【通勤映画館】西荻窪 三ツ星洋酒堂|人生の迷い人がひと休みするBar
西荻窪の小さなBar「三ツ星洋酒堂」を舞台にしたヒューマンドラマとしてスマッシュヒットを飛ばした本作。いつもは車内で一人DVDを鑑賞する私だが、これはおもしろいものを掘り当てた! と妻にも観ることを強要したほどである。
このバーを訪れる日替わりの客と、バーテンダー雨宮(町田啓太)との対話が物語の骨子。雨宮がカクテル言葉とともに提供する色とりどりのカクテルと、人生に迷い込んだ客の問題解決が都会的でさわやかだ。
さて、この作品が深夜放送ながら、これほど人気を博した理由はなんなのか。少し考えてみたい。
よく練られた設定、舞台装置の優秀さ
ストーリーの作りは『深夜食堂』を彷彿とさせるが、そこに訳ありイケメン三人がからむことで唯一無二の空間を演出している。
オーナーの森崎(役名は省きます、以下同)は書けなくなった小説家。夜中にバーに現れて、いつもの席でスコッチをあおります。亡くなった彼の祖父が先代オーナーというだけで、こいつは働いていない。気が短く、客に向かって暴言を吐くことも日常(それが的を射ているのが悔しい)。
シェフ藤原は味覚障害に陥った元フレンチの料理人。職業柄、絶望的な窮地となったが、この店の「缶詰をメインにした料理」なら作れるだろう(味は決まっているのだから)という町田の提案でここで働くことに。ちなみにこの三人は顔を知っていただけの高校の同級生だ。
一番まともに見える町田は先代オーナーに悩みを聞いてもらっていた過去をもつ元客。カクテルの知識と技をどこで身に着けたのかという説明はない(なかったはず)。仕事帰りには黒塗りの車が迎えに来ているという謎のブルジョワだが、故に悩みは深そうだ。
カクテルのほかにもうひとつ傑出した仕掛けとして欠かせないのが前述した缶詰。店の壁一面に積み上げられたそれは、先代が各国から集めた貴重な品なのだが、「この缶詰がなくなったら店を閉める」と頑なな森崎(働いていないくせに)。こうしてひと夏の海の家みたく、時限装置まで積んだ見事な舞台装置が完成しているのである。
いきいきと演技をするドラマ初主演の町田
町田のバーテンダーがとにかく様になっている。もうはまり役だ。青年のなかに少年の輝きがまだきらめいている。ちなみに彼は34歳。ドラマ初主演とのことだが、これまで役に恵まれていなかったのか。彼のキャスティングに関係者は自信をもっていたことだろう。
彼のファンになってしまった私は出演作を物色中。唐沢寿明 主演の『フィクサーSeason1~3』で見つけた。こちらでは企みに巻き込まれる、正義感あふれる新聞記者を演じている。手足が長くて格好いい。
こんなバーが近くにあったらな、と思わせてしまうこの店。あえて文句をつけるとしたら、店名がかみやすい(言いにくい)点と、店の照明が明るすぎる点だろうか(もう少し暗くした方が雰囲気出るのにな)。
訳ありの訪問者が、止まり木に佇んでひとときの酒を嗜む。昔からある都会の夜の風景が、洋酒に彩られて現代風にアレンジされ、ライムの効いたジンソーダのような後味を残します。
ああ、雰囲気のいいバーで酒を飲みたい。町田のようなおせっかいぎりぎりのホスピタリティあふれるサービスをするバーテンダー、あなたの街にはいるでしょうか?
追伸。
西荻窪、と検索すると本作品名が出るほどの人気ぶり。ネクストワードには「続編」の文字が踊っています。ファンからの熱い期待が感じられますが、原作の漫画は21話でストップしているようです(最終回ではない)。この三人の物語、私も続編がぜひ観てみたいです。
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