レジェンド・オブ ぬし
ぬしさま。
ぬしさまは、我が母親の積年の願いにより、わが家にやってまいりました。
母親は、猫が飼える状況になれば、「保護猫」と、
「純血猫」を飼いたいものだと、常々願っていたそうでございます。
ぬしさまが産まれた時は、まだインターネットだけの生き物の売り買いが可能な時期でありました。
今は、絶対に対面式で、ないと、生き物の移動はできないようになっています。
母親が、燃える眼差しでインターネットの画面を眺めるかたわらで、私もあなた様の写真を眺めておりました。漫画や映画の中などで、お屋敷みたいな場所でしか見たことないふわふわの白い毛の青い瞳の子猫が並んでいました。お値段も、今、思えば、大卒の新入社員の給料より高かったように記憶しておりまする。
「わしを選べ。」
あなたさまの他を威圧するような眼差しが印象的でございました。
「わしを選ばないなら、貞子をきさまの家に派遣する。」
そんなメッセージをわが家は受け取り、ぬしさまには、飛行機にて、移動していただくことになりました。
今、思えば、空港に着いたその瞬間から、ぬしさまは「天下統一」への道筋を考えておられたのだろうと思いまする。
インターネットで学習したぬしさまの性質は、
「ラグドールは、『ぬいぐるみ』という異名を持つ、おとなしく、穏やかな猫で、毎日のお手入れは欠かさずにやりましょう」でありました。
しかし、抱っこしょうとすると、
「不快じゃ!触るでない!」
ご飯の時間じゃなくても
「これ!そこな女!飯を持て!」
と、何デシベルかわからないような通るかん高い声で鳴いておられました。
いつも、我々家臣を万引きGメンみたいな険しい眼差しで見渡し、
猫トイレが汚れているのを見過ごしていたら、
「仕事は探してせよ!言われた仕事だけしかせぬのは、雑兵じゃ!」
と、叱責され、
厳しい試験に戦々恐々としていたら、
「臆病者の目には、敵は常に大軍に見えるものじゃ!」
と、激を飛ばされ、そのたびに、
「恐れ入りまする」
と、感じ入った場面が、思い出されまする。
わが君、ぬしさまも、齢18に今年は、なりますれば、ますますの絶対のご健勝と、ご多幸を祈りたく、ぬしさまに、そう、申し上げますと、
「絶対は、絶対に無い!!」
と、キャットタワーの上から、カリカリ飛ばされながら、言われてしまうことでしょう。
今年も、猫の日がやってまいりまするが、実家は毎日ヌシの日だそうでございまする。
世界中のヌシさまが幸せになりますように。