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【作品#26】『横道世之介』

こんにちは、三太です。

昨年の「鎌倉殿の13人」に引き続き、今年の大河「どうする家康」を見ています。
歴史に材をとり、現代にも通じる話題が取り上げられ面白いです。
そして、シンプルに役者さん一人ひとりの演技も良いです。
あと約半年も楽しんでいきたいと思っている今日この頃です。
  
では、今回は『横道世之介』を読んでいきます。

初出年は2009年(9月)です。

文春文庫の『横道世之介』で読みました。

あらすじ

大学進学を機に上京してきた横道世之介の1年間(4月から3月まで)を描く物語です。
友達との出会い、恋愛、車の免許の取得などいわゆる大学生の青春がメインに描かれます。
基本的には時系列で物語は展開していくのですが、時折世之介以外の登場人物の未来からの語りが挿入されます。
この未来からの語りによって物語に深みが増します。

また、大学生の青春と共に、例えば難民や保護猫など社会的な問題も取り上げられます。
特に難民(ベトナムのボートピープル)の問題は世之介の彼女となる祥子に大きな影響を与えます。
世之介の明るさも相まって楽しい作品であることは間違いないのですが、それだけでは終わらない深みもこの作品の持ち味です。

公式HPの紹介文も載せておきます。

80年代後半、時はバブル真っ只中。横道世之介は、大学進学のため故郷長崎からひとり上京する。いつの間にか入会させられていたサンバ同好会でステップを踏み、教習所に通い、デートし、アルバイトに励み、テスト前には一夜漬け。いわゆる普通の大学生、でも何故だか人の心に温かい何かを残す男。そんな世之介と彼の周囲にいる人たちの20年後がクロスオーバーする青春小説。第23回柴田錬三郎賞受賞作品。

出てくる映画(ページ数)

①「ハチ公物語」
②「トップガン」(p.271とpp.278-279)

カツ丼ともりそばのセットを食べて世之介は歌舞伎町の映画街へ向かった。途中本屋に寄って「ぴあ」を立ち読みしたが面白そうな映画がない。ハチ公物語なんて見ても仕方ないしなぁ。

『横道世之介』(p.271)

男たちの中に体育の授業で一緒の奴がいたので、「ここって何のサークル?」と尋ねると、「映研」とそいつが答える。
「あーあ、俺もこっちにすればよかったなぁ。文化的な匂いもするし」
「映画好きなんだ。最近見た映画は?」
「この前、見ようとしたのは『ハチ公物語』」
「ハチ公?じゃあ一番好きな映画は?」
「『トップガン』」
この辺で映研の部員たちまで世之介から目を逸らす。

『横道世之介』(pp.278-279)

③「ラストエンペラー」
④『ナイルの宝石』(pp.388-389)

「なんでそんなの読んでんの?」
「『ラストエンペラー』って映画見たら面白くてさ」
「ああ、それだったら、サンバ部の先輩たちも面白そうって言ってたな」
「俺、今日、もう一回見に行こうかと思ってて」
「どこに?」
「吉祥寺」
どちらかと言えば世之介が好きな映画は「インディ・ジョーンズ」とか「ナイルの宝石」などである。

今回は以上の4作です。
「インディ・ジョーンズ」も出てくるのですが、シリーズのどの作品かが確定させられないので、今回は保留にします。

そして、「横道世之介」自体も映画化しているので、計5作です。

感想

読み終わって、まずこの作品のメインキャラである横道世之介に会いたくなりました
なぜそう思ったのか理由を挙げよと言われてもなかなか挙げづらいのですが、そう思ってしまうような魅力を持つ人物です。
この作品では世之介の大学生としての楽しく明るい生活を描くだけでなく、社会的な問題(そしてそれにとどまらない大きな問題も)も描かれており吉田修一さんらしいなと感じました。
今回再読だったのですが、改めて読むと色んな所に伏線がおかれていたのだなとも感じられました。
例えば、p.392の世之介が一度だけ死を意識した瞬間の描写などは「なるほど、ここにこんな形でおかれていたのか」と思いました。
ただ、全体を通していえるのは、世之介が大学で入るサンバサークル、世之介が出会う女性、友達に起こる色々な出来事など、基本的には楽しく読める作品だと思いました。
 
風薫る世之介もいるサンバ隊 

その他

この作品では映画以外にいくつか本や漫画も取り上げられます。
ここではその一つを紹介します。

ちなみに世之介が自分の名前の由来を知ったのは中学校一年の国語の時間であった。もちろん小学校の先生たちも井原西鶴「好色一代男」の主人公と同じであることは知っていたのだろうが、短パン姿の少年に教えてもよいものか迷ったに違いない。

『横道世之介』(p.16)

初読の時には気になっておらず、再読で気が付きました。
古典には興味があって、特に井原西鶴「好色一代男」は様々な訳者のものがあります。
私は吉行淳之介さんが訳したものを積読していました。
これは読むしかないなと思っています。

以上で、『横道世之介』の紹介は終わります。

では、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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