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午後のロードショー「アトミック・ブロンド」
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公開 2017年
監督 デヴィッド・リーチ
公開当時 シャーリーズ・セロン(42歳) ジェームズ・マカヴォイ(38歳) ソフィア・プテラ(35歳)
世界3大諜報機関CIA KGB MI6が三つ巴の戦いを繰り広げるスパイ・アクションなのですが、正直、内容などはどうでも良くひたすらシャーリーズ・セロンを鑑賞するための作品です。
華奢な女性が男をバッタバッタとなぎ倒すアンジェリーナ・ジョリーの「ソルト」のような嘘くさいアクションとは一線を画す、生身の肉体を感じるリアリティのあるアクションを見せており、彼女の本作に対する意気込みが感じられます。
あの細身でゴツい男共と互角に戦うというのはやはり非現実的ではありますが、177センチの長身から繰り出すキックやパンチは迫力がありアクション映えしますね。
「鉄の女」と呼びたくなるくらい、氷のように冷たいクールな魅力が最大限に引き出されています。
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イギリス諜報部員の女スパイが、東西冷戦末期にベルリンに派遣される。
極秘リスト奪還を命じられ、仲間と共に追跡する任務を与えられるが、彼女には特別な裏ミッションが与えられていた…
ロレーンのキャラクターはダニエル・クレイグのジェームズ・ボンドをそのまま女性に上書きしたようなハードボイルドさがあります。
舞台は寒々とした冬のベルリンで、夜のネオンに透けるロレーンのホワイトブロンドは美しく、ファッションもスタイリッシュです。
ただ諜報部員にしては少し目立ちすぎますね。
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長い手足を伸ばし、氷の浴槽に身を沈めるロレーン。
彼女の肉体は傷つきあざだらけなのです。
疲れ切った顔からはバトルの過酷さが滲み出ています。
部屋でウォッカを飲んでくつろいでいる時のだるーんとしたアンニュイな部屋着姿も良いですね。
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長回しのワンカットで見せる肉弾戦は重量感があり、生身の肉体を感じます。
男相手にガチバトルを繰り広げるロレーンは、昭和の女子プロレスの外国人レスラーを彷彿とさせます。
「アトミック・ブロンド」というのもリングネームのようですね。
ジョージ・マイケルの「ファザー・フィギュア」など80年代の音楽が効果的に使われています。
私の世代から言えば、すべて青春時代に嫌というほど聞いた曲ばかりで当時の記憶が蘇ります。
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フランスの諜報部員でロレーンと関係を持つデルフィーヌの役を「ザ・マミー」や「キングスマン」に出演したソフィア・ブテラが演じています。
ロレーンとの激しいラブシーンもあり、彼女のエキゾチックで個性的なルックスが作品にアクセントを与えています。
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本作はネットの感想などでジェニファー・ローレンス主演「レッド・スパロー」と比較されることが多いようです。
シャーリーズ・セロンとジェニファー・ローレンス、二人とも当代きっての華のある演技派女優だからでしょうか。
「レッド・スパロー」のドミニカは徹底して「女」を武器にした諜報戦術を叩きこまれるのですが、ロレーンは美しい外見を持っているのにもかかわらずクールで無愛想、男相手に女性の武器はほとんど使っていないように見えます。
「黒幕は誰だ」系の、最後にオチがある展開なのですが、ロレーンのアクションに目を奪われている間にストーリーを追えなくなってしまい、終盤は誰が誰だかわからなくなってしまいます。
戦いを終えたロレーンは飛行機でアメリカに戻る…
ラストはハッピーエンド風に終わりますが、もっと余韻を残した方が本作の雰囲気に合っていたと思います。
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女性がヒロインのスパイアクションは、最終的に女性の弱さが浮き彫りになることが多く、内容が重くなりがちですね。
彼女は本作の製作にも携わっており、年齢的にもおそらく最後の本格アクションの覚悟で挑んだのではないでしょうか。
徹底的にリアリティにこだわった演出で、他の女性スパイ映画と一線を画したいという彼女の想いを感じます。
女性がヒロインのスパイ映画にひとつの歴史を刻んだ作品と言えるかもしれません。
今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。
総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★
流し見許容度★★
午後ロー親和性★