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読書感想文「マイグランパパ・ピカソ」


20世紀を代表する偉大な天才画家、ピカソ。
最初の結婚で生まれた長男の娘、つまり孫娘
マリーナ・ピカソによる祖父ピカソの実像が
描かれた評伝「マイグランパパ ピカソ」。

ピカソの油絵「女性の胸像」ポストカードが
我が家にあります。どの美術館所蔵かなど、
最近まで気にも留めなかったのですが、
マリーナ・ピカソさん所蔵と知りました。

ピカソの相続人である彼女の生活と
彼女が相続したであろう作品に興味を持ち
検索したところ、この本の存在を知り、
図書館から借り、一気に読了。

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偉大すぎる故に絶対的な力を振り翳し、
自己中心的に天才画家として創作活動に
集中するだけの無慈悲な暴君だったピカソ。

孫としてただ甘えたかった幼い頃から
普通の幸せさえ受ける価値がない存在として
粗末に扱われてきた彼女の目を通して、
周りの人(彼女の家族、愛人)が、
アイデンティティを否定され苦しみ、
人生を破壊させられていく過程が
赤裸々に描かれています。

太陽のように人を惹きつけ、
近づくと焼き尽くしてして、
創作活動のエネルギーとして再利用することに
良心の呵責など微塵も感じない祖父。

「ピカソ」姓である直系孫娘ゆえの
苦悩と悲しみが伝わってきて、
読み進めるのが辛くもありました。

同時に彼女自身が家庭を持つこと、
又他者との繋がりの中で居場所を見つけ、
アイデンティティを再構築していく様が
描かれています。
彼女の人生の長い時間をかけてですが、
自己再生されていくことを知り安堵しました。

マリーナさんは遺産として
カンヌにある豪邸と400点の油彩を
受け取ったそうです。

「女性の胸像」もそのうちの一点です。
女性が誰か、とはタイトルからはわかりません。
ネット検索していたら、モデルは愛人だった
ドラ・マールのようです。

タイトル 女性の胸像


マリーナさんには一才歳上の兄パブリートがいて
兄妹は父ポール(ピカソの長男)に連れられて
お金の無心でピカソのアトリエである
豪邸を訪ねる場面が何度があります。

そこにはマリーナの祖母であり妻の姿はなく
別の女性と暮らし創作活動をするピカソ王国。
完成した作品がたくさんあっても、
作品のモデルとして自分たち兄弟が
登場する絵は一枚もなかった、との
記述の部分、胸が塞がれました。

絵画にせよ、素描にせよ、祖父の作品の中に、
私たちの存在を示すものは全くない。
ラ・カリフォルニーに行った時など、
私たちは自分の存在を見つけようと血眼になって
壁を見回し、密かに図録や美術書をめくっては、
牧神やバッカスや静物画の万華鏡のなかから、
自分たちの姿を探し出そうとしたものだ。

マイグランパパピカソ 46ページ

そしてこう続きます。


ピカソとマリー・テレーズの間の子供である
マヤの習作や絵画、
フランソワーズ・ジローとの間の子クロードと
パロマの素描や肖像画があった。
それから漁師、、、、(途中略)、、
それでも直系の子孫である
私たちのスケッチは一点もなかった。

マイグランパパピカソ 47ページ

莫大な富をもたらす遺産作品の中に
自身の存在の無さを再確認する度に
彼女の心にはどんな想いが去来するのでしょうか。

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