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【教育 本#8】小坂康之・林公代『さばの缶づめ、宇宙へいく』

こんにちは、三太です。

このnoteでは「吉田修一さんの作品をもとにした映画ガイド」を作っています。
もちろんこれからもそこが軸になるのですが、中学校教員ということもあり、仕事のベースは当然「教育」にあります。
そのため「教育」関係の本を読んだり、「教育」について考えたりすることは普段からたくさんあります。
せっかくならそれもアウトプットしてみたいなと考えました。
月に1本ペースぐらいで「教育」に関する記事(主に本のまとめになると思いますが)をあげていこうと思います。

今回はその8回目になります。
では、こちらの作品を読みます。

学校現場での探究活動に興味があったので、本書を手に取りました。
ちなみに探究活動というのは、自分(たち)で問いを立てて、調べたり、実験をしたりして、その答えを導き出していく活動のことです。
タイトルからもわかるように、「どうしたら、さばの缶詰を宇宙へ持って行くことができるのか」というのが問いとなっています。
また、これまでに授業の見学などで何度か若狭高校を訪れたことがあり、身近に感じたというのも本書を手に取ったきっかけでした。


要約

若狭高校のさば缶が宇宙食となるまでのノンフィクションです。
宇宙食となって宇宙で野口聡一さんがさば缶を食べるまでには、時間として14年、そして約300人の先輩の思いがありました。
その活動に伴走し続けた教諭、小坂康之さんの思いも。
また、途中若狭高校と統廃合となった、日本で一番古くからあった小浜水産高校の歴史もです。
今では「さば缶が宇宙へいく」までのストーリーは英語の教科書にも載っているようです。

感想

若狭高校のさば缶が宇宙食となったニュースは知っていました。
けれども、そこに至るまでにどれだけの時間と多くの人の思いがあったのかは知らなかったので、今回その過程を知ることができて良かったです。
さば缶を宇宙食としていくために、とろみをつけたり、鯖を柔らかくしたりするために、生徒達が仮説を立てて、比較実験をしていく過程はある意味とても地味な作業でした。
とにかく時間をかけて試行錯誤を続けていくのです。
でも、これが本当に大事なんだということも伝わってきました。

若狭地域には若狭高校、若狭東高校、小浜水産高校の3つの公立高校があり、学校統廃合の案が出た当初は若狭東高校と小浜水産高校を統合する案となっていました。
それが嫌だったというわけではなく、なんとか小浜水産高校を残せないかという流れの中で、「小浜水産高校を考える市民の会」(p.105)というものが作られました。
そして、色んな方が活動をしていく中で、「課題研究(探究学習)を進化させ、進学にも対応した新たな水産教育が展開できるのではという方向性」(p.110)が模索され、地域の進学校であった若狭高校の海洋科学科として統合されます。
当初の統合案を覆す市民(民主主義)の力がそこにはありました。
また、統合されてからの苦労(小浜水産高校の生徒が下に見られるような)もありましたが、さば缶の活動を通して、皆に認められていきます。
 
以前、読んだ税所篤快さんの『未来の学校のつくりかた』で出てきたキーワード「学校づくりはまちづくり」に合致する良い事例だとも思いました。
 
今回は小坂康之・林公代『さばの缶づめ、宇宙へいく』の紹介でした。
高校生とそれに伴走した先生、市民の方たちの力を感じられる作品でした。
 
それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

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