【閑話休題#17】塩田武士『罪の声』
こんにちは、三太です。
最近、学校で生徒主体となり校則の変更を進めています。
これまであまりやったことのない活動なので、手探りで進めている感じです。
最近は校則に関わる本がたくさん出ているので、そういったものも参考にしながら、自分たちの学校にあった進め方を模索している今日この頃です。
みんながより通いたくなるような、良い学校にしていきたいです。
さて、今回はもともと紹介する気はなく読んでいて、けれども読み終わってみると意外に吉田修一作品とつなげて考えられるところもあるなと思い、紹介する作品です。
あと、シンプルに面白かったというのもあったので。
あらすじ
この作品は昭和最大の未解決事件「グリコ・森永事件」をモデルとした作品です。
この事件で犯人側が使ったテープの声に使われていたのが、自分の声だと気づいた曽根俊也、そして上司から30年前の事件を追うように指示された阿久津英士、この二人の視点を軸に物語は進んでいきます。
俊也は事件を追うごとに、自分の身内が事件に関わっているのではないかと怖くなってきて、事件を追うのをやめたくなってきます。
けれども、はじめ事件の情報を全然得られなかった阿久津は中盤から一つ一つ謎を解くように情報を得ていき、ついにこの二人が交わるところまできます。
そこからはクライマックスまで一気に事件の謎が解き明かされていきます。
ある一つの事件を中心に、それに関わった多くの人々の人生を浮かび上がらせます。
感想
吉田修一作品を読んでいると、よく出てくるテーマに「罪」あるいは「犯罪」というものがあります。
読み終わって、そこに深く関わる作品だと思いました。
ただ、同じように「罪」「犯罪」を扱うのですが、そこには違いもあります。
端的に言うと、吉田修一は事件を起こす人に注目するのに対し、『罪の声』(塩田武士)はあくまでも事件を中心に人を描いているなと感じました。
もちろん『罪の声』でも、ある人の一生を描いているので人を描いているとも言えますが、その描き方には微妙な差異があるように思います。
吉田修一作品の方が、人物の内面にグイグイ入ってくる感じがします。
犯人を追う過程で、警察が失敗した理由の一つとして挙げられている東京と地方の格差、犯人の供述に出てくるサラ金パニックや日航機事故などの昭和史など、「グリコ・森永事件」が中心となっているのは間違いないのですが、テーマは多岐に渡るとも感じました。
一週間ぐらいかけて、じわりじわりと読んできた過程が、俊也と阿久津が事件を追う過程に重なり、最後はとても感慨深かったです。
実際にあった事件をモデルに、想像をふくらませ読ませる文章となっているのがすごいと感じました。(フィクションとかノンフィクションとか関係なく)
真相にひたりひたりと夜長かな
テーマが似ていても、やはり作家によってそのテーマへのアプローチは様々あるなと感じ、興味深かったです。
それでは、読んでいただき、ありがとうございました。