息子がパラバルーンの布に隠れた時に思いが込み上げてきた

「ただいまー」保育園から息子が帰ってきた。

「おかえりー」と言って頭を撫でる。あれ?なんかざらざらしてるぞ。よく見ると頭に砂がかかっている。

「なんで頭に砂があるん?」と聞くと「パラバルーンの練習しとったからや」と答える息子。(※パラバルーン:円形の布のふちを持ち、集団でタイミングよく上下・回転させる遊具)

近々運動会がある。去年はコロナでできなかったので、今年は開催できて本当に良かった。年中組の種目は「パラバルーン」と「かけっこ」の2つ。晴れた日には園庭で練習をしているらしい。

パラバルーンで頭に砂がかかるか?息子のことだ、きっと練習中にふざけて寝転んでいるのだろうと思った。

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運動会当日は気持ちよく晴れた。

友人宅へ車で向かう。保育園の駐車場は台数が決まっているので、行事の日は近くの友人宅に停めさせてもらっているのだ。

「おはよう」「晴れてよかったねぇ」

少し立ち話をした。

「年中さんのパラバルーン、楽しみやね。結構感動するよ。私、初めて見たとき”こんなことできるようになったんや。すごいな”って泣いたもん」

そうなのか。

「うちの子は、みんなの足ひっぱらんか心配やわ」と言うと、友人は「大丈夫やよ。先生がちゃんと指導してくれとるから心配ないよ!」と言ってくれた。

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運動会が始まった。入場する子供たち。開会のあいさつ、準備体操を終え、いよいよプログラムが始まる。

「プログラム2番、パラバルーンです」

Superflyの『Beautiful』が流れる。

走って定位置に向かうこどもたち。息子は自分の位置を少し超えて走ってしまい、慌てて戻っている。その姿に笑ってしまった。

大波!ピーッ」先生の号令でこどもたちが布を揺らす。

シーソー!」子どもたちの半分は布を高く上げ、反対側はしゃがむ。それで高低をつけてシーソーを表現している。すごい、すごい。

お布団!」布をもって寝転ぶ子供たち。足をバタバタさせている。これか。これは確かに頭に砂がかぶるわ。息子はふざけていたわけではないのだ。一生懸命練習していた結果だったのだ。

UFO!」布を持ち、もう片方の手を広げて走りだす。ぐるっと回るので、私の顔を見つけた息子は手を振ってくれた。余裕じゃんか。

その後も「風船」「ウェーブ」「おまんじゅう」「メリーゴーランド」と次々と見せてくれた。どれもみんな上手にできており、演技ごとに拍手が沸き起こる。

テント!」布を高く上げふくらまし、子どもたちは布の下に入っていった。姿は見えないが布が動くので、中でごそごそやっているのがわかる。どうもこれが最後の演技のようだ。

この時間が結構長かった。その間、私はこんなことを考えていた。

布で隠れたこどもたち。なにをやっているのかはわからない。保育園に行っている時だってそうだ。毎日、どう過ごしているのかはわからない。

先生に叱られる時だってあるだろう、友達とケンカする時だってあるだろう、自分の思いが通らなくて泣いたり暴れたりもするかもしれない。集団生活って結構大変だ。こどもとはいえ、我慢することもたくさんあるだろう。

この、パラバルーンの練習も頑張っていたのだろう。「お母さん、運動会は絶対見に来てね!」と興奮して話していた息子の顔を思い出す。

私の知らないところで頑張っていたのだ。先生と、友達と一緒に。毎日の生活も、運動会の練習も。それを思うとなんだか泣けてきた。

布がばーっと剥がされた。「やぁーーー!」子どもたちは前後に2列に並び、手をひらひらさせていた。みんなニコニコ笑顔だった。

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その後、かけっこがあった。息子は3人中3位ではあったが、「頑張って走ったよ!」と誇らしげだった。

閉会式で私の横に並んだ息子。頭にはやっぱり砂がのっていた。

その砂を払って頭を撫でてやった。





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