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【柳町光男シリーズ#8】「ブロンド少女は過激に美しく」『さよなら渓谷(文庫解説)』より

こんにちは、三太です。

新年明けましておめでとうございます。
2025年もコツコツと、着実にnoteを前進させていきたいと思います。
本年もよろしくお願いいたします。
引き続き今週は毎日投稿頑張ります。
 
では、今回は以前、『さよなら渓谷』の作品紹介をしたときに取り上げた「映画監督、柳町光男さんの解説」に出てきた映画「ブロンド少女は過激に美しく」を紹介します。
『さよなら渓谷』の文庫解説に出てくる11作の映画のうちの8作目です。 

吉田修一さんの『さよなら渓谷』の文庫解説が映画監督の柳町光男さんでした。
柳町さんは吉田修一さんを「紛れもなく真底映画が大好きな小説家」(p.240)だと述べた後、『さよなら渓谷』という作品もとても映画的だと言います。
例えば、「主題と主人公のすり替わりがなんとも映画的だ」(p.241)ということで映画『サイコ』を引用します。
また『さよなら渓谷』では市営団地のお隣さん同士が重要な登場人物として出てくるのですが、〈隣の家〉という視点からは映画『隣の女』、『グラン・トリノ』などを引き出します。
〈隣の家〉から〈隣の部屋〉、〈向かいの部屋〉まで押し広げて、まずは『裏窓』。
そして同様に『非常の罠』、『ノックは無用』、『仕立て屋の恋』。
その後今回取り上げた『ブロンド少女は過激に美しく』について触れられました。

ちなみに「ブロンド少女は過激に美しく」については以下のような記述となります。

息子殺害の里美の家と、俊介とかなこの家が市営団地の隣り合わせというのも映画的である。私は大いに刺激を受けた。私の観点からすると、ここに映画の映画たる所以のひとつがある。〈隣の家〉のたとえ一方の家しか画面に映っていなくても、もう一軒の家で何が起っているかが同時に且つ容易に想像でき、空間的にも時間的にも映画的要素が濃密である。そして、そこには〈境界〉のテーマとイメージが用意されている。
(中略)
〈隣の家〉を〈隣の部屋〉や〈向かいの部屋〉まで押し広げると、更に多くの映画が該当する。先ずはその空間の妙を最大限活用したヒッチコックの傑作『裏窓』。中庭を挟んだ向かいの部屋の美しい女性を垣間見、惚れてしまう男性の話では、スタンリー・キューブリックの『非情の罠』、マリリン・モンローとリチャード・ウィドマーク共演でロイ・ウォード・ベイカーの『ノックは無用』、パトリス・ルコントの『仕立て屋の恋』、最近ではマノエル・デ・オリヴェイラの『ブロンド少女は過激に美しく』・・・etc。

『さよなら渓谷』(pp.241-242)

では、実際に今から見ていきます。


基本情報

監督:マノエル・デ・オリベイラ
出演者:マカリオ(リカルド・トレパ)
    ルイザ(カタリナ・ヴァレンシュタイン)
上映時間:1時間3分
公開:2009年

あらすじ

リスボン発アルガルヴェ行きの列車に乗る男、マカリオ
彼が横に座った女性に突然話し始めるところから物語が始まります。

                右がマカリオ。

それはマカリオがリスボンにいたときの話でした。
叔父の店で会計士として働いていたマカリオは、自分の2階の職場から窓越しにブロンドの髪の少女、ルイザに一目惚れします。

             覗き見をするマカリオ


            窓越しに見えるルイザ


マカリオはルイザにあの手この手で近づこうとします。
そして知り合いの資産家の家で、ルイザと知り合います。
二人の中では結婚しようとなるのですが、叔父が結婚を認めてくれません。
マカリオは会計士の職を辞め、カーボベルデで貿易商の仕事をします。
なんとかお金を稼いで、戻ってきてもまだ試練は続くのですが、マカリオの本気を見たからか、叔父が結婚を認めてくれます。
結婚のために二人は宝石店に行って指輪を見るのですが、そこで事件は起こるのでした・・・。

設定

・額縁構造
・窓越しの一目惚れ
・リスボンの街並み

感想

団扇を仰ぐブロンド少女を演じる カタリナ・ヴァレンシュタインが美しかったです。
これだけでもこの映画を見た価値があるなと思えました。
そして、映画の途中に何度か挿入されるリスボンの街並みもステキです。
海に突き出した山際に、赤い屋根の家が所狭しとあり、これがとても良い感じです。

63分の映画で正直展開は早いです。
「いつの間にマカリオとルイザは付き合って、結婚しようとなったんだ」となりますし、最後も唐突と言えば唐突です。
でも、その余白があるからこそ、想像力は刺激されるなと思います。

特にこのあとのマカリオとルイザが気になります。
ただ、マカリオはアルガルヴェ行きの列車に乗っているということは、新しい土地で心機一転を狙っているのではないかと思います。
つまり、二人には未来はなかったのかなと。
でも、仮にそうならば、ルイザに対するあのマカリオの情熱は何だったんだとはなりそうですが・・・。

凍雲と男女二人の宝石店

その他

・原作はポルトガルの文豪エッサ・デ・ケイロースの短編小説。

・原作者が原作者自身を登場させている

・ウィキペディアより
→100歳を超えるマノエル・デ・オリヴェイラが監督・脚本したドラマ映画。
 

吉田修一作品とのつながり

・この話も窓からの覗き見で恋が展開します。

以上で、「ブロンド少女は過激に美しく」については終わります。
「過激に美しく」まさにタイトル通りの映画でした。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

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