なんでもない一日って宝物のような一日なんだな。
ミニチュア作家のいわなり ちさとです。
紹介した作品は販売します。気軽にお問い合わせください。
noteのお友達Kaoriさんが紹介していた本を読んでみました。
最初の2冊の感想はKaoriさんに直接伝えたので、ここでは去年発行された「永遠と横道世之介」について書こうと思います。
作者の吉田修一さんの作品は「怒り」を最初に読みました。暗い話だったので、次を読もうという気にならないままでしたから、教えてもらってよかったなぁと思います。まったく違う作風に驚きました。
こんなに幅広い作家は珍しいなと思います。この作品を知らなかったら硬派の事件を追う作家だと決めつけていたことでしょう。
人の第一印象と同じで作品も初めて接した作品の印象で作家を判断しかねないのだなと反省しました。もったいないことをするところでした。
ふと出会った人にカメラを貸してもらい、佳作になった賞の審査員だったプロカメラマンの仕事場に助手として通いだして、世之介もカメラマンになっていました。
縁というものは実はそこここに転がっていて、それをつかんだ人だけが次のステップに上がっていくんだなぁと感じました。
世之介という人は不器用だけど、近くにいる人に寄り添い、助けようと生きてきた人。
作中、ブータンから来た男性が輪廻についてこう語ります。
そして、その言葉をかみしめた世之介は同じ下宿にいる引きこもりの男の子の”人間ってなんで生まれてくるんですかねえ”という問いにこう答えます。
最後の”い、以上ですが”という締めくくりの仕方が世之介そのものなんです。作品を読むとわかります。
私もご褒美に生まれてきたんだなと思うと幸せになります。そして、人を愛して暮らしていきたいと思いました。
泣きたくなるほどの幸福感。
彼は事故で亡くなるのですが、その場面は描かれていません。
でも、15年後という最後の章で、引きこもりだったさっきの男の子が人気絵本作家になっていて、世之介と一緒に住んだ下宿で雑誌のインタビューを受けるシーンがあります。
そこで世之介という人はどんな人だったんですか?と問われ、作家になった男の子はこういいます。
この年になるまで、人として、ミニチュア作家として忙しくしてきました。
眉間にしわを寄せて活動してきたのを、ある人に言われて悟り、しわを寄せない生き方を目指すようになりました。
気持ちを変えると眉間のしわは消えるんですね。世之介のいうリラックスができるわけです。これも本作を読んだらわかることです。
この作品を読んで、この暑い暑い夏を越して、私はなんでもない一日を生き延びただけでいいんだと納得しました。
だって、人に生まれたことこそがご褒美なんですもん。
そして、カメラマンとしての自分のことを世之介がこう言っていました。
私もミニチュアに出会えて勝ち組なんだなぁ。
だから、もう上を目指そうとあがくのではなく、今を見据えてじっくりゆっくり活動していけばいいんだねと思いました。
振り返ると一番いい時にこの作品に出会うことができました。
きっとkaoriさんと私は前世に出会ってたんじゃないかなと思う巡り合わせ。
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