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ながーいキャッチコピーはあり?なし?カップ麺の言葉づくり
「うちのカップ麺、新商品なんですけど、なかなか刺さるコピーが出なくて……。」
企画担当者はテーブルにパンフレットを広げた。そこには、麺の太さ、スープのコク、厳選された素材の産地、さらには開発秘話までびっしりと書かれている。
「伝えたいことが多すぎて、どうしても長くなっちゃうんですよね。情報を削るのが怖いんです。削ったら何も伝わらなくなるんじゃないかって……。」
たかしはパッケージを手に取る。
「……結局、何を一番伝えたいんですか?」
「このカップ麺を食べたら、ホッとする。そんな商品なんです。」
たかしは湯気の立つカップ麺を想像する。仕事終わり、夜食、雨の日の昼下がり——。
「……うちのカップ麺は、国産小麦を使った麺が自慢で、スープは12時間じっくり煮込んだダシを使ってて……。」
たかしはしばらく黙っていた。
そして、ふと思いついたように言った。
「じゃあ、こうしましょう。」
『国産小麦100%使用。コシのある麺。12時間煮込んだ極上スープ。特製だしの旨みが口いっぱいに広がる。食べるたびにホッとする一杯——あなたの疲れた心と体をそっと温める。まずは一口、そしてひと息。きっとわかる。これは、ただのカップ麺じゃない。』
いつもとは違って短くない長いキャッチコピー。それでも、担当者の目は輝いていた。
「これなら、伝わる気がします!」
「なら、これでいきましょう。」
たかしは微笑んだ。
——その後、新発売のカップ麺のパッケージには、大きくキャッチコピーが入り、その周りには麺の特徴、スープのこだわり、開発秘話がびっしりと書かれていた。
たかしはコンビニの棚でそれを手に取り、しばらく眺める。
言葉を短く研ぎ澄ますのも手法のひとつ。
でも、伝えたいことを全部詰め込むのも、ひとつの正解かもしれない。
大事なのは、自信を持って市場に提案できること。
コピーに迷うのは当然だ。削るのが怖いのも当然。
でも、何を選び、どう伝えるかを決めるのは、コピーそのものではなく、その商品を生み出した人間の覚悟だ。
たかしはカップ麺を棚に戻し、店を出た。
企画担当者は、自分の言葉を選び取った。
それなら、それでいい。
コピーは、商品とともに生きるものだから。