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午後のロードショー「運命の女」


公開 2002年
監督 エイドリアン・ライン
公開当時 ダイアン・レイン37歳 リチャード・ギア52歳 オリヴィエ・マルティネス36歳

原題のUnfaithfulは「不貞」を意味しているそうです。

ダイトル通り、美しき人妻が夫を裏切り、美青年と逢瀬を重ねるという内容です。
女性目線と男性目線で、感想が分かれるかもしれません。

専業主婦のコニーは、夫のエドワードと幼い息子の三人暮らし。平凡だが幸せな家庭を築いていた。
ある日フランス人の美青年ポールと出会い、男女の関係を持ってしまう。
二人の関係はやがて夫エドワードの知る所となり、絶望的な事態へと発展していく…

コニーとエドワードは、二人の俳優の実年齢同様、年齢差のある夫婦の設定なのでしょうか。

経済力のある優しい夫と可愛い息子。
誰もがうらやむ恵まれた家庭があるとはいえ、コニーほどの美女なら、まだまだ自分の人生これで終わらせたくないと思うでしょうね。

偶然出会った美青年、ポール・マーテルの抗いがたい魅力に惹かれ、関係を持ってしまう。

夫のエドワードは本当に妻一筋の愛妻家であり、彼がコニーの浮気を知った時の絶望は見ていて胸が痛くなるほどです。

よくありがちな不倫を扱った映画とはいえ、この作品の持つ官能的な湿度、静かな狂気か醸し出す空気感は独特のものがあります。
リチャード・ギア演じるエドワードは、社会的地位が高く仕事に関してはストイック、でも家庭には仕事のストレスを一切持ち込まず、妻と息子に愛情を注ぐまさに理想的な夫なのです。
エドワードがコニーを見る時の優しさに溢れたキラキラした眼差しで、彼がどれほど妻を愛しているか伝わってきます。
ポールを殺害後、警察が取り調べに来た際、執拗にポールとの関係をコニーに質問する刑事に「もうそのくらいでいいでしょう…」
この期に及んで妻をかばうエドワード。
「僕は家族にすべてを捧げた!本当に殺したかったのは君だ!」
逮捕された後も彼はきっとコニーを世間の冷たい視線から守るため、自らの思い込みによる殺害だと供述するのではないでしょうか。
なんという深い愛情…

結末は悲惨で、コニーは不倫の大きな代償として家族もろ共不幸のどん底にに落ちる事になるのです。

エドワードが罪を償った後、また家族で暮らせるようになったとしても、元通りには決して戻れないでしょうね。
コニーはこの夫を裏切ったことを、生涯後悔するのでしょう。

リチャード・ギアは「背徳の囁き」や「シカゴ」のような鬼畜な役から今作のような優しい夫の役まで、スッと演じられる演技の振り幅の広い俳優なのですね。

ポール・マーテルを演じたオリヴィエ・マルティネスは、フランス人的なアンニュイな雰囲気とワイルドさを合わせ持ち、セクシーで悪魔的な魅力がありますね。
コニーが出会ってすぐに心を全部持っていかれるほどの、説得力のある魔性を秘めています。
コニーを誘うときの手馴れた雰囲気、根っからの女ったらしのワルの役がぴったりハマり、彼をキャスティングしたことで、この映画はもう成功したと言っても良いかもしれません。

午後ローでも度々放送される「S・W・A・T」「テイキング・ライブス」にも出演していますが、彼の持つ魅力を十分に引き出していたという点で、今作が彼の代表作と言えるのではないでしょうか。

ダイアン・レインは罪の意識に囚われながらも、ポールの抗いがたい魅力にはまり、夫を裏切り泥沼へと落ちていく主婦コニーをセクシーに魅力的に演じていました。
初めてポールと関係を持ってしまった時、帰りの電車の中で興奮と罪悪感に震えるコニー。

ポールと出会ってから徐々に服や下着が男好みのセクシーなものに変わって行き、これまで封印してきた女性としての喜びが解き放たれていく過程が描かれています。
ポールとの出会いは、裕福だけど単調な生活には無かったスパイスのようなものだったのでしょうね。
この演技で彼女はアカデミー賞主演女優賞にノミネートされています。
午後ローではカットされていましたが、大胆な濡れ場もあり、まさに体当たりで挑んだ作品といえます。

当初コニー役にはジェニファー・ロペスの名が挙がっていたようなのですが、ラテン系の明るさを持つ彼女より、ダイアン・レインのほうが映画の雰囲気に合っているのではないでしょうか。

昔読んだ本で男性の場合、欲望は「仕事」も「遊び」も「車」も「住居」もグレードアップするのはすべて性欲に直結しており、女性の興味を引くためなのに対し、女性の欲望は多岐にわたっており、性欲、仕事、家庭すべてが一定レベル以上に保たれている事を欲している、と書かれていたのを思いだします。
この本では、女性の欲望を「テトリス」に例えており、「仕事」の空白が埋まると次は「家庭」、その両方が埋まると「承認欲求、性欲」の空白を埋めたくなるのだそうです。
すなわち、すべての欲望が均一に埋まっていいないと満足できないのが女性の特性なのだそうです。

私も同じ女性として、この考え方にはある程度共感できるものがありますが、あくまでコニーのような上流階級の有閑マダムに限って適用される心理ですね。
コニーほど美しく、誰もがうらやむほど欲しいものをすべて持っているのなら、「禁断の果実」につい手を出したくなってしまうものなのでしょうか。

この映画は午後ローで度々放送されるのですが、エロティックかつスリリングであり、いつも最後まで真剣に見てしまいます。
登場人物の感情表現が細やかで、衣食足りて非日常を求める人間の愚かさと哀しさをロマンティックに官能的に描いた作品と言えます。

今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。

総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★★★
流し見許容度★★
午後ロー親和性★★★★★

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