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彼女が描いた花と骨

家の本棚に
だいぶ前に買った
ジョージア・オキーフの画集がある。

彼女の描く絵の色合わせが好きで
疲れて帰宅した時や
週末の自由な時間に
時々この画集を開いては
何も考えずに
ただ眺めている。

ジョージア・オキーフという人は
およそ140年前の
アメリカの農家に生を受け、
幼い頃から絵画の才能を発揮し
名門美術学校に進学。
周囲からは
将来の活躍を期待されたが
彼女自身は
存在を精緻に再現する
リアリズムの表現法を重視する
当時の美術界の方向性に失望、
美術教師やイラストレーターをして
正統派路線から外れて
在野のアーティストとなった。
彼女は
アーティスト自らを表現する
モダニズムの立ち位置から
制作を続け
のちにニューヨークで
前衛美術のギャラリーを運営していた
アルフレッド・スティーグリッツに出会う。
2人は結婚し
商売人でもあるスティーグリッツは
オキーフの絵画を
「男性優位の美術界において
抑圧されてきた女性性を表現した
女性作家の作品」
として売り込んだが
オキーフはハッピーでなかった。
スティーグリッツ自身、
伴侶の為
良かれと思って進めている
自らのマーケティング戦略が、
妻とその作品を
女性という枠に
さらに閉じ込めていることに
気がついていなかった。
何はともあれ
オキーフの作風は高く評価され
「アメリカモダニズムの母」と
呼ばれるようになった。

オキーフの作品には
花や骨がモチーフとして数多く登場する。
花は生命の盛り、骨は生命の名残。
オキーフの作品を観ると
地球上のどの生命も
その両極を備えているのだ
ということを思い出す。

オキーフは夫の死後
ニューメキシコに移住した。
その家は改修の際
窓が額縁のように
周囲の景色を
包み込むように
再設計されたという。
時刻や天候で様相を変える外の景色を
オキーフは
毎日新しい作品を観るかのように
楽しみにしていたそうだ。

オキーフは
「あなたが人生に取り組む日々は最良の日々」
と言っていたが、
毎日毎瞬の
とるにたらないことも
自分を表現する手段であり
何が起こっても
額縁の中の作品として捉えれば
どうってことはない、
ということなのかもしれない、
と、私は勝手に意訳している。

【余談】
ミレパのTrepanation のMVを観るとオキーフを思い出してしまう。


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