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【映画鑑賞】『メイ・ディセンバー ゆれる真実』観ました。

このページに足を運んでいただき、ありがとうございます。
夏の暑さに毎日ひいこらしている、黒木りりあです。

先日、ご縁がありまして映画.com様にて映画『メイ・ディセンバー ゆれる真実』公開直前トークショー付き試写会に当選し、一足お先に本作を鑑賞させていただきました!
本作は、昨年アメリカで公開された本作は大きな話題となり、ゴールデン・グローブ賞やアカデミー賞など賞レースでも広く注目された一作です。私もSNSでの高い評判を見てとても気になっていた作品だったので、鑑賞することができてとても嬉しかったです。

ということで、今回は『メイ・ディセンバー ゆれる真実』について、語っていきたいと思います。


『メイ・ディセンバー ゆれる真実』とは?

アメリカで実際に起きた、当時13歳の小学生男子と36歳の女性担任教師が起こしたスキャンダルをモチーフに、事件のその後について描いた作品です。あくまでもスキャンダルはモチーフとなっているだけで、本作では細かい設定が大きく変更されており、他者から見た事件のその後を描いています。

本作でメガホンを取ったのは『キャロル』("Carol"、2015年)で高い評価を得たトッド・ヘインズ(Todd Haynes)。
本作の主人公である女優のエリザベスを演じるのは、映画『ブラック・スワン』("Black Swan"、2010年)でアカデミー主演女優賞を受賞した、ナタリー・ポートマン(Natalie Portman)。ポートマンは製作にも名前を連ねています。
事件の加害者であるグレイシー役を、映画『アリスのままで』("Still Alice"、2014年)でアカデミー主演女優賞を受賞し、世界三大映画祭すべてにおいて女優賞を受賞した経験のあるジュリアン・ムーア(Julianne Moore)。事件の被害者となった元少年ジョーを、ドラマ『リバーデイル』("Riberdale"、2017-23年)で人気を博し、本作での演技にて賞レースを賑わせたチャールズ・メルトン(Charles Melton)が演じています。

『メイ・ディセンバー ゆれる真実』あらすじ

グレイシーはジョージア州のサヴァンナにある一軒家で、バーベキューの準備をしています。夫のジョーと子供たちと共に暮らすグレイシーは、一見幸せな家庭を築いているように見えます。しかし、彼女は23年前の36歳当時、働いていたペットショップでアルバイトをしていた13歳の少年・ジョーと不倫関係を持ったというスキャンダルで全米を騒がせた人物だった。不倫の末にグレイシーは獄中で出産し、当時大きな話題となった。
このスキャンダルが、23年経ち映画化されるという。グレイシー役を演じる女優のエリザベスは、役作りのための調査と称して、グレイシーたちの住むサヴァンナへとやってくる。演技の手掛かりを求めてグレイシーたちと共に過ごし、取材を進めていくエリザベス。どんどんと事件にのめり込み深みにはまっていくエリザベスは、自分なりの真実を見つけようとするのだが……。

じわじわ来るシュールなブラック・コメディ

公開前からアメリカ本国でも大きな注目を集めた本作ですが、性犯罪の行く末という重い題材を描いているにもかかわらず、ゴールデン・グローブ賞ではミュージカル・コメディ部門でノミネートしていたことに、ちょっとした違和感を抱いていました。しかし、実際に鑑賞してみて、「確かにこれはコメディだな」と納得できました。お腹を抱えてゲラゲラと笑いまくるようなタイプのコメディではなく、本作はじわじわと皮肉な笑いが顔に浮かんでしまう、少しシュールなコメディ作品だな、と感じました。
本作は全体的に違和感だらけの作品ではありますが、おそらく最も注意を惹きつけられるのは、展開されている映像とは全く合っていない、仰々しい音楽でしょう。しかも、この音楽は2時間のうちに何回も何回も流れるんです。これでもか! と脳に刷り込まれるイメージです。この音楽自体は本作のオリジナルではなく過去の名作から移換されてきたもののようですが、耳にこびりついてはがせません。
それ以外にも設定や言動など、様々な場面で違和感がモヤモヤ、じわじわと浮かんできて、ラストシーンではその感覚がようやくすっきりする、そんな作品かな、と思います。笑ってはいけない映画かな、と身構えてしまいそうな空気を醸し出してはいますが、コメディなので存分に笑って良い作品です。

出演陣の圧巻の演技力

ナタリー・ポートマンもジュリアン・ムーアも私は好きですし、とても実力がある女優さんたちだと思っています。本作でも二人の演技は圧巻で、二人のミラーリングもバトルも、この二人だからこそできるものなのではないかと感じました。しかし、私が本作に関心を抱いたきっかけは、アメリカで同作を観賞した人々が絶賛するチャールズ・メルトンの演技への評判でした。
彼が演じるジョーという役は、非常に複雑で悲劇の立場にいます。身勝手な大人の手で子供時代を奪い取られた性犯罪の被害者であり、身勝手な理由で彼の人生を搾取しようとする女優にも振り回される。グレイシーとジョーの関係はどう考えてもグルーミングだけれども、二人ともそれを受け入れられない。ジョーが頑なに被害者であることを認めてこなかったのは、そうすることでしか自分の心を守れなかったからだと感じました。この複雑な環境に置かれた複雑な心境を、メルトンは静かに確かな演技力で体現しており、彼が多くの賞にノミネートしたのは納得で、まさに圧巻の演技だったと感じました。

本作と同じ事件を題材とした作品として、ジュディ・デンチ主演、ケイト・ブランシェット共演の映画『あるスキャンダルの覚え書き』("Notes on a Scandal"、2006年)がよく一緒に紹介されていますが、個人的にはローラ・ダーン主演の映画『ジェニーの記憶』("The Tale"、2018年)やケイト・マーラとニック・ロビンソン共演のミニシリーズ『ティーチャー』("A Teacher"、2020年)の方がよりテーマに近い作品のように感じました。

さいごに

『メイ・ディセンバー ゆれる真実』は2024年7月12日(金)より日本全国ロードショーです。うだるような暑さの続く日々に、なんとなくお腹の奥がざわざわと冷えてくるような一作を、涼しい映画館で堪能してみるのはいかがでしょうか?

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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