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1日1作

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デザインサークルDP9内での企画「1日1作」で自分で書いた小説をまとめていきます。いつまで続くかは不明。タイトルは基本的にその日のテーマ。
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#短編小説

怪獣映画

「おまっ、シンゴジラ観てないの!?」
 7月の帰り道、英樹は大声で叫んだ。その声量の上昇速度はあまりにも急激で、俺は思わず耳を塞いだ。
「うるせえなあ。だって公開されたのたしか5年くらい前だろ。俺が小6とかのときじゃん。興味なかった」
「いやいや、年齢とか関係ないって。シンゴジラ観てないとか人生半分損してるぞ」
「でた。「人生半分損してる」ってやつ。そう言うのが全部本当なら、俺は人生10個分くらい

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ペーパークリップ

 岡山駅でのぞみからこだまに乗り換え東京から約4時間、三原で新幹線を降りてまず向かうのはお土産売り場だ。文房具コーナーに足を踏み入れて一通り見渡してみたが、2か月前に東広島に来ていたこともあり目当ての品は見つからなかった。まあ、このくらいはいつものこと。大して落胆することもなく、そのままタクシーに乗って今日の宿になるビジネスホテルに向かった。明日は朝一から昼過ぎまで仕事をして東京に帰ってきたら直帰

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泡立つ

 渋谷の一角にあるその場所は、いつでも芳醇な香りが満ちている。その匂いはまるで、僕のような一見の素人を威圧するかのようだった。それでも彼女のために意を決して某石鹸専門店に足を踏み入れる。店内を満たす香りはますます強く、質量を持って僕を追い立てた。店に入るとすぐに店員の一人が声をかけてきた。物言わぬ匂いと違って、店員の眼差しは僕にここに存在することを許してくれるかのような慈愛に満ちていた。店員の質問

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雨、静脈

 目が覚めると、窓の外から静かな雨音が聞こえた。昨日の夜に見た天気予報はあいにく外れていたようで、気圧に比例して俺の気分も最低値を記録している。そのまま布団で一日を過ごしていたい衝動を抑えながら部屋を出て階段を降りた。
 洗面所に入ると、妹の夏澄が泡だらけの顔をこちらに向けた。何かモゴモゴと声を発すると、一歩下がり俺のために洗面台前のスペースを空けてくれた。水は冷たかったが、温水になるのを待つほど

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 やはり追い立てられるなら夕日が良い。メロスも、夕日を背にして走ったからかっこういいのだ。切羽詰まった絶望と、1日の終わりを暗示する夕日は相性が良く、素晴らしい叙情を生みだす。デスクトップのすみでは、システムのデジタル時計がもうすぐカウントをリセットさせて3時から4時に変わろうとしている。当然ながら、午後ではなく午前、つまり夕日の沈む前ではなく朝日が登る前だ。僕は、自分がまた関係のないことを考え始

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生物研のサークルクラッシャー

 彼女は、W大学生物研究会において畏怖と親しみと呆れを込めて「サークルクラッシャー」と呼ばれている。もちろん、部員からそのように呼ばれていることからもわかる通り、本当にこのサークルの人間関係を崩壊させているわけではない。むしろ彼女と関係を持つことによって、メンバーはある種の連帯感を持ってすらいる。傍から見れば非常に奇妙なこのサークルの雰囲気は、彼女の少し変わった性癖が生み出している。

 彼女、戸

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未開の地

戸内紗璃愛、21歳、大学生。
W大学理学部学生物科学専攻所属。
趣味、フィールドワーク。好きなもの、初めて。

 海はいつだって真新しい。波を作り、飛沫を上げ、常に在り方を変えながら一つの形にとどまることがない。だから私は海が好きだ。正確には海が好きなのではなく、その海原に船で乗り出し、真新しい海を切り裂いて波を作る背徳感が好きだ。
「まだ波ができるのを見てるんですか?」
 後輩のひよりくんがあき

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病み上がり、フランス菓子

 本当だったら、今頃僕は、パティスリーオーサワのカヌレを食べているはずだった。往復30分の道のりを自転車に走らせて、帰りには赤みがかったピンクの紙包みをかごに入れて、家についたら紅茶を淹れる。そんなふうにして、ここ数日の風邪で損した分の満足を取り返しすはずだったのだ。しかしながら今の僕は、体調はそろそろ回復しそうだというのにも関わらず、相変わらずベッドの上で潰れた布団に見をくるんでいる。病み上がり

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