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私が欲しいのは ”ぼろ布”

今は育休中で会社には出勤していないが、産休に入る前に出勤していたころ、お昼ご飯はたまにテイクアウトを頼んでいた。

事務所の所長が「来週、テイクアウト頼みますが、みなさんどうですか?」と声をかけてくれるのだ。

ちょうど、オープンしたてのお店からチラシが届いていた。”チキンカレー”おいしそうだよね、なんて後輩の女の子と話していた。

所長も「チキンカレーいいですね」と乗り気だったので、人数分頼んでみた。

どんな容器で持ってくるのだろう?プラ容器かな?と思っていたら、まさかのスープジャーだった。配達してくれた店員さんは「後でとりにきますね」と言って帰っていった。

ほんのり温かいカレーはとても美味しかった。

食べ終わったころ、所長が「スープジャーはさっと洗った方がよいですね」と言った。

事務所があるビルには洗い場はある。事務所用のスポンジと洗剤もある。だが、このカレーが入っていたスープジャーを洗ったらスポンジが汚れてしまうのは目に見えている。

「え!洗うんですか。スポンジ汚れちゃいますよ。仮にスポンジを使わないで水で流すにしても、油でよけいにギトギトになると思います。これは洗わずお店の人に持って行ってもらった方が良いです。」

そんなに強い口調で言ったつもりはなかったのだが、所長がたじろいだ。

「え・・・そんなに強く反対されるとは思わなかったよ。リコさんの言い分はわかったよ。洗わず返すよ・・・」

この会話の後、先輩の男性社員に「つけおきできる食器洗剤があればいいんだけどね」と言われた。「うちで使ってるんだよ。スプレーしておけば汚れがういてくるから、洗い物が楽になるんだ」

私は、「へぇ~、そんなものがあるんですね。便利ですね」と返答したのだが、内心「それも違うんだなぁ」と思っていた。

洗剤じゃないのだ。私が欲しいのは”ぼろ布”なのだ。

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結婚して夫の家に入った。結婚すると、生活スタイルの違いにとまどう・・・というが、例にも漏れず私もそうだった。

色々驚いたことはあったが、これはいいなぁと思ったこともある。

そのひとつが、”ぼろ布”だ。

着なくなったTシャツなどを手のひらサイズに切っておくのだ。それが台所やリビングに置いてある。お茶やごはんをこぼしてしまったときにはそれで拭く。もともと要らない布なので、”もったいない”と思わずどんどん使える。

油で汚れたフライパンやお皿なども、洗う前に一度ぼろ布で拭く。そうすると、スポンジを汚さずに洗えるのだ。

布を切る作業は地味に大変ではある。結構力がいるし、切ったところから生地がぼろぼろとこぼれてくる。でも、ぼろ布がないと困るので、頑張って切る。たくさん切って、”ぼろ布”専用袋にストックしておくのだ。

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このぼろ布があったらなぁ、と思った。そうしたら、スポンジを汚さず、スープジャーがきれいに洗えるのに。

とはいえ、”ぼろ布”を会社に持っていくのは気が引けるからしないけど。

いい案なんだけどなぁ。



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