【映画#121】「ポンヌフの恋人」『おかえり横道世之介』より
こんにちは、三太です。
先日、安部公房の『砂の女』を読みました。
再読だったのですが、やはり作品に込められた意味を読み取るのは難しかったです。
けれども、録画していた「100de名著「砂の女」」の力も借りて、(ヤマザキマリさんも伊集院光さんも解釈力が素晴らしかった・・・)少し理解できたように感じました。
今年、2024年は安倍公房生誕100年の節目の年らしいです。
他の作品も読んでいけたらと思っていますが、ひとまずこちらはこちらで進めていきましょう。
では、今日は『おかえり横道世之介』に出てきた「ポンヌフの恋人」を見ていきます。
『おかえり横道世之介』に出てきた映画9作のうちの4作目です。
ちなみにはじめ『おかえり横道世之介』の記事でまとめたときは「ボンヌフの恋人」だと思っていました。
ここで「ポンヌフの恋人」に訂正しておきます。
基本情報
監督:レオス・カラックス
出演者:アレックス(ドニ・ラヴァン)
ミシェル(ジュリエット・ビノシュ)
ハンス(クラウス=ミヒャエル・グリューバー)
上映時間:2時間5分
公開:1991年
あらすじ
パリのポンヌフという橋の上。
工事中で使用されていないため、ここでアレックスはホームレスとして暮らしていました。
ある日、橋の上の自分のねぐらにいきなりミシェルという女性が現れました。
アレックスはこの美しい女性ミシェルに恋心を抱きます。
ミシェルはもともと画家でした。
けれども、失明の危機に晒され、自暴自棄となり家を飛び出したようです。
アレックスはミシェルと仲良くなりたくて、半ばストーカーのように彼女のことを追いかけます。
アレックスとミシェルは結ばれるのでしょうか。
二人はどのような運命を辿るのでしょうか。
設定
・パリにある格差
・ホームレス
・奇妙な恋愛
感想
あらすじを読むと、アレックスとミシェルの恋愛物語として少し爽やかな感じがしなくもないです。
けれども、それ以上にこの作品は登場人物たちが纏う汚れがとてもリアルで、闇の部分もしっかりと掬い取っています。
アレックスとミシェルの関係は奇妙な恋愛関係です。
例えば、二人は恋仲のような関係になるのですが、ミシェルはなかなかアレックスに体の関係になることを許しません。
「また今度」なんて言いながら、先延ばしにします。
けれども、ミシェルは完璧にアレックスを避けるかというとそんなこともないのです。
そういったあたりも含め、ミシェルは最後まで謎なところがあります。(アレックスはガンガン攻めているだけなので、ある意味分かりやすい)
ポンヌフという橋の上には、アレックスの他にハンスという老人も住んでいました。
ミシェルはハンスと関係を持ったのではと思わせるシーンも出てきます。
説明はあまりないので、自分で解釈するしかないですが、ミシェルの謎は深まるばかりです。(他にも謎だなと思えるシーンはいくつかあります)
パリの街から浮いている二人の行動や嫉妬に狂うアレックスなど、その様子だけでも見させる映画でした。
夏の夜汚れた二人橋の上
その他
・ウィキペディアより
→製作中に費用捻出の問題から何度も撮影中断に追い込まれ、撮影後もパリの街の巨大なセットを解体する費用が出せずそのままの形で残っている。
・ミシェル役を演じたジュリエット・ビノシュは映画「ダメージ」にも出演。
謎めいた女性を演じさせるなら、ジュリエット・ビノシュの右に出るものはいないですね。(そんなにたくさん女優さんを知っているわけではないですが・・・)
『おかえり横道世之介』内の「ポンヌフの恋人」登場シーン
「ポンヌフの恋人」が出てくるのは、世之介とコモロン(世之介の友達)がマンションのある部屋をのぞき見しているシーンです。
このシーンは『おかえり横道世之介』の中でも重要なシーンではないかと考えられます。
ここで見られている女性は後にわかるのですが、日吉桜子。
ちなみに息子の良太も同じ部屋にいます。
この二人はここからも頻繁に物語の中に登場するのです。
そのようなシーンを彩るアイテムのようなものとして、「ポンヌフの恋人」が使われていました。
この映画を見た今から言えるのは、少し謎めいた女性を表すものとして映画は機能しているのかなということです。(もちろんベティ・ブルーも含めて考えなければなりませんが・・・)
世之介が映画について詳しいことは知っていましたが、コモロンも映画好きなようですね。
吉田修一作品とのつながり
・パリの街から浮いている、つまり世間から隔離されている二人という意味では、逃避行をする『悪人』の祐一と光代の姿にも似ているように感じました。
以上で、「ポンヌフの恋人」については終わります。
汚れがリアルな映画でした。そしてミシェルがひたすらミステリアスでした。
それでは、読んでいただき、ありがとうございました。
出典:「映画ドットコム」