【映画#117】「喜劇急行列車」『国宝』より
こんにちは、三太です。
今日から新学期が始まります。
本当にここまでの準備の期間が怒涛の毎日でした。
今は新入生とのどんな出会いがあるのか、楽しみにしております。
また、仕事全般に対して目的意識を持ち、目標を立てて頑張っていきたいと思っている今日この頃です。
では、今日は『国宝』に出てきた「喜劇急行列車」を見ていきます。
『国宝』に出てくる映画3作のうちの2作目です。
3作目の「歌舞伎役者 片岡仁左衛門」は見る術がわからず、ちょっとすぐには見られなさそうなので、『国宝』に登場する映画紹介はひとまず最後になります。
基本情報
監督:瀬川昌治
出演者:青木吾一(渥美清)
塚田毬子(佐久間良子)
上映時間:1時間30分
公開:1967年
あらすじ
渥美清演じる車掌・青木吾一と寝台列車の物語。
基本はコメディーですが、どちらかというと人情ものかなと思います。
登場する寝台列車は長崎ー東京間を走っていた「さくら」と西鹿児島―東京間を走っていた「富士」です。
「さくら」では、青木が昔好きだった毬子に出会います。
その二人の浮気を疑って「富士」に乗ってきたのは、青木の妻です。
ただ、そのこと自体が修羅場に発展するという展開にはなりません。
事件あり、お色気あり、お産あり、少しホロッとするエピソードありと、寝台列車とともにあった人生を楽しめる映画です。
設定
・寝台列車
・過去の恋愛
・人情
感想
まずは渥美清さんが演じる青木吾一のキャラが素敵です。
青木吾一の特徴として、独り言をぶつぶつとつぶやくという癖があります。
その癖がわざわいして、毬子に出会ったときに寝台列車の中に、当時を回想して悦に入る吾一の独り言が放送で流れます。
ゲラゲラとみんなが笑うとてもコメディー的な場面です。
それから吾一は専務車掌(上司)として、部下の古川に小言をいちいち言います。
古川も最初はそれを煙たがっているのですが、少しずつ吾一の人間的魅力に気づき、慕っていきます。
また、良い意味での人と人との距離の近さがこの映画にはあります。
そもそも寝台列車の座席自体の距離感がとても近いです。
見知らぬ人と相席になって一夜を列車の上で過ごす。
寝台列車は特別な空間だったんだなと思いました。
寝台列車自体が人間の比喩としても作用しています。
それは「富士」への乗車時に顕著でした。
心臓が悪くて手術を控えている男の子に、レールの上を走る音と心臓の音を重ねて語ってみたり、今まさに子どもが産まれそうになっている母親がトンネルの中を出たら子どもを産んでいたりするシーンがあります。
列車の車掌をするということはただの仕事ではなく、それこそが人生だというようなメッセージがあるようにも感じました。
寝台の車掌の人生「さくら」あり
その他
・ウィキペディアより
→渥美清演じる人情味あふれる車掌を軸に、特別急行列車の乗客たちが起こす騒動を描いた喜劇映画。日本国有鉄道(国鉄)の製作協力により、駅や走行中の列車でのロケーション撮影が多く取り入れられている。
『国宝』内の「喜劇急行列車」登場シーン
「喜劇急行列車」が出てくるのは、15歳の喜久雄が長崎から大阪に出てくるシーンです。
ここでは吉田修一さんの小説には珍しく余談で『男はつらいよ』や瀬川昌治監督の作品などが解説されます。
「男はつらいよ」はこれまでにも取り上げられていたので(『作家と一日』)やはり吉田修一さんは好きなんだと思います。
そして瀬川昌治監督の作品についてもおそらく同様でしょう。
ここでは瀬川昌治監督が手がけた映画ではなく、ドラマが出てくるので、そこまで詳しく知っておられたのだと思います。
喜久雄は1950年生まれで、15歳ということは物語の時間は1965年。
この翌々年の1967年に「喜劇急行列車」は公開されるというところは現実とピタリとあっており、細かいところにもこだわりが見えます。
吉田修一作品とのつながり
・上でも確認したように、『国宝』で喜久雄と徳次が長崎から大阪に出て行くときに、乗る寝台列車が「さくら」です。
もしかして青木吾一が車掌をしていたかもしれませんね。
以上で、「喜劇急行列車」については終わります。
「寝台列車とは人生である」という言葉を最後に記したいと思います。
それでは、読んでいただき、ありがとうございました。