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【作品#53(26・27の間)】「ストロベリーソウル」『犯罪 コレクションⅢ』より

こんにちは、三太です。
 
11月も中旬となり、期末考査まで2週間を切りました。
これが終わると、面談、終業式、そしてクリスマス、お正月と一気に2024年終盤を駆け抜けていくことになります。
あと1ヶ月半の2024年をしっかり味わっていきたいと思っている今日この頃です。

では、今回は吉田修一さんの個人全集全四巻の三巻目にあたる『犯罪 コレクションⅢ』の単行本未収録作「ストロベリーソウル」を読んでいきます。

初出年は2010年(3月)です。
これまで紹介した作品で言うと『横道世之介』と『空の冒険』の間に書かれた作品です。

文藝春秋の『犯罪 コレクションⅢ』で読みました。


あらすじ

韓国のスケートリンク場でバイトをする少年クァンドン
両親はアメリカにおり、伯母の家で伯母との二人暮らし。
クァンドンがバイト中にリンク上で見かけた赤い練習着を着た少女、ジウォンへの淡い恋心。
伯母にできた新たなパートナーと二人暮らしへの大きな影響。
なんとか成り立っていたクァンドンの生活が徐々に綻びを見せ始めます。

単行本未収録の作品。

出てくる映画(ページ数)

今回は1作もありませんでした。 

感想

色々とうまくいかない感じを、「苺」がうまく包んでいきました。
この「苺」は物語の冒頭と結末に象徴的に使われます。

「苺」もそうなのですが、途中「夢」の話も出てきて、それらが組み合わさり、どこか幻想的な雰囲気のある話でもありました。
クァンドンには自分の家族も含めてうまくいっていないこと(あるいはうまくいかなくなること)がいくつかあります。

①    アメリカでの生活。
クァンドンの両親は遠縁の親戚の誘いもあり、豊かな生活を求めて、クァンドンも引き連れアメリカのロサンゼルスに向かいます。けれども親戚が話していた店舗の職にはつけず、厳しい生活を迫られます。三年ほどたって「あなただけ先に韓国に帰って」と両親に言われ、クァンドンは伯母と二人暮らしをしているのです。

②    夜間学校への転入。
両親がクァンドンを韓国に帰らせた理由の一つには、学校に通わせるということがありました。しかし、クァンドンはスケートリンク場でバイトをするだけで、なかなか転入の手続きをしません。母親にそこを厳しく迫られる場面が出てきます。

③    ジウォンへの恋。
クァンドンはバイト中に見かけたジウォンに惹かれます。ジウォンは赤い練習着を着た少女。周りの少女がどんどん上達していくなか、なかなかうまくならずに、むしろ体が重くなっていくような感じもあります。クァンドンとジウォンは少し話す機会も出てくるのですが、いつの日からかジウォンが練習に顔を見せなくなるのです。

④    伯母の結婚への意思。
伯母は未婚の人で、クァンドンにも世話を焼いてくれるとても良い人です。しかし、ある日突然男が家に現れ、同居をし始めます。話を聞く感じでは、バツイチの男性かというところですが、伯母は詳しいことはあまり話してくれません。その男は普段は特に何もないのですが、酔ったら何をするかわからないところもあります。そして、男と伯母は二人での生活について、クァンドンに聞こえないように(けれど家が小さくて聞こえてしまうのですが)話をし始めます。

このような色んなズレみたいなものが若いクァンドンを襲い、最後に破局を迎えます。
この作品が入っているのは『犯罪 コレクションⅢ』なので、そのオチは犯罪に関わるか考えてみたのですが、どこか幻想的で、夢のようでもあり、その持っていき方が巧みな作品でもありました。
苺のファチェを食べたいです。

赤い練習着ソウルのスケーター

以上で、「ストロベリーソウル」の紹介は終わります。
ソウルを舞台にした幻想的な作品でした。

それでは、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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