ひとを好きになること
〝白いしるし〟
もう恋なんてきっと一生しないだろうな、と思っているわたしにとっては
ものすごく重たい物語だった。
気付いたら眉間にぐぐっと力が入ってしまって、
休憩して、また眉間にぐぐっの繰り返し。
ここまで他人を好きになれることって本当に素晴らしいことだと思う。
一歩離れたところから、目の前の相手の感情を考えて、
ある程度の距離感になるまで、全然心を開く気になれないわたしが
いつかこんな燃えるような恋ができる日はくるんだろうか?と
結構真剣に悩んでしまうくらい。
好きかもしれないな、からの進み方がもう分からないし
そういえば歴代の元彼たちはほとんど向こうからのアプローチで始まってて
今まで恋愛はしてきたけど、恋はしてこなかったんじゃないかな、と。
夜中の公園で、片想いの相手と好きなものについて語り合う
そんな夜ってすごく素敵で憧れるけど、
現実のわたしは、もう家に帰ろう?暗いし怖いし、もううち来る?とか
憧れとは程遠い発言しちゃって台無しにしちゃいそうだなって。
西加奈子さんの作品の中に入ったときだけ体験できる恋のシーンだった。
恋愛じゃなくて、恋、したいかもしれない。
けど、こんなに自分を見失ってしまうほど好きになるのは怖すぎる、と。
率直に思うような物語だった。
西加奈子さんの世界は独特な甘さで、垣間見える毒々しさが中毒になる。
眉間にぐぐっと力を入れてしまってでも見たい作品たち。
自分を壊したいと思えるほどの相手が現れたときに、
きっと、わたしはこの物語を思い出して読み返すんだと思う。