29.日本が独立・自尊の国になるためにー人に尊卑はあるのか?
神・仏の眼からみたら人間は平等だろう。しかし人間社会にあってもそうなのかが問題です。
子供が親や祖父母を簡単に(?)殺してしまう。親が子供を虐殺してしまう事件が、戦後増えたように思う。それも刑法第200条の法定刑を「無期懲役又は死刑」に処するとした尊属殺人の規定が平成7年に削除されて以降のように思われてなりません。
今に尊属とか卑属という言葉自体が、憲法違反(?)と言われてしまうかもしれない。
「親思う心にまさる親心 けふのおとずれ何ときくらん」
これは、松下村塾で教え、明治維新・幕末期に多数の志士を輩出した、吉田松陰が30歳の若さで刑死した際の、辞世の句です。
親思いの子供がどんなに親を敬っても、親の子供を思う心はそれにまさるものである、ということを詠っています。子供を持つ人なら誰もが納得できるところです。
筆者の育った時代は戦後の、着るものも食べるものもない時代でした。親は自分で食べるものがなくとも子供に食わせたものです。当時はそんな事情は分かりません。
「この饅頭はお前が食え」と言って渡された、餡子の詰まった饅頭の美味しかったこと!
物資が豊富である現代では考えられない時代でした。
「美味(びみ)珍羞(ちんしゅう)を得ること有れば、みづから之を喫(く)ふに忍びず、懐に収めて持ち帰り、喚(よ)び来りて子に与う。」(仏説・父母恩重経)
お経にある通りの親の姿だったのですが、このような時代にも親を殺す、とか子を殺すと云う犯罪はありました。
そして、親殺しは大罪でした。子供が親を殺すと、尊属殺人といって死刑か無期懲役でした。
普通の殺人罪は、死刑か無期懲役、又は3年以上(現在は5年以上)の懲役です。
1人の人間を殺すことについては変りありませんが、その人が自分の親や祖父母である場合と、他人の場合とで同じ殺人でもその罪の重さに刑法は差をつけていたのです。
八さん:ご隠居!この間、令和の時代に生きている曾孫の家庭に泊って、東 京見学をして来ました。
熊さん:わっちは、カカアと一緒に外国旅行に行ってきました。
八さん・熊さん:そこで今日は、つまらないものですが、お土産を持ってまいりました。
ご隠居:おー、そうかそうか、ありがとうよ。立ち話も何だから上がって、お茶を飲んで行きな。それにしても、足がないと云うことはいいな~。何処へでも、何時でも行けるからな。わしも、時たま、令和の世の中を見たり、ご一新の前の時代に行って、見物してくるのじゃよ。
熊:お前は、何をみて来たんだ、ハチ公。
八:いや~、びっくりしたの何のってありゃしない。親は子供を殺すわ、子供は親を殺すわ、で大変な世の中になっていたよ。それに子供が親を殺しても、他人を殺した罪と変わらなくなっていたんですよ。
熊:あれぇー、親殺しは、尊属殺人といって、無期懲役か死刑になるのではなかったんですか?
八:大東亜戦争というアメリカとの戦争に負ける前まではそうだったんだよ。敗戦後、アメリカは日本を民主化するという名目の下に、大日本帝国憲法という天子様が明治22年につくった憲法をやめて、新しい憲法を作ってからも尊属殺人罪は残っていた。
それが、アメリカが来てから日本のお偉いさん方がつくった新しい憲法の規定する「法の下の平等」に違反するのではないか、となって、
ついに昭和48年に最高裁判所の裁判官が、憲法違反だというもんで、平成7年に尊属殺人罪を定めていた刑法200条が廃止された、というわけよ。
隠居:その憲法のもとで尊属殺人罪とやらが、平成7年に廃止の憂き目にあったんだ。
熊:それでは、飯をたらふく食べられるようになったから、親を殺しても、尊属殺人として重く罰せられることがなくなったのですか?
隠居:いや、そうではない。戦後、昭和24年に父親を殺した娘が尊属殺人として裁判にかけられて、この犯人を死刑か無期懲役にするのは、忍びないと云う意見があってね、議論が沸騰したんじゃよ。
殺された父親は、犬畜生にも劣る奴でね、自分の実の娘を夜を日に、情欲のはけ口にし、こき使っていた気の毒な事案だったな。
八:そんなかわいそうな犯人なら、刑務所に入れなくても良さそうなものだが、そうはいかないんですかね。
隠居:刑法には、色々な犯罪が決められていて、そのような罪を犯した場合は懲役何年以下とか以上に決められていてね、これを法定刑というのだが、その法定刑の範囲内で、裁判官は量刑を決めなければならない、ことになっています。
熊:だから尊属殺人の犯人は、無期懲役か死刑にしなければならなかったのですか?
隠居:そうです。しかし、実際の刑の言い渡しは、法定刑の範囲内で、極悪非道であれば重く、情状酌量する余地のある者は、軽くなったんだ。
隠居:私はね、現代の親殺しも、子殺しも普通殺人よりも法定刑を重くしても良いと思うがね……少子高齢化だと言われて、子供も少なくなってきたことだし、もうちょっと家庭と言うものを大事にする法政策があってもいいと思うがね……
何事もアメリカさんの真似事をしていればよい時代は終わったよ。八公も熊公もどうしたら良いか考えてごらん!
(つづく)
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