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【映画#96】「ブエノスアイレス」『小説「怒り」と映画「怒り」』より
こんにちは、三太です。
今週末に渡邊英理先生の朝日カルチャーセンターの講演を受講します。
取り上げられる作家は中上健次。
私はそれほどたくさん中上健次作品を読んでいるわけではないですが、その分しっかりと勉強していきたいと思っています。
とりあえず『十九歳の地図』を読もうと思っている今日この頃です。
では、今日は閑話休題として「ブエノスアイレス」を見ていきます。
前回の記事でも書いていたように、妻夫木聡さんが映画「怒り」でゲイ役の藤田優馬を演じる時に参考にした映画です。
基本情報
監督:ウォン・カーウァイ
出演者:ファイ(トニー・レオン)
ウィン(レスリー・チャン)
チャン(チャン・チェン)
上映時間:1時間35分
公開:1997年
あらすじ
ケンカ別れを繰り返していた香港人のゲイのカップル、ファイとウィン。
映画は主にトニー・レオン演じるファイを語り手として進行します。
![](https://assets.st-note.com/img/1699218273601-1UPkYR6TWH.jpg?width=1200)
二人はもう一度やり直すため、アルゼンチンのブエノスアイレスへ向かいます。
そこで車を借り、イグアスの滝へ向かおうとするのですが、道中でまたもやケンカ。
二人はブエノスアイレスで別れます。
しかし、香港に帰るお金がなく、しばらくブエノスアイレスで働くことを余儀なくされます。
ファイがドアマンとしてバーで働いていると、別の男性と一緒にウィンが現れます。
別れて吹っ切れたと思っていた二人でしたが、やはりお互いを忘れられず、またまたあることがきっかけでよりを戻します。
しかし、そんな二人の間にある別の男性が現れて・・・。
ファイはある決断をします。
1995年からの約2年間のブエノスアイレスでの物語。
設定
・ゲイの恋愛
・三角関係
・タバコをよく吸う
感想
ファイとウィンの二人の関係性はどちらかというとウィンが迷惑をかけているけれど、結局お互いに求めずにはいられないという関係です。
けれども、物語が進行する中で、ファイはウィン以外にも良い人はいるということに気付いたのかなと思いました。
それでも最後までチャンと付き合わなかったのは、最低限のウィンへのけじめのつけ方だったのかもしれません。
この映画では小道具としてタバコが鍵になっているように思えました。
ケンカ別れをしていたファイとウィンがやり直すときに、ファイが吸っていたタバコをウィンが吸うシーンがありました。
タバコが二人をつないでいます。
また、夜にタバコを買うと言って家から出ていくウィンを、(ファイはウィンが男と会っているのではないかと疑っています)ファイがつなぎとめる為にタバコを並べるシーンがあります。
はじめウィンはこのタバコを部屋に投げ捨てます。
しかし、ファイと離れ離れになって、家でファイの帰りを待つウィンが今度は逆にタバコを揃えておいているのです。
ファイとウィンの二人をつなぐ道具としてタバコが機能しているように思いました。
たばこ干すブエノスアイレス二人組
その他
・モノクロとカラーを行き来する
・ウィキペディアより
→第50回カンヌ国際映画祭監督賞。
ちなみにこの年のパルムドールが「桜桃の味」と「うなぎ」
ウォン・カーウァイ監督は「恋する惑星」の監督でもある。
この映画にはトニー・レオンも出演。
また、トニー・レオンは「悲情城市」に耳の聞こえない青年役で出演。
チャン・チェンは「牯嶺街少年殺人事件」に主役として出演。
これまで見てきた映画と色々なところでつながりがありました。
『小説「怒り」と映画「怒り」』内の「ブエノスアイレス」登場シーン
妻夫木 二人のシーン(直人役の綾野剛さんと優馬役の妻夫木聡さん―三太注)のリハーサルをした時に、李さんに「二人ともゲイに見えない。ただ芸能人同士が飯食っているだけにしか見えない」と言われて。それでリハーサルをやめて、映画の『ブエノスアイレス』をみんなで一緒に観たりもしたんです。でもまだ入り込めた気がしないので、結局、剛と、「じゃあ・・・一緒に住むか」と。『悪人』の時の深津さんと一緒で、剛も受け入れてくれたんです。
これは吉田修一さんと妻夫木聡さんの対談中に出てくる発言です。
役作りにかける俳優の見えざる努力というのが少し垣間見える瞬間でもあります。
ただ、ここからわかるのは結局「ブエノスアイレス」を見ても、まだ入りこめなかったということです。
やっぱり頭だけでなく、体感としてゲイの感覚をつかんでいくということが必要だったのでしょう。
けれども、私からしたら「ブエノスアイレス」のウィンとファイ、「怒り」の優馬と直人の雰囲気はとても似ていたようにも思えましたが・・・。
以上で、「ブエノスアイレス」については終わります。
イグアスの滝、タバコ、チャンの耳がよいという特徴など読み解きたくなる仕掛けに満ちた映画でした。
それでは、読んでいただき、ありがとうございました。