小学校入学式ーー〝親子分離〟の60分
「パパとおなじふくをきるよ」
2023年2月下旬に臨んだ、進学先の小学校における個別面談でのこと。入学後の付き添い登校を許可してもらった際、さらに「入学式の前日に〝予行演習〟を行いましょうか」との提案もいただきました。
※個別面談の様子とそれに至った経緯はこちら ↓
〝予行演習〟という意味は、入学式の準備が整った会場(体育館)を見学し、1日の流れをあらかじめ息子が認識できるようにしてはどうかとの配慮で、僕も「ぜひお願いします」と答えました。
入学式前日の夕刻。僕と妻と息子、娘も連れて学校へ伺いました。いすが並び、横断幕が張られた会場(体育館)を見学。1日の流れを、新年度の担任の先生が説明してくれ、学校をあとにしました。
入学に向かっては、息子が気に入ったランドセルをはじめ、文具などもそろえ、さまざま準備してきました。
ただ、服装については、幼稚園の卒園式も私服で参加した息子なので、正装を無理強いするのも違う気がして、あやふやになったまま、本番前日になってしまいました。
※卒園式の息子の様子と、僕が感じた思いはこちら ↓
〝一応、服装をどうするか、息子と確認だけはしておこう〟と思い、帰り道の車中で、息子に言いました。
「明日の入学式は、卒園式の時みたいに、好きな服でいいよ。気に入ってるポロシャツとか着て行くなら、パパもポロシャツで行くからねー」
すると、息子からは、こんな答えが返ってきました。
「あしたは、パパとおなじふくをきるよ。おなじいろのネクタイがしたい。でも、ワッペンがないやつがいい」
つまり、正装で行くというのです。
〝式典のスタイルに合わせてくれるなら、ありがたいな〟と思いつつ、同時に、少し焦りました。
実は、僕が30年余り前に入学式で着たジャケットが残っていて、正装ならそれを着てもらおうと思い、息子にも、ちらっと見せていたのです。(ズボンだけは、一応買ってありました)
〝今からジャケットを買いに行っても、帰りが遅くなったら、興奮して寝付けず、翌日の入学式に影響するのでは?〟。あとは単純に〝今から買いに行くのは少し疲れるなあ〟とも思いました。
うーん、と悩んでいたところ、2月下旬に「子ども家庭支援センター」へ行った時のことを思い出しました。(同センターは、東京の区市町村にある、育児・子育てに関する悩みを聞いてくれるところです。息子が不登園になって以来、折に触れ、子育ての相談をしていました)
その日は、冒頭に書いた小学校の個別面談の数日前で、進学に際してのアドバイスを求めに行きました。相談員の方は、僕の話を聞きつつ、こう話してくれました。
がっちりと新たな環境にハマる(なじむ)。
どうなるかは分かりませんが、〝誰よりも息子自身が、小学校にハマろうとしているのではないか〟――入学式に正装で行くという発言は、その表れのようにも思えました。そして、近くの洋服店に立ち寄ることにしました。
迎えた、入学式当日。
出入り口で受け付けを済ませ、息子と別れました。
上級生のお兄さんに案内され、控え場所の教室へ向かっていく息子。こちらを振り返らなかったことに、安心しました。
これから、約60分間、息子には、親と離れた時間が続きます。
療育の教室では、〝親子分離〟して一人で居られた最長時間は25分。幼稚園の卒園式も、長時間の式典に参加したものの、常に顔の見える場所にママ(妻)がいました。
〝一人で大丈夫だろうか〟
そわそわしながら、会場の体育館に移動し、保護者席に座ります。幸いなことに、保護者席は、新入生の席の右手にあり、子どもの目に入る位置でした。前日から、息子の座る位置を把握していたこともあり、息子から見て右斜め前の席を確保しました。〝これなら、不安になっても僕らのことが目に入るはず〟
間もなく、新入生が列をつくり、上級生のお兄さんお姉さんと手をつないで入場してきました。列の中に息子の姿を見つけると、笑顔が見えたので、ホッとしました。
着席して間もなく、式典が始まりました。息子が首を回したり、ひざを動かしたりするたびに、僕も首を伸ばして〝ここにいるよ〟と合図を送ります。
何回目かのやり取りで、息子は首を左右にふり、口を動かしました。
〝ま、ま、は、ど、こ〟
妻は、式典に飽きた3歳の娘をあやすために、一時、席を外していたのです。
〝も、う、す、ぐ〟とだけ、僕からも、口の動きで伝えました。
式典終了まで、いすに座り続けた息子。みんなと一緒に退場し、10分後、保護者を交えた記念撮影のため、体育館に戻ってきました。緊張が解けたと見えて、家族のもとに走ってきました。
入学式の後は、お祝いに、ファミレスでハンバーグを食べました。
息子は、教室で席が隣になった男の子と、もう一人別の男の子とも「なかよくなった」と教えてくれました。
僕が考えるよりもずっと、息子は頼もしい人なのだと、あらためて感じさせられました。
そして翌日から、いよいよ付き添い登校がスタートしました。
(つづく)
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