おっさんずラブ考 (リターンズ4話まで)
このnoteを書いたきっかけ
2024年冬ドラマの『おっさんずラブ-リターンズ』が好調だ。
4話放送当日の記事で「第1~3話とTVerで配信中のスピンオフの見逃し配信総再生数が700万回を突破(※ビデオリサーチにて算出 期間1月6日~24日)するなど、金曜ナイトドラマ枠歴代1位の快進撃となった。」とのこと。
また5話前の1/31にはFilmmarks 公式が「2024年冬ドラマ⛄️初回満足度ランキング発表!」で1位を発表、エンタメ情報Webマガジン「TVマガ」を運営するWonderSpace1月5~9日の期間実施した「期待度が高い2024年冬ドラマ」に関するアンケート調査でも1位を獲得。
オリコンによる1月期ドラマ満足度も2週連続首位を獲得。
https://news.allabout.co.jp/articles/o/75227/
https://www.oricon.co.jp/news/2312953/full/
5年ぶりの続編にわき、こんなにも私を含め大勢のひとが夢中になる『おっさんずラブ』。
それはどうしてだろうと、ずっと2018年版を初めて見た時から自問自答を繰り返していた。わかるようで言語化できない。
それがリターンズを見て遅まきながらわかってきたような気がする。
そこを私なりに3つに分けて書いてみたい。
魅力1 テレビドラマの先駆け的作品であること
これについて書いてたら長くなっちゃったので別のnoteにしました。よかったらリンク先のnoteへ。
ちょっと抜粋。
「おっさんが主人公のドラマというのがまず珍しかったのではないか。そして「男性同士」の恋愛を描いたものは映画ではすでにあったが、テレビドラマとして男性同士の恋愛をはっきり描いたのはおそらく『おっさんずラブ』が初めてだろうということ。さらにいえば、原作のないオリジナル脚本のドラマだからではないか。
唯一無二。
つまりは先駆けだったから。」
男性同士の恋愛をメインにもってきたのは2016年単発の『おっさんずラブ』がおそらくテレビドラマ史上初めてのはず。先駆けなのですね。
しかも完全オリジナル脚本。みんなどうなるのか知らない面白さ。そこだろうなと。
魅力2 キャスト・スタッフの信頼感
単発からずっと主役の春田創一を生きている田中圭は結構チャレンジャーだ。元々同じクールの中で作品を縫うのもよくやっていたし、ドラマ史、エンタメ史に残ることをやっている。リターンズ4話でも一人二役を鮮やかに魅せ、もう一役が出てくるのが回想で5分ほどでしかないのに鮮烈な印象を残した。
考察もの、2クールの『あなたの番です』のインパクトは記憶に新しい。今後もことあるごとに語られるだろう。あな番前、あな番後と。
そしてテレビではなく配信ものだが、『田中圭24時間テレビ』。24時間でドラマを1本作り上げるというもので、常にカメラがそばにいて休憩も仮眠も撮られる過酷さ。それも見事に完走した。
その二つの前に取り組んだのがこの『おっさんずラブ』2016年単発だ。
タイトルからして「え?おっさん?」となるし、男性同士という非常にチャレンジングな作品を田中圭は座長として引き受けた。そういうイメージがつくという心配はなかったのだろうか。彼は過去のインタビューなどで「どう見られているかは気にしない」趣旨のことを言っている。「こう見られたら嫌だな」と思わずに、オファーがきたものは受ける。自分がというよりも作品が成立することを優先する。そういうスタンスのように見える。
その田中圭だからこそ『おっさんずラブ』というタイトルのドラマの主人公を引き受けたのではないか。ヒロイン役という位置付けの吉田鋼太郎も同じ決断をしている。この二人が揃ったことが大きい。
結果として、この二人は今まで培ってきた実力を惜しげもなく発揮、全力でぶつかっていく。
田中圭はモノローグに合わせ、表情筋を駆使し、そして相手の発信を全て拾って行く。吉田鋼太郎は舞台で鍛えた喉で台詞をほとばしり、ある時は乙女ぶりをいかんなく発揮する。
アドリブが多い現場とよく言われているが、セリフというよりも、ホンに詳しく書かれてないト書の部分をそれぞれが現場で感じたものを膨らませ、その場その場で湧き上がってくる想いを大切にしているのだろう。ある意味舞台的なライブに近い。それを可能にしている製作陣もすごい。2016年の連ドラの最終話のプロポーズシーンはすでにもう春田が始まっている田中圭をさっと製作陣が撮ったというエピソードを目にしたけどこういうキャストとスタッフのタッグの強さ、単発からの信頼感、それが結実したのかな、と。
常に遠慮ない笑いが起こる他にはない雰囲気の現場。
そして不動産で初対面だったという田中圭と林遣都。初対面でいきなりご飯にいき、その後どんどん私生活でも仲良くなる。林遣都と吉田鋼太郎とはもともと共演歴がありそれも対決するようなものだったという。ここも信頼感があったからこそのキャットファイトであり、牧の春田に向ける目線だったりになったんだろう。
リターンズにおいても5年の間にさらに積み上げた信頼が全力でぶつかっていく原動力になっている気がする。
俳優同士の信頼に基づく真剣勝負。演技合戦。そして近い距離感。それはそのままスタッフとの関係とも重なる。
面白いものを作ろうぜ!という気概が、視聴者に伝わってきてたんだな、と。
なお、距離感でいうと春田はリターンズでは、牧ラブのシーンなどかなりハイテンションに見えるが、全体に春田が少しお兄さんに見えるのは、林遣都ともかなりプライベートで仲良しのようなのでそれも滲み出てくるのか。そして、田中圭自体が年齢を重ねたこともあるけど、5年の間にいくつもの座組の長を経てきたからなのか。
寧々さんによると「バランス感覚に優れた」座長。雑誌などの記事でも周りから慕われているのがわかる座長。この座長を中心に結束力がつよくなっているんだろうな。
林遣都も朝ドラや『VIVANT』など話題作品などいろいろ経て、結婚もしたし、なんかどっしりした気がする。余談だが朝ドラ見ていて、途中でようやく牧と信作が同じ人なんだと気がついたのは林遣都がすごすぎるのか、私がぼんやりなのか(苦笑)(個人的な時系列だけど、おっさんずラブの再放送を2019年夏に見て、その直後に朝ドラ『スカーレット』の放送が始まって、みていたのに、しばらく気がついてなかった…)
寧々さんの田中圭評はこちらで
魅力3 余白
おっさんずラブといえば、モノローグに合わせて、春田がいろんな変顔というか表情をするのがインパクト強い。私の田中圭にもっていたイメージ(どちらかというと『図書館戦争』の小牧教官みたいな物静かで優しげな人かなと勝手に思っていた)が、いい意味でガラガラ崩れ、なんて魅力的な表情をするんだろうと思った。
主役だから考えていることが「見える」のは当たり前かもしれない。
対する牧はモノローグが全くないわけで、その時の表情で考えてることをよみとる。
その余白。
だから牧に熱狂的に夢中になる人が多いのかもしれないなと。余白を自分で読み取って感情移入する。
2018年の不動産編では部長もそうだったから何を考えてるのかはわからない。ブラインド越しに見ていたとき何を思っていたのか。そもそも靴を履かせてもらった瞬間になにを思ったか。その時にモノローグはない。
リターンズでは家事代行で物思いに耽っているシーンがあり武蔵の考えも時々わかる。
ここで部長は三角関係から外れ、見守る立場になった立ち位置であることがわかる。
春田も全部モノローグがあるわけでもないし、オーバーな表情だけではない。
不動産編のブラックアウト寸前に見せる顔、劇場版で別れる時の顔、
そしてリターンズで帰国した牧に対峙し、抱きつく一歩手前の顔、好きになったのは春田さんが先でしょと言われた時の「えーそういう?ま、そういうことにしとくか!」とでも言いたげなえも言われぬ表情の変化、テレビ電話を先に切られた時のあっ、となりつつもすぐ笑顔になる瞬間など、瞬時のあいだにいろんな感情が読み取れる。
なによりも牧に対する愛情のこもった目線が今回よく伝わってくる。
相手が何かした時、何か言ったときの表情が本物で、あらかじめ用意してなくて、その場その場を大切にしてる感じがする。
そうしてお互いが相手を想ってること、愛おしく想ってることが伝わってくる。
この余白が最大限生かされてるなって思うのだ。
もちろん他のドラマにおいてもそうなんだけど、モノローグではっきりわかるところと、そうぇないところのコントラスト、そこが絶妙。
みんなその余白から自分なりの『おっさんずラブ』を頭に紡いでいく。
リターンズはキャストたちのインタビューを見るからに、コメディであり、恋人が家族になっていく過程を描くホームドラマだ。
そして個人的に思うのは、4話でちずがいう位に全人類愛を発揮する春田の、マリアナ海溝よりもはるかに深い愛情深さと家事能力ゼロでどうしようもなかったのにパートナーと暮らすためそれなりに家事を頑張るようになっている変化、春田のそのものの、前回より磨きがかかる可愛さぶり、
牧の、武蔵を理解しようとし始めたことも含め、春田から受けた愛を自信に変えて、今まで秘めてきた殻をこじ開けての成長ぶり(はじけぶり?)を
描くドラマなんだと思う。キャットファイトも相変わらず健在だし。
新キャラもいるから仕事ぶりは今回は少なく、ホームコメディなんだなと思うと楽しく観れるのではないかな。ギリギリを攻めるいろんなエンタメのオマージュも楽しい。賛否両論はあるんだろうけど、こうやって続きが見られる世界線が来ていることが単純に奇跡。
今日放送の5話以降、また感情のジェットコースターに乗せられ、体調や肌の具合(個人的にはリターンズが始まってからずっと顔の調子がいい!)にも影響が出そうだが、このコースターの旅を最後まで堪能したい。
おまけ
☆全体的なバランスがいいなと思った記事まとめ。
おっさんずラブの魅力を分析した記事。
こういう視点もあるということで。
春田さんの魅力について。
春田と牧の愛情表現の違い
私が今まで書いたおっさんずラブに関する記事