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【映画#27】「カンゾー先生」『パレード』より

こんにちは、三太です。
ここ数日は生徒から提出された読書感想文をひたすら読んでいます。
生徒がどんな本を読み、どんな感想を持っているのか、けっこう読んでいて面白いです。
こちらも色々と本を紹介したくなります。

では、今日は『パレード』に出てきた映画、「カンゾー先生」を見ていきます。
『パレード』内に出てくる映画26作中の21作目です。

基本情報

監督: 今村昌平
出演者: 赤城先生(柄本明)
     ソノ子(麻生久美子)
     トミ子=女将(松坂慶子)
上映時間:2時間8分
公開:1998年

「うなぎ」に引き続き、この作品も監督は今村昌平です。

あらすじ

終戦間際の岡山、日比という場所が舞台。
その町にはカンゾー先生とあだ名されている町医者、赤城先生がいます。
診る患者ほぼすべてに肝臓炎と診断するので、町の人に藪医者だと言われています。
ただ、本当は藪医者ではなく、みなが実際に肝臓炎にかかっていたのでした。
そんな赤城先生のもとに両親を亡くしたソノ子という女の子が、お手伝いとして雇ってもらいにやってきます。
ソノ子は皆から淫売だと噂され、実際に体を売っていました。
けれども、赤城先生の「淫売をしてはいけない」という助言で、少しずつそこから手を引いていきます。
赤城先生は肝臓炎の治療のため、顕微鏡を手に入れます。
そして、その研究に生涯を捧げるようになりました。
そんな中、戦局は日々悪化していきます。
肝臓炎にむしばまれたように、赤城先生の周りにいる多くの人たちの心身がおかしくなっていきます。
それは赤城先生の身にも及ぶのでした。

設定

戦争もの(第二次世界大戦が関わっている)
登場人物に家族を亡くした人が多い(赤城先生、ソノ子)

感想

ただ肝臓炎を扱ったわけではなく、その肝臓炎は戦争という時局とも関わっていて、肝臓炎をたとえにして人々の内面までをも描いている作品でした。
すごかったです。
まずこの作品では、赤城先生はやたら町の中を走り回っています。
これは赤城先生の「開業医は足で稼ぐ」というモットーが関わっています。
やはりそこらへんから赤城先生の一途さというか良い人感がにじみ出ています。
また、その町は遊郭を持っているというのもこの話に大きく関わっています。
ソノ子の母はお金を稼ぐために遊郭で働いていましたし、ソノ子自身も同じようなことをしていました。
戦争が行われていることが、女性の身体へも大きな影響を与えていました。
クライマックスにかけて、多くの人の心が狂っていく描写は圧巻でした。
それに抗う赤城先生も見ものです。
最後まで見ると、それまでになぜあんなに赤城先生の走っているシーンが多くあったのかがわかるような気がします。

炎昼を走るカンゾー白い服

その他

原作は坂口安吾の「肝臓先生」
柄本明は前回紹介した「うなぎ」にも出ていた。
ウィキペディアより
→喜劇映画という紹介だった(自分はそれを見るまでには、喜劇映画とは思えなかった。土葬したのを掘り起こすところは、面白い感じには描かれていると思ったけれど)

『パレード』内の「カンゾー先生」登場シーン

社長と百地さんは、パルムドールをデヴィッド・リンチの新作だと予想していたが、日本贔屓な俺としては「うなぎ」や「カンゾー先生」はつまらなかったにしろ、それでも日本の巨匠今村昌平監督の世界初三度目の受賞を期待している。

『パレード』(p.237)

前回紹介した「うなぎ」と同じシーンに出てきます。
ちなみに今村昌平がパルムドールを取ったのは「楢山節考」と「うなぎ」です。
しかし、引用部分に出てくるのは「うなぎ」と「カンゾー先生」の二つで、なぜこの二つなのかなと思いました。
吉田修一が見ていたからでしょうか。

吉田修一作品とのつながり

ちょっとわかりませんでした。
戦争ものの他の映画とはつながりますが。

以上で、「カンゾー先生」については終わります。

実は今回の投稿が50回目の投稿でした。
ここまでコツコツと続けられて良かったですし、投稿を毎回読んでいただいている方には本当に感謝しています。
まだまだ先は長いですし、次は100回目指して頑張ります。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

画像の出典:Amazon「カンゾー先生」

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