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【作品#52】「自伝小説Ⅱ」『恋愛 コレクションⅡ』より

こんにちは、三太です。
 
10月最終週となりました。
ついにアメリカのプロバスケリーグ、NBAが開幕しましたね。
今シーズンはグリズリーズに入団した河村勇輝選手が話題となっています。
それほどチャンスは多くないかもしれませんが、ぜひ訪れたチャンスを生かして、本契約をつかみ取ってほしいです。 

では、今回は『恋愛 コレクションⅡ』の「自伝小説Ⅱ」を読んでいきます。
『恋愛 コレクションⅡ』は吉田修一さんの個人全集全四巻の二巻目にあたります。

初出年は2019年(11月)です。

文藝春秋の『恋愛 コレクションⅡ』で読みました。


あらすじ

タイトルにあるように自伝を思わせる小説。
今回は語り手の名前は出てきませんでしたが、連作として考えるなら語り手の名前は(修一ではなく)秀一。

今回は「死」がテーマでした。
人の死に初めて向き合った、母方の祖父の葬式。
近所に住んでいて、よく面倒を見てくれた笑顔の素敵な「光一兄ちゃん」の首つり自殺。
「長崎大水害」で亡くなった友達の母親である、スナックのママさん。

これらの「死」を通して、秀一の少年時代の様子や長崎という町が描かれていました。

出てくる映画(ページ数)

①「神様のくれた赤ん坊」(p.625) 

長崎の丸山は言わずと知れた色街で、江戸の吉原、京都の島原とともに三大遊郭と呼ばれていた時期もある。とはいえ、同級生たちも多く暮らし、普段から遊び回っていたこの界隈がそのような街だったと知ったのは、前田陽一監督で桃井かおりさんが主演した『神さまのくれた赤ん坊』という映画からだった。今、調べてみると、公開が一九七九年とあり、もし見たとしても、二番館での別の作品との同時上映だったと思われるので、見たのは小学校を卒業するか中学に入ったばかりのころになるだろうか。
映画には見慣れた石畳の坂道が出てきた。仲の良い同級生たちの家も映っている。その建物が以前は妓楼であり、女たちが色を売っていたという。 

今回は1作ありました。 

感想

死を悲しいものと考えた場合、確かにそのような感情になりそうな話なのですが、そうとも言い切れない、一言では言い尽くせない思いがありました。(まあだからこそ小説として表現されていると思うのですが)
例えば、祖父の葬式でのヤンチャなおじさんの振る舞いであったり、光一兄ちゃんが見せる素敵な笑顔であったり、大水害が去った後の長崎の町を歩く少年たちの様子であったり・・・。
悲しさとともにある日常というか、現実って一つの感情で簡単に言い表せないよなという当たり前の感覚がありました。

今回一つだけ「神様のくれた赤ん坊」という映画が出てきます。
秀一少年は中学校にあがるぐらいの年にこの映画を見たようです。
そして、そのときの記憶をもとに映画のあるワンシーンが語られるのですが、本当にそのシーンがあったかどうかは定かではないらしく、自分でも確認されていないようです。(本当に描かれていたものよりも、記憶にあるもののほうが重要だという考えから)
そのような考えからは少し野暮かもしれませんが、その映画を見て確認してみたいと思いますし、それは少し楽しみです。

生も死も一直線上秋時雨

以上で、「自伝小説Ⅱ」の紹介は終わります。
今回は少年時代の「死」がテーマでした。

それでは読んでいただき、ありがとうございました!

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