品質管理の最重要ポイント〜ヤシガラの電気伝導度(EC)
電気伝導度、聞き慣れない言葉ですね。
英語でElectric Conductivityなので、ECと呼ばれます。
ECは、土壌の塩類濃度を測る指標として使われます。単位はms/cm。
ざっくりと説明すると、EC数値が高いと土壌中の含有塩類が高いことになるので、根腐れなど作物への悪い影響があります。
つまり、土壌改良材として使われるヤシガラ培土のEC数値は、低いことが求められます(作物によっては、意図的に高いEC数値の培土を使う農法もあります)。
【水洗い→ECを下げる】
原料段階のヤシガラ培土は、ある程度の塩類を含有しており、その含有量は一定ではありません。農業・園芸用途の培土として使うには、EC数値を下げて均一化する必要があります。
製造工程の記事でもお話しましたが、適切なEC数値を求めるためにヤシガラを水洗いします。低いEC数値を求めるためには、何度も洗う必要があります。洗う回数は、当然コストにも影響してきます。
また、ヤシガラ培土の製造工場が洗浄設備を有しているかどうか、この点も適切なEC数値の管理ができるかどうかに影響してきます。
【50年100年ものは、もともとECが低い】
50年100年といった単位で放置されたヤシガラ。
ブラックピート、オールドピートと呼ばれるこれらのヤシガラは貴重品で、特に日本市場で需要があります。
ブラックピートは長年、野晒し状態でした。つまり、雨水で天然洗浄され続けたと言うことです。
長い年月をかけて天然洗浄され続けた結果、通常のヤシガラ培土(ココピート)に比べて極端にEC数値が低い。これが、ブラックピートの最大の特徴です。
通常のヤシガラ培土(ココピート)でも、複数回洗浄することで低EC数値は実現できますが、良質なブラックピートと同等数値まで下げるのは、コスト面も含め難しい作業です。
日本市場は、EC数値が極端に低いブラックピートに目をつけました。
特に、土壌の塩分濃度に敏感な特定の作物(ここでは伏せておきます)向け培土の原料として、とても大きな需要があります。
【すべてブラックピートにはできない】
農業・園芸分野の培土において、土壌塩分濃度は低いに越したことはありません。
だったらすべてブラックピートにしちゃえば…となりますが、そう上手くは行かないのです。
まず、50年100年もの原料は、有限です。
通常のヤシガラ培土(ココピート)の原料はプランテーション栽培されています。しかしブラックピート原料として使うためには、50年以上待たなくてはいけませんが、現実的に考えて、これは無理。いまある50年以上経過した原料の山を使うしかありません。
原料の山は、いつか無くなります。ブラックピートはあと数年でなくなる…と言われ続けて何年も経つのですが、いつか無くなるのは間違いありません。
もうひとつ、悪天候に弱いのです。
ココヤシ培土(ココピート)は、その製造工程で洗浄と乾燥があります。天日乾燥を行うので、雨が降り続くと乾燥作業が進まず、通常のヤシガラ培土(ココピート)製造でも天候には左右されます。
ブラックピートの場合、原料の山は野晒しです。
長い年月雨水に曝されていた原料は、既に水分含有率が高い状態。通常のヤシガラ培土に比べると比重が重く、腐食が進んで吸水性能は良いのですが、その分乾燥に時間を要します。
雨が続き多くの水分を含むと、通常のヤシガラ培土(ココピート)より乾燥に時間がかかるのです。悪天候で乾燥作業が滞れば、製造スケジュールは予定通りにはいきません。
これらの理由から、ブラックピートは現在そして将来的に安定して供給継続できる培土では、残念ながらありません。すでにスリランカでは、ブラックピートは手配できないとする会社も多く存在します。
日本では低EC数値が好まれる傾向が強いことから、まだまだブラックピートの需要が続くでしょう。
しかし今後は、将来的な安定供給を鑑み、複数回洗浄した低EC数値のヤシガラ培土(ココピート)に移行する流れが顕著になってくると思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?