算数科の目標 ~数学を教えよう~
1. 背景
昨今、算数の誤採点が度々話題になっている。
中でも文書題における掛け算の順序問題が特に目立って深刻である。
例えば、花まる先生の『2×8ならタコ2本足』が酷く有名である。
http://www.asahi.com/edu/student/teacher/TKY201101160133.html
無論、問題文が
「タコが2匹います。それぞれ足は8本。全部で足は何本?」であれば、
2×8は「8本足のタコ2匹」であって、「2本足のタコ8匹」ではない。
「2本足のタコ」は問題文に無い嘘である。
これは酷すぎるので、流石に多方面から批判を受けている。
しかし、「数学的に間違ってる」と指摘するのは容易いが、
「算数は数学と違う」という類の反論が出てくる。
- https://twitter.com/iina_kobe/status/1184862586522591232
50円のりんごが5個ありました。全部でいくらですか?
という問題の場合、50円+50円+50円+50円+50円=250円
これは、50円×5個=250円 と書き換えれますよ。と教えます。
5円×50個=250円 ではないのです。
数学ではどちらも「250」で正解ですが、
算数では意味が変わってくるのです。
- https://twitter.com/totsuki_novels/status/1201475020918099971
『算数』と『数学』は、同じものを別の見方で考えてるだけだけど、
本質的には別の教科だと思う。
交換法則が成り立つのは「数学」の話。
6cmが2個と2cmが6個は、数学では一緒だけど、算数では全く違う。
- https://twitter.com/freetablettabo/status/1201418236526333952
算数とは言葉を式に変換する教科。
数学とは違う教科と考えてもいいのでは?
(後略)
それらを否定するには、数学的考察では足りず、
そもそも算数科が目指すものから確認する必要がある。
2. 算数科の目標
小学校学習指導要領(平成29年3月告示)※2017年
https://www.mext.go.jp/content/1413522_001.pdf P64
データベース
https://www.nier.go.jp/guideline/h28e/chap2-3.htm
第3節 算数
第1 目標
数学的な見方・考え方を働かせ,数学的活動を通して,数学的に考える資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 数量や図形などについての基礎的・基本的な概念や性質などを理解するとともに,日常の事象を数理的に処理する技能を身に付けるようにする。
(2) 日常の事象を数理的に捉え見通しをもち筋道を立てて考察する力,基礎的・基本的な数量や図形の性質などを見いだし統合的・発展的に考察する力,数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表したり目的に応じて柔軟に表したりする力を養う。
(3) 数学的活動の楽しさや数学のよさに気付き,学習を振り返ってよりよく問題解決しようとする態度,算数で学んだことを生活や学習に活用しようとする態度を養う。
既に充分圧縮された文であるため、全部重要である。
中でも、強調したいのを太字で引用した。
まず、算数の目標ではやたらと「数学」が多く登場している。
国語辞書を引けば「算数」とは「初歩の数学」と分かる。
算数の意味が分かれば数学が多用されるのは当然な説明であるが、
残念ながら「算数と数学は別もの」と言う人は一定数居る。
算数は数学であり、特にその易しい部分でしかない。
次に、教えるのは「数量や図形」の「概念や性質」となる。
表現に関しては「簡潔・明瞭・的確・柔軟」を目標に掲げている。
望む態度は「問題解決」である。
算数教育を語る際に目的を見失わないために肝に銘じよう。
3. 結論
算数が初歩の数学だから、難易度に差はある。
しかし、数学的に間違ってるのなら、教えてはならない。
数学で無いと言うのなら、それはもう教えるべきでない。
算数では、数学を正しく教えよう。
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a. 経緯
平成21年の学習指導要領では「数学」が殆ど「算数」だった。
小学校学習指導要領(平成20年3月告示) ※2008年
データベース
https://www.nier.go.jp/guideline/h19e/chap2-3.htm
算数的活動を通して,数量や図形についての基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け,日常の事象について見通しをもち筋道を立てて考え,表現する能力を育てるとともに,算数的活動の楽しさや数理的な処理のよさに気付き,進んで生活や学習に活用しようとする態度を育てる。
実際に、これを根拠に、算数と数学は違うと主張されることがあった。
平成29=2017年で「算数」を「数学」に揃えたのは良い修正である。
テクニカルライティングでは、用語の統一は誤解を避ける有効手段である。