【読書】鈴木貴之「実験哲学入門」
「実験哲学入門」という本を読んだ。難解ながらも、所々理解できる箇所があり、その部分は面白かった。
例えば、決定論と責任帰属について。明日何が起こるかとかは自然や物理の法則によってすべて決まっていて、人間の意思決定も全て法則によって決まっている世界において、ある人間が何か悪いことを犯したとする。このときその人の責任は問われるべきか。という問いがなされたときは、全部事前に法則で決められているんだから責任は問われないと回答するのに、同様の世界である人がナイフを買ってターゲットとなる人物の家に忍び込み殺人事件を犯したなどのように具体的に記せば、その人には責任が問われるというように人々は認知するらしい。具体的に考えるか抽象的に考えるかによって人々の判断は変わるのだなぁと思った。
もう1つは副作用の悪は意図性を帰属させられるのに、副作用の善は意図性を帰属させられにくいという知見である。例えば、射的で真ん中を狙っていたらそれを外してしまったのだけどかなりレアな商品が当たったというときはそれは偶然だと認識されるのに、威嚇の射撃を行おうと思っていたが偶然相手の心臓に命中してしまったというときはそれは偶然ではないと認識されるといったことである。ポジティブな事象とネガティブな事象とでは、それに対する印象や責任判断は変わるのだなぁと思った。
全体を通して心理学をやっているのか哲学をやっているのか少し分かりにくい、というかコラボレーションの途上なのかもしれないと思わされる1作であった。