【SS】命乞いする蜘蛛|#毎週ショートショートnote
良さそうな場所だと思ったんだけどなぁ…
人家近くの木に巣を張って、ここなら餌になる虫たちが昼も夜も集まってくると思ったのに、何故かちっとも集まらない。逆に、俺を狙おうとするトカゲがしょっちゅう来て巣を壊す。その度に巣を直しているが、ろくに食べていないから補修する糸も出なくなってきている。
引っ越す、そんな余力もほとんどない。死ぬのを待つばかりのようだ。
「あ、蜘蛛がいる」
縮こまってじっとしていたら、小さな子どもが俺を見つけた。
「お腹空いてるんだね。連れてってあげる」
どこに運んでくれるのかと思ったら、蟻の巣のそばだ。子どもがいなくなったら、蟻が集まってきた。
「蟻などを食ってた俺は、最期は蟻に食われて死ぬのか…あぁ、因果なものだ」
蜘蛛は心の中で小さく命乞いをしていた。
ふと気がつくと、空を飛んでいた。
「あら、新しい仲間がきたわ」
風にでも乗っているのか浮かんだままで、周りには雲が集まっている。
そうか、俺は雲になったのだな。
[411字] noteエディターカウンター値
なんか似非『よだかの星』だわ…😭