【映画#123】「夜をぶっとばせ」『おかえり横道世之介』より
こんにちは、三太です。
1学期の終業式が終わり、夏休みに入りました。
毎回、学期の最初と最後には生徒達に「この学期はこう過ごしてほしい」「夏休みはこれを頑張ってほしい」というような話をします。
毎度のことなのですが、夏休みに向けては「チャレンジをしよう」という話をしました。
もちろん生徒に言うからには、自分も何かにチャレンジする夏休みにしたいなと考えています。
ただ、まずはやるべきことが山積みなのでそちらを片付けながら、ぼちぼちチャレンジを始めていこうと思っている今日この頃です。
では、今日は『おかえり横道世之介』に出てきた「夜をぶっとばせ」を見ていきます。
『おかえり横道世之介』に出てきた映画9作のうちの6作目です。
基本情報
監督:曽根中生
出演者:高田奈美江(高田奈美江)
高田奈津子(小松由佳)
尚也(小林栄次)
理佳子(可愛かずみ)
上映時間:1時間49分
公開:1983年
あらすじ
1980年代の中学校における不良映画。
転校を繰り返す奈美江は群馬・前橋の中学校に来て、不良とつるみだし、やがて学校を仕切る立場となります。
喧嘩、シンナー、不純異性交遊、夜の暴走…
奈美江たちはあらゆる非行を行います。
それと同時に学校の中も不良だけでなく、普段ならおとなしい生徒たちも含め不満が溜まり、警察を呼ばざるを得ないほど、収拾がつかない状態となります。
そして非行と無秩序の果てに、奈美江の卒業が待っているのでした。
設定
・不良
・BGM
・ナンパ
感想
教師としては強烈なインパクトを受ける映画でした。
仕事柄、どうしてもそちら目線で見てしまいました。
私はいわゆる荒れた学校で勤めた経験はないのですが、先輩の先生方からはどうしようもなくなった状況を聞いたことがあったので、この映画はまさにその究極に近い形をいっているのではないかと感じました。
ただ奈美江をはじめ、生徒側に対して同情する部分も多かったです。
奈美江が全くの悪かというとやはりそうではなく、保健室のベッドで不良といちゃついているときに、怪我をした生徒が来たら、養護教諭の代わりに応急処置をしてあげる優しい一面を見せるシーンがあります。
そして奈美江は親から手をかけてもらっている様子がありません。
少なくとも新聞記者の父親はあまり子育てに参加していないようで、家族会議での母親の悲痛な叫びが途中見られます。
また非行を行う生徒たちに対する学校の対応は「もういいから帰れ」の一点張り。
中には高圧的な態度を取り、生徒に暴力を振るう教師もいます。
けれども非行生徒は生徒で、空き教室でアンパン(シンナー)をしていたり、廊下でタバコを吸ったり、どうしようもない状況ではあるので、教師側の苦境も理解できます。
みんなが何かを人のせいにして、心の中で「どうしたらいいんだ」と叫んでいるかのように思えました。
映画には前橋の中学校とはまた時間軸、場所の違うところ、まあそれは東京なのですが、それが登場し、最後に上手く交差して、クライマックスへ向かいます。
振り返ってみると、そこはとても上手い展開でした。
緻密に組み立てられたストーリーという点では、ただの不良映画とは言えない、秀逸な作品に仕上がっていると思います。
赤髪の十五の少女大西日
その他
・ウィキペディアより
→この映画の企画自体が、本当の不良であった主演の高田奈美江の実体験がもとになっている。
『おかえり横道世之介』内の「夜をぶっとばせ」登場シーン
「夜をぶっとばせ」が出てくるのは世之介が区民プールで桜子と出会うシーンです。
映画「ポンヌフの恋人」と「ベティ・ブルー」が出てきた、マンションの覗き見の次に世之介が桜子と出会う場面です。
良い気になって話している世之介が、桜子の口からこぼれた「アタシ」という言葉の発音にピンときて、そこからの連想の中で出てくる映画でした。
1983年公開なら、1968年生まれと思われる世之介とちょうど話もうまくかみ合います。
もちろんここには吉田修一さん自身の経験も生かされているでしょう。
映画が出てくることで(そして、それを見ていることで)ヤンキーである桜子の雰囲気をよりイメージさせやすくしているのかなと思いました。
吉田修一作品とのつながり
・青春ものという点では、『横道世之介』をはじめ吉田修一さんのいくつかの青春に関わる作品に通じている。
以上で、「夜をぶっとばせ」については終わります。
自らの仕事柄、強烈なインパクトを受けた映画でした。
それでは、読んでいただき、ありがとうございました。
出典:「映画ドットコム」