
『悲しみよ こんにちは』
セシルは十七歳のあの夏を思い出していた。気楽に恋をする父レイモンと、その恋人エルザと三人でヴァカンスを過ごしていたあの幸せな夏。そこで芽生えた大学生シリルとの恋。そして、ヴァカンスに亡き母の友人アンヌが合流し、父との再婚を宣言したことによって思い立ったある計画のことを…。
『悲しみよ こんにちは』
フランソワーズ・サガン
河野万里子 訳
新潮文庫
何歳で読んでもいい!何歳で読んでもいいこと大前提で10代の時に出会いたかったな……と思った作品。セシルに共感しながら読みたかった。でも10代の時に読んでいたらアンヌの可愛らしさには絶対気づけなかったと思う。
この作品は、アンヌの
「あなたは先のことをほとんど考えないわね?若さの特権だわ」(P150)
というセリフに集約されていると思う。若い、若い、若い。
自分の考えを正しいと思ったり、いややっぱり…と思ったり。その揺れ動く気持ちが若さを表しているような気がする。
その点、アンヌはぶれない。いつだって自分の正しさを信じている。
ただ、アンヌの正しさはいつだって場違いで、やや傲慢。そんなところが不器用でたまらなくかわいく愛おしく感じる。
情景描写は美しく広々としているのに、人間関係はどんどん内に縮こまっていき、その対比に息が詰まりそうになってくる。思わず、せっかくのヴァカンス中なのに、もう早くパリに帰れば?とつっこみそうになる。
ラストは、その結末うんぬんより何より、セシルに一言もの申したくなる。いやいやいやいや、そんな勝手に感傷に浸る道具にしないでよーーー!と。
それにしても、この作品が出版されたときサガンなんと18歳!道理で大人への描写が妙に辛辣で、読んでいるこちらが身につまされる思いをするわけだ。
それにしてもシリルの印象の残らなさといったらないな……いい男のはずなんだけど……?