心和む「ふたり 矢部太郎展」
「ふたり 矢部太郎展」へ行ってきました。
矢部太郎さんといえば、世代的に「電波少年に出ていた芸人さん」のイメージが強かった私。
なので、『大家さんと僕』を初めて読んだ時、こんな素敵なマンガが描ける方なんだと、ビックリしました。
それもそのはず。
矢部さんのお父さんは絵本・紙芝居作家。
小さい頃から手作りのオモチャや、いっしょに工作、創作など、ものを創り出す遊びをいっぱい経験し、子どもに混じって自分も遊んでしまうお父さんに、愛情深く育てられたのですから。
血は争えません。
マンガ家としての才能の芽は、すでにずっと前からお持ちで、それが時を経て、咲くべき花がついに開いたのだと思います。
むしろ、芸人さんとしては繊細すぎるし、優しすぎる方なのでは…。
電波少年、よく頑張ってたよね、と思ってしまいます(笑)
最初は、矢部さんの経歴をまとめたコーナーで、このエリアのみ撮影禁止となってます。
子どもの頃に描いた絵やマンガ、家族新聞など、興味深いものが色々ありました。
もちろん、芸人としてのお仕事も。
人間は傘で空を飛べるのか、の実験映像とか(笑)
最近は、大河ドラマでも活躍していますね。
続いて、『ぼくのお父さん』のコーナー。
何でも絵にしてしまう、やべみつのりさん。
『ぼくのお父さん』でも、ごはんのおかずを絵に描き始めて、おかずが冷めてしまうというエピソードがありました。
お父さんの目線で、矢部さんやお姉さんの成長を、ずっと絵と文で描き残していました。
膨大な量の成長の記録で、とても全部を読み切ることはできませんでしたが、実際はこの何倍も描いているのでしょうね。
本当に愛されて育ったんだなぁ…と、愛情溢れる矢部家を羨ましくさえ感じました。
彼の、ほわっと温かい絵や優しい眼差しは、この家族あってのもので、真似のできない矢部さん独自の味わいになってると思います。
こちらは、『大家さんと僕』のコーナー。
描き下ろしのアクリル画も、たくさん展示されていました。
最後は『楽屋のトナくん』『マンガぼけ日和』『プレゼントでできている』のコーナー。
受付で、展示されている暖簾と公衆電話は手で触れても大丈夫です、と説明があったのですが…
触ってもいいと言われる時点で、何かあるんだなとわかっちゃいますよね(笑)
気になる方は、ぜひめくってみてください。
ぽつんと置かれた公衆電話も、お試しあれ。
手塚治虫文化賞のトロフィーも、飾られていました。
こんな風に細かく指示が入って、何度も手直しして完成させるんだろうなぁ…と、漫画家さんの努力が垣間見えます。
思えば、矢部さんのマンガには、ふたりの関係がよく出てきます。
大家さんと僕、お父さんと太郎ちゃん、老夫婦や仲間…。
みんなでワイワイするのも楽しいけれど、ふたりだけの間に流れる優しい時間や関係性は、より濃くて特別なもの。
かけがえのない想いを積み重ねてゆく、ふたりにしか創れない空間。
年齢とか、性別とか、立場とか、そういう目に見える違いは関係なくて。
まわりの人がどう思おうと、心と心でつながっている、ふたりにしかわからない結びつきがあって。
『大家さんと僕 これから』で、大家さんが亡くなった後にこんなシーンがあります。
ふたりの間には、確かに愛がありました。
口で説明するのは難しいけれど、出会えてよかったとお互いに思える、そんな特別な相手だったのだと感じます。
展覧会のテーマに名付けられた「ふたり」という言葉。
全部を通して見て、とてもしっくりきました。
「ふたり」
そのままでいい。
無理しなくていいんだよ。
いっしょにいて楽しい人と、ふたりでいれば幸せだよ。
そんなことを、言われているような気分になりました。
さてさて。
展覧会後のお楽しみ。
PLAYカフェに寄って、ランチとしましょう。
いつもは、ご飯ものを選ぶのですが、今回はこちらに惹かれてデザートにしてしまいました。
大家さんが好きだった百貨店のレストランで出てきそうな、懐かしい感じの雰囲気。
久しぶりに、こういうの食べました。
イチゴが凍っていて、知らずに思いきりかじった1個目は、衝撃で声無き叫びをあげましたが(笑)
イラスト付きのクッキーは、最後に大事に食べました。