漆の思い出
それが漆の匂いだったとわかったのは大人になってだいぶたった頃でした。
夏休み、よく祖父の事務所で過ごしていました。
地方都市の繁華街と言われる場所の雑居ビルの二階。
隣はウインナーコーヒーが評判の喫茶店、一階は知る人ぞ知るオムレツの有名なビストロ。
祖父の仕事は知りませんでしたが
時々人がやってきて、囲碁や将棋をしながら話をしていたように思います。
いつも独特な匂いがするし、色々な大人がやってくるので、私は事務所の近くにある博物館や美術館、歴史資料館やプラネタリウムをフラフラ日替わりで遊び歩いていました。
お陰様で歴史や美術や星座に詳しい子に育ちました。
それはさておき。
祖父が亡くなってだいぶ経ってから祖父は郷中教育の指南役というか取りまとめというか何かそういう事をしていたと言う事を知りました。
侍の時代からまだまだ続いていたんだなぁということも最近気が付きました。
確かに今思えば伝統文化的な行事に良く一緒に連れて行ってもらってたなぁ。
それらが何か誰か教えてくれたら良かったのに……
そして祖父の事務所の独特な匂い。
あれは漆の匂いだったんだなぁと、ほんとに最近気が付きました。
当たり前にそこにあった物は、何も考えなければ指の間からこぼれる砂と同じようにサラサラと消えてなくなる。
生きている間に色々聞けば良かったと、最近特に思ったりします。
本当に大切なものは身近にあり過ぎて軽い。
軽いから沢山持てるはずなのに、軽くて見過ごしてしまうことのほうが多いように思える。
失って初めて、大切な事に気がつくのは人の常なのですけどね。
さてさて。
そんな漆を使った棗についての講座が7月28日にございます。
📝《みんなの茶の湯講座『茶の湯と棗①』》
薄茶器の代名詞「棗」!
棗の歴史に至る序章として、今回は縄文以来の長い歴史を持つ「漆文化」が、いかにして発展し、茶の湯文化の中に取り入れられてきたのかに迫ります!
各回完結なので、どの回からでもご参加いただけます♪
・日時 7月28日(日)
①14:00〜15:10 ②15:20〜16:30
・場所 GINZA FOREST 2F 白いハコ
・参加費 3000円(抹茶+和菓子付き)
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