あいさいと

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マガジン

  • 1日1作

    デザインサークルDP9内での企画「1日1作」で自分で書いた小説をまとめていきます。いつまで続くかは不明。タイトルは基本的にその日のテーマ。

最近の記事

ミスタードーナツのドーナツビュッフェはやめた方がいい、マジで

 ここ半年狂ったようにミスタードーナツに通い詰めている。ちょっと作業をするときに私が選ぶのはスタバではなくミスドだ。なにせホットドリンクがお代わりし放題、そして何よりドーナツが安くて美味い。  最近のお気に入りは川崎店。ここはコンセント席があるのだ。そんな川崎店のイチオシメニューこそ、かの苛烈なる拷問ドーナツビュッフェである。  ドーナツビュッフェはその名の通り時間制限でドーナツが食べ放題になるというもので川崎店では60分1800円で提供されている(他の店舗の事情は知らない

    • アドベントカレンダー

      アドベントカレンダー最終日の記事のタイトルがそのものずばりアドベントカレンダー!そんな大上段に構えて大丈夫なのか!? という声が聞こえてきそうですが、特にハードルを越えるつもりもないのでモーマンタイ というわけでアドベントカレンダーのお話です。 みなさんはアドベントカレンダーをご存じでしょうか?いやこの一連の記事ではなく。 実は、記事を持ち回りで投稿するというネット上の文化には、このような元ネタがあるのです。 で、このアドベントカレンダー、私が小学生くらいのときに我が家で

      • 爪痕

        序 雪で塗りつぶされた大地が、春の日差しを浴びて色を取り戻そうとしている。木々を覆いつくしていた白い雪は、すでに色のない水に変わり、ほとんどが姿を消していた。広大な景色の一方の端には針葉樹の森が果てしなく続き、もう一方の端には岩山の断崖が天を衝いている。ぽつりぽつりと解け残った雪は灰色の岩肌に紛れながら、朝日を跳ね返すことで控えめに存在を主張していた。そんな無彩色の隆起の中腹、山の表面が削れたくぼ地に、半球形に枯れ枝と枯葉を編み込んで作った鳥の巣があった。 01 巣には2羽

        • 卒業生へ

          今週、塾で教えている6年生との最後の授業が、あります。最後の授業で、伝えたいことをしっかり伝えられるように、原稿を文章にしてまとめました。これは、私が中学の先生から授かり、今でも自分を支えている気持ちと同じなのだろうと思います。 この最後の授業で卒業する皆さんに伝えたいことは一つだけです。それは、私はみなさんを愛して愛してやまず、みなさんのことが大好きで、みなさんのファンであるということです。 さて、みなさんはこの塾がどういう塾か知っているでしょうか? ここは、実は頭が良

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        • 1日1作
          8本

        記事

          宗教と科学と恨み節

          この記事は、dp9の2022年アドベントカレンダーの14日目、Bizjapanの2022年アドベントカレンダー の16日目の記事です。 12/16追記 もともとDP9のアドベントカレンダーとして出したものでしたが、Bizjapanの方にも投稿いたしました! 大学5年目にしてようやく3年生に進級を果たした今年、卒論の執筆が始まった。とはいえ本格化するのは来年からで、今は関係しそうな本をボチボチ読み始めたという程度。卒論のテーマはルドルフシュタイナーの教育芸術論について。こん

          宗教と科学と恨み節

          孤独の時間

          横浜の小さな劇場で、友人と劇を観た。彼女の方から観たい劇があると誘ってくれたのだ。彼女は私の高校時代の同級生であり、私が人生で唯一焦がれるような恋をした相手であり、そしてそんな私を真正面から振った人である。 劇を観終わったあとは二人で中華街を歩き、駅の近くにある喫茶店に入った。レトロでありながらも黄色いソファーが明るい雰囲気を出していて、秘密基地のようなワクワクするお店だった。 友人はこういう店をたくさん知っていて、そのセンスには二人で出かけるたびにお世話になっている。 劇

          孤独の時間

          ゲーミフィケーションの限界

          塾のバイトで小学3年生の作文を読んでいたのだが、ここ最近2人の生徒に共通する内容があった。それは小学校への疲れである。一人の子は、今までは前日に翌日の準備がしっかりできていたのに、最近は準備する気力が起きず忘れ物が増えたというもの。一人は土曜日はたっぷり寝れるので待ち遠しいというもの。後者は、サラリーマンか!とツッコミたくなりはしたものの、前向きな気持ちが感じられる文章だったし、そのくらいは私も感じてたなという気はする。しかし前者については明らかに悲壮感が仄見えていた。 最近

          ゲーミフィケーションの限界

          マックで隣に座った彼ら

          マックで屁をこいた。それもそれなりに大きな音で。やりたくてやったわけではない。本当は下腹部で存在を主張する尿意ならぬ屁意を、尻の筋肉の繊細な調整によって音を殺して発散させるつもりだった。しかし、深夜の食欲に任せてついさっき注文したものはポテトLで、彼らは文字通り風穴を開けようと、私の少しの油断を待ち構えていたのだ。 店内に響く間延びした破裂音。それは閉店時間が近づき人がまばらな店内のざわつきに、振り返る者もないまま消えていくかに思われた。いや、それは単なる私の願望だった。そ

          マックで隣に座った彼ら

          好きなこと

          私は朝が嫌いだ。褒められたことではないので声を大にして言えないが、朝は眠くて眠くてしょうがない。私は家事が嫌いだ。毎日継続して同じことに取り組むことが私にとっては大変なことで、気づけばシンクには洗い物の山、風呂場には洗濯物の山、床にはほこりと髪の毛の山なんてことがしょっちゅうある。そして、朝の家事が、好きだ。  これは先週の土曜日の話。その日は珍しく六時というかなり早い時間に目が覚めた。我が家のキッチンとリビングは北東を向いていおり、窓ガラス越しに朝日が差し込んでいた。キッチ

          好きなこと

          怪獣映画

          「おまっ、シンゴジラ観てないの!?」  7月の帰り道、英樹は大声で叫んだ。その声量の上昇速度はあまりにも急激で、俺は思わず耳を塞いだ。 「うるせえなあ。だって公開されたのたしか5年くらい前だろ。俺が小6とかのときじゃん。興味なかった」 「いやいや、年齢とか関係ないって。シンゴジラ観てないとか人生半分損してるぞ」 「でた。「人生半分損してる」ってやつ。そう言うのが全部本当なら、俺は人生10個分くらい損してることになるわ」 「なんでもいいからとにかく観ろって。今からうち来て上映会

          ペーパークリップ

           岡山駅でのぞみからこだまに乗り換え東京から約4時間、三原で新幹線を降りてまず向かうのはお土産売り場だ。文房具コーナーに足を踏み入れて一通り見渡してみたが、2か月前に東広島に来ていたこともあり目当ての品は見つからなかった。まあ、このくらいはいつものこと。大して落胆することもなく、そのままタクシーに乗って今日の宿になるビジネスホテルに向かった。明日は朝一から昼過ぎまで仕事をして東京に帰ってきたら直帰していいと上司に言われていたので、夕方にいくつかのお店を回る余裕くらいはあるだろ

          ペーパークリップ

          ゆるキャン△、志摩リンはかわいい。異論は認めない。

          ゆるキャン△の主人公である志摩リンはこの地球上でもっともかわいい生命体です。 異論は許可しますが認めません。絶対に認めません。 理由① やさしい年末にメッセージグループで同級生のちあきにかけた言葉にリンちゃんの優しさが端的に表れています。 同級生のいぬこ、なでしこ、えなの5人のグループと思われるのですが、そこで年末年始の予定を話していました ちあきは年末年始すべてバイトで、冬休みは宿題をやるだけで終わってしまいそうだとぼやいたところほかのメンバーはちゃんと3日程度は休日があ

          ゆるキャン△、志摩リンはかわいい。異論は認めない。

          泡立つ

           渋谷の一角にあるその場所は、いつでも芳醇な香りが満ちている。その匂いはまるで、僕のような一見の素人を威圧するかのようだった。それでも彼女のために意を決して某石鹸専門店に足を踏み入れる。店内を満たす香りはますます強く、質量を持って僕を追い立てた。店に入るとすぐに店員の一人が声をかけてきた。物言わぬ匂いと違って、店員の眼差しは僕にここに存在することを許してくれるかのような慈愛に満ちていた。店員の質問に答えていくと、店員が一つのおすすめを持ってきてくれた。「この石鹸はラベンダーを

          雨、静脈

           目が覚めると、窓の外から静かな雨音が聞こえた。昨日の夜に見た天気予報はあいにく外れていたようで、気圧に比例して俺の気分も最低値を記録している。そのまま布団で一日を過ごしていたい衝動を抑えながら部屋を出て階段を降りた。  洗面所に入ると、妹の夏澄が泡だらけの顔をこちらに向けた。何かモゴモゴと声を発すると、一歩下がり俺のために洗面台前のスペースを空けてくれた。水は冷たかったが、温水になるのを待つほど寒い季節は過ぎつつあり、俺はそのまま顔を洗った。ちらりと妹を見ると顔が泡だらけだ

           やはり追い立てられるなら夕日が良い。メロスも、夕日を背にして走ったからかっこういいのだ。切羽詰まった絶望と、1日の終わりを暗示する夕日は相性が良く、素晴らしい叙情を生みだす。デスクトップのすみでは、システムのデジタル時計がもうすぐカウントをリセットさせて3時から4時に変わろうとしている。当然ながら、午後ではなく午前、つまり夕日の沈む前ではなく朝日が登る前だ。僕は、自分がまた関係のないことを考え始めていることに気づきPCに集中を戻そうと深呼吸をした。すると一緒にあくびも出てき

          生物研のサークルクラッシャー

           彼女は、W大学生物研究会において畏怖と親しみと呆れを込めて「サークルクラッシャー」と呼ばれている。もちろん、部員からそのように呼ばれていることからもわかる通り、本当にこのサークルの人間関係を崩壊させているわけではない。むしろ彼女と関係を持つことによって、メンバーはある種の連帯感を持ってすらいる。傍から見れば非常に奇妙なこのサークルの雰囲気は、彼女の少し変わった性癖が生み出している。  彼女、戸内紗璃愛は、入部して最初の自己紹介で「初めてのものが好きで。まだ誰も踏み入れたこ

          生物研のサークルクラッシャー