ソーヴィニョンというフランス語であることは分かる。

いや,どうも片仮名表記は「ソーヴィニン」よりも「ソーヴィニン」のように「ヨ」がなみ(小さくない字)のもののほうが普及しているようだ。
しかし,gnon の発音は /ɲɔ̃/ だと思うので,「ニヨン」はそぐわない気がする。

FABRICAT ÎN MOLDOVA

なんとなく「モルドヴァで製造」と読める。

いや,私の目には「ÎN」の字上符が当初は見えてなくて,「IN」だと思った。そしてこれは英語だと思った。

ん? 英語で「fabricat」ってなんか変?
そして目を近づけて見ると,「IN」でなく「ÎN」であることが分かった。
ルーマニア語だったのか。

ルーマニア語の în は「ウン」のような発音で,意味は英語の in と似ている,ということはかろうじて覚えていた。

RADACINI

最後に本命の「RADACINI」である。
そもそもこれがワインの銘柄なのか何なのかよく分からない(結局最後まで分からなかった)のだが,一般名詞(を固有名詞にしたの)ならその意味が知りたいと思った。

Wiktionary で調べたところ,どうもこれは「RĂDĂCINI」なのではあるまいかと思われた。

もしそうであれば,なぜ字上符を省いたのか。
ルーマニア語は a と â と ă がすべて違う発音である。
まあネイティブが radacini を見れば rădăcini のことだと分かるのだろうけど。

そういえばフランス語で,「大文字では字上符を省くこともある」という話は聞いたことがあった。
これもそうなのだろうか。

それなら「FABRICAT ÎN MOLDOVA」の「ÎN」はなぜ字上符があるのだろう。
Wiktionary で調べると  în とは全く別の in という単語があるようだが,そのせいなのだろうか。
しかし,「IN」と書いても文脈で「ÎN」と読めるのではないだろうか。

さて,これが rădăcini であるとすると,rădăcina(ラダチーナ)の複数形ということになる。

そして,rădăcina を調べると,それは植物の「根」であった。

なるほど,英語の radix,radical,radish などと同源の語なわけだ。

そういえば,ラベルに描かれているのは一本の木全体の絵ではあるのだが,冒頭の写真で分かるとおり,根の部分が印象的ではある。

それにしてもワインに「根」とは?

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