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【作品#11】『東京湾景』
こんにちは、三太です。
過ごしやすい気候の日が増えてきました。
先日、学校の校外学習があったのですが、空は晴れ渡り、気温は暑すぎず、寒すぎず、街を歩いているだけで幸せな気分になりました。
こんな感覚は久しぶりでした。
これまでずっとコロナ禍だったというのもあるかもしれません。
では、今回は『東京湾景』を読んでいきます。
初出年は2003年(10月)です。
新潮文庫の『東京湾景』で読みました。
あらすじ
東京湾をはさんで向かい合う、品川埠頭とお台場。
その品川埠頭で働く亮介、お台場で働く美緒(涼子)が出会い系サイトを通じて出会います。
二人はそれぞれに自分の信じたい愛の形がありますが、それを信じ切れずにいます。
そんな二人の視点を行きつ戻りつしながら、二人の愛の形が描かれていきます。
小説内に同じ『東京湾景』という小説を描く青山ほたるという人物も描かれていて、面白い設定となっています。
一応、文庫の裏表紙の紹介文も載せておきます。
品川の貨物倉庫で働く亮介は25歳の誕生日、出会いサイトでOLの<涼子>と知り合った。どんな愛にも終わりは来るとうそぶく亮介と、愛の力を疑いながら、でもどこかで信じたい(涼子)。嘘と不安を隠し、身体を重ねるふたりは、やがて押し寄せる淋しさと愛おしさに戸惑う・・・。東京湾に向き合った、品川埠頭とお台場に展開する愛の名作に、その後を描く短編「東京湾景・立夏」を増補した新装新版。
出てくる映画(ページ数)
①『モンスーン・ウェディング』(p.45)
二度目のデートで、あまり興味もなかった『モンスーン・ウェディング』というインド映画を観た帰り道、亮介は思い切ってこの気持ちを告げた。
②『砂丘』
③『日蝕』=邦題『太陽はひとりぼっち』(p.251)
美緒は受話器を肩に挟みながら、シーツを剝がし始めた。「誘ってくれるのは嬉しいんだけど、何度も言うように私には・・・」「彼氏がいるんだろ?分かってるって。だから、そういうんじゃなくて、上京したてでまだ知り合いのいない友人を助けると思ってさ」「何、観に行くのよ?」「それがさ、銀座でミケランジェロ・アントニオーニの特集やってんだよ」「嘘?私も大好き」「マジ?」「『砂丘』とか、『日蝕』とか、大好きよ」「おっ、『日蝕』なんて言っちゃうところを見ると、かなりの通だねぇ。・・・その『日蝕』を今やってんだよ。劇場で観たことある?」
今回は映画が3作品、出てきました。
特に『日蝕』、邦題は『太陽はひとりぼっち』は、ストーリーにも深く食い込んでいます。
感想
再読して、こんなに良い作品だったのかと思いました。
終わり方が素敵でした。
愛を描くために、そのような形をとるのかと唸らされました。
吉田修一さんはこの終わり方を描きたいがために、この場所を設定したのではないかとも感じました。
そういう意味でも場所がとても重要な作品だと言えます。
場所の重要さについては、シンプルに東京湾をはさんで、品川側が亮介、お台場側が美緒(涼子)を表しているという意味でも重要です。
また、小説内小説の設定がとても斬新でした。
これを置くことによって、自然に過去が描かれていくのも上手だなと感じました。
東京湾かち合う視線秋夕焼け
次回は『モンスーン・ウェディング』を紹介します。
では、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。