その、真剣な顔を見るのが好き
「なんやそれ?パセリ?」
外から帰ってきた義母の手元を見て、5歳の息子が声をかけた。
「そうや。パセリや。」
義母はプランターでパセリを育てている。
たまにそれを摘んで、サラダにかけたりスープに浮かべたりする。
「パセリどうするん?」
「葉っぱのほう切るんや。」
「ケンがやりたい!やらせて!」
息子は、台所に向かう義母の後ろをついていった。
*
しばらくして、リビングにやってきた息子。
手にはボウルにいれたパセリと料理ばさみを持っている。
そして、チョキンとパセリの葉を切り始めた。
パセリの茎は細いし、葉も小さいのでなかなか切りにくいのだが
息子は器用にパチリパチリと葉を落としていく。
ふと息子の顔を見ると、真剣そのものだった。
いいなぁ。
こんな顔見るの、私は大好きだ。
*
息子がはさみを持ったのは4歳の時だったか。
はじめこそうまく使えなかったのだが、日に日に上手になっていった。
折り紙をくるくる回しながら切り、「ヘビみたいだね」と言って遊んだ。
スーパーチラシの持ってきては、肉だのイチゴだのを型抜きのように切っては楽しんでいた。
車が好きな息子は、MINIのチラシが入ると大喜び。
車の形に沿ってチョキチョキ切っていく。パズルのように組み立てて遊んだり、壁に飾ったりした。
紙を切る、その時の真剣な顔といったら。
息子は誰に似たのか、なかなか賢そうな顔をしている。(あくまで、賢そう)
きりっとした眉に、大きいクリっとした目。
我が子ながらほれぼれする。
*
「お母さん、ちょっときてや。」
見惚れていた私を息子が呼ぶ。
「ここ持っとって」
さすがの息子も疲れてきたようで、パセリの茎を「はいっ」と渡してきた。
私が茎を持って、葉を息子が切っていく。
「へへ~ん。こうしてハサミ大きく開けちゃうもんね~。」
先ほどまでの真剣な顔が消え、すっかりお遊びモードになっている。
子どもなんてそんなもの。
めっちゃ集中してる!と思ったのもつかの間のこと。
だからこそ、「集中している時の顔」を拝めるのは貴重なのだ。
*
レゴが好きな息子。
レゴをしているときの顔もまた良い。
真剣に取り組んでるときの顔って良いんだよなぁ。
間近でこの顔を見れるのは母親の特権だろうか。
5歳になる息子に、そろそろ習い事をさせてみようかと考えている。
(3歳ごろから考えていたのだが、なかなか「これ」というものが見つからず、ここまできた)
やっぱり、モノ作りが息子には合っているんじゃないかと思っている。
レゴとか、プログラミングとか。
これからますます、息子の「真剣な顔」とみる機会が増えるんじゃないかとワクワクしている。
それと同時に、そんな顔を見られるのももしかして今だけなのかなぁとも思っている。
中学生や高校生になったら、部屋にこもって出てこないかもしれない。
私の前で、「真剣な顔でなにかする」姿を見せてくれなくなるかもしれない。
ちょっと寂しい気もするが、それでも息子のことを、私は応援し続けたいなぁと思う。